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戦闘回避?と介入者

その後も次々と火柱が上がり、戦闘音も継続的に響き渡ってきた。


「いったい何が起きているのかしら?」


お姉さんは、状況が判らず困惑しているようだ。


「うーん、やっぱりあれだけ派手に暴れているのを見過ごすわけにはいかないわよね。でも」


そう言ってお姉さんは、マスターに視線を向けた。


そうですよねぇ、幼いマスターがいるいじょう、戦闘に参加するわけにはいかないでしょう。こちらが襲われているわけでもありませんし。けれど、ほおっておくのも微妙な状況なんですよねぇ。


チュド~ン!!ドッカーン!!


『私』とお姉さんがそんなことを考えている間も、戦闘は続いていた。

というか、さっきよりも戦闘音の発生源が近づいているような?


「なんか火柱が近づいて来ているような?」


『私』とお姉さんがそんな感想を抱いていると、分かれ道の中の一つ。広場に続いている道の向こうから、複数の影がこちらに向かって、走ってきていた。


「何かしらあれ?」


お姉さんは、こちらに向かって来る影のさらに後方を指差しながらそうつぶやいた。


『私』は、お姉さんの指差している方に意識を向けた。


するとそこには、根を脚のように動かして、大地を駆ける大量の木の姿があった。


『トレント?』


『私』がまず最初に抱いた感想はそれだった。


それは何故か?それは、それぞれの世界に植物系モンスターは多数存在しているが、自立歩行する植物系モンスターの数は多くないからだ。


一般的な植物系モンスターは、生えている場所から動けず、攻撃範可能囲内に獲物が入って初めて襲い掛かかれる地雷型である。


その為、自立歩行が可能な植物系モンスターの種類はぐっとしぼれる。


その中で、今こちらに向かって来ているあれと外観が一致するもの代表者は、トレントというわけだ。


トレント


意識を持って動く樹木の種族。自身で自由に動き回ることが可能な上、会話が成立するほどの知性を有する。植物型の亜人と言ってもかまわないような存在。


性格は基本的に穏やかで、争いごとを好まず思慮深くて善良。


が、寿命が恐ろしく長い為、感性が短命種とはズレがちでもある。


そして、森の中で山火事を引き起こす火を扱う者を排除しようとする特徴を持っている。


先程からの火柱を考えると、それが原因で行動している可能性が高いですね。


それか、タブーを犯さなければならないような相手と戦闘した結果、それが飛び火してトレントが襲い掛かってきた可能性も捨て切れませんか?


どちらにせよ、こっちに向かって来ている御一行様をどうするべきでしょう?


こちらとしては、マスターがいるいじょう戦闘は避けたいのに加え、たぶんお姉さんの戦闘スタイルが森だと不利なんですよね。


マスターの属性は、火・地・時の三つ。属性は、親から遺伝する確率が高いことを考えると、地属性はバジリスクのものでしょう。そうなると、残るは火属性。お姉さんの髪と瞳の色で判断すると、火属性である可能性が高い。それだと、相手がトレントならお姉さんがお兄さんより強いとしても、延焼の危険のせいで戦闘力の低下はまぬがれません。


やはり、戦闘は避けて逃げるべきですね。


『マスター、逃げましょう』


「にげるの?」


「そうね、逃げましょう」


『私』の言葉に反応したマスターの言葉を聞いたお姉さんは、マスターの手を引いて、ティエントの泉の方の道に引き返した。


そして、そこからさらに道の脇にある茂みの中に移動した。


それからしばらく息を殺して状況を観察した。


ドッカーン!!! チュド~ン!!!


戦闘音がさらに近くなり、かなり近くまで来た。『私』達は茂みの中でじっと様子を伺った。


ドドドドドドド!!


やがて、戦闘音と大地を揺らす足音が『私』達から離れて行った。


『私』達は、さらに間を空けた後に茂みから出て、森の入口に戻った。


そして、入口から通り過ぎて行った者達の後ろ姿を見送った。


「さて、帰りましょうかアスト」


「おねいちゃん、たすけてあげなくてよかったの?」


「ピィ?」


マスターとガーデンスライムは、揃って疑問を口にした。


「私としても、出来れば助けてあげたかったのだけど、森の中ではちょっと無理だったのよ」


やはりお姉さんは、火属性のようですね。


「じゃあ、いまは?」


「そうねぇ、どうしようかしら?」


お姉さんは、マスターを見ながら考え込んでしまった。


たしかに、今から向かえば加勢自体は可能でしょう。


しかし、そうする為にはマスターをここに置いていかないと無理でしょう。


お姉さんとしては、マスターを優先させたいのでしょう。けど、マスターの言うように、あれらをほおっておくのも人として問題ですよね。


あれらがこのまま行けば、街の方に駆け込むことになるでしょうし、それはさすがにまずい。


しかし、解決策が無いいじょうは、どうにもなりません。


『私』とお姉さんは、どうしたらいいのかしばらく悩みに悩んだ。


ドドドドドドドド!!


そうこうしていると、また広場の方から何かが大地を揺らす足音が聞こえて来た。


『まさか!』


「まだ、何か残ってたの!」


『私』とお姉さんは、慌てて音のした方向を見た。


するとそこには、先程見たのと同じ、根を脚のようにしている木がところ狭しと並んでいた。


「『うわあ~』」


『私』とお姉さんは、その光景にげんなりした。


が、『私』はすぐに気を取り直した。そして、状況確認の為に相手を観察した。しかし、こうして間近で相手を見てみると、その木達は最初に予想していた相手であるトレントにはとても見えなかった。


基本的なシルエットは、高さ5メートルが上限の通常の木である。が、幹にはぎざぎざの歯が見える大きな口が開いていたり、枝の先から大地から煙りを上げさせる謎の液体を滴らせていたりと、とてもまともな植物に見えないものがかなり混じっていた。


その上、こちらを威嚇するように根を触手のようにうごめかせたり、枝を打ち合わせたりしている。


とてもではないが、相手からはトレントの条件の一つである、知性のようなものは一切感じられなかった。


というか見た目からして、もともとこの森に自生していた植物ではなさそうです。となると、可能性が一番高いのは、スライム達に吸収されずに残ったセーンムルウの樹原産の捕食型植物の果実が成長した結果がこれの正体ということでしょうか?


まあ、予想が当たっていてもハズレていても、戦闘は避けられそうにないんですけどね。


「どうしようかしら?」


お姉さんも、戦闘の構えをとりつつもどうするべきか悩んでいるようだ。


まあ、当然ですよね。さっきの問題が再燃したんですから。


こちらが対応に困っていると、向こうの方に動きがあった。


奴らは、威嚇を止めてこちらに向かって前進を開始した。


「考え込んでいる場合じゃないようね」


お姉さんは、奴らの行動に対して前に出た。


両者が激突しようとしたちょうどその時、さらに別の、その場にいた誰もが予期せぬ動きが生じた。


マスターの影が、マスターの足元からマスターの背後に立ち上がったのだ。


「え!?」


『はっ!?』


「ピィ!?」


GUGYAAA!?


「え、なに?」


その場にいた、マスターを除いた全員が、その光景に驚いた。


ただ、マスターは一人だけ状況についていけずにキョロキョロしていた。


しかし、影は『私』達が驚いている間も、変化を続けた。


影はマスターの形から、石壁のような形に形状に変化しながらどんどん拡大していった。


そして、二十平方メートル近いサイズになってようやく変化が止まった。


そう『私』達は思った。が、すぐにそれが間違いだと気づいた。


なぜなら、影の表面が波打ち出したのだ。『私』達が見守る中、波紋は徐々に大きくなり、とうとう何かが影から出て来た。


それは、いくつもの指輪をはめた、人骨の手だった。


『繋がった』


人骨の手が出ると同時に、そんな第三者の言葉が周囲に響いた。



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