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別れと新たな影

影との戦闘が終了したので、アインとの話の続きをする為、みんな広は場の真ん中に集合した。


お兄さんは、腹ばいの姿勢になって、目の前で直立しているアインやスケルトン達を見ている。マスターは、『私』を抱いた状態でそんなお兄さんの尻尾の上に座り、アイン達に目を向けている。正面にいるスケルトン達は、アインをマスターの前に出して、一歩引いた位置で待機している。そしてアインは、『私』達の前に直立している。


『さて、それじゃあさっきの話の続きをしよう』


『了承・・・』


アインは、そう告げた後沈黙した。


『「『?』」』


お兄さんの言葉に、アインは肯定の言葉を告げたのに、何故なにも話始めないのだろう?

『どうかしたのか?』


お兄さんも不審に思ったようで、アインにそう問い掛けた。


『・・戻らない、のか?』


アインは、問い掛けてきたお兄さんの巨体を見上げながら、そう言った。


『ああ、どうせこの後、あの石像を持って冒険者ギルドまで飛ぶからな。それに、こんな所で人化するわけにはいかないからな』


『『?』』


『私』、アイン、スケルトン達は揃って疑問に思った。


『・・・何故?』


『私』達の疑問を代表して、アインがお兄さんに聞いた。


『今日は、日帰りのピクニックのつもりだったからな、替えの服を持って来てないんだ。こんな街の近くで、全裸になんかなりたくない』


ああ、たしかに人化で服までは出せませんからね。


『それに、たとえ替えの服があっても、またさっきの影の同類が出て来るかもしれない。アストの安全確保の為にも、本性の方が都合がいいんだ』


それはいえてますね。あれの正体がわからないいじょう、他にもいる可能性は否定出来ませんから。


『・・・了承』


アイン達も納得したようだ。


『それで、お前達は生と死の境界を司るものを探してたんだろう?俺とアストがそうなのかは俺達にはわからないが、助けてもらった礼に、こちらに不都合がない限りは、お前達の要望を聞いてやるよ。お前達は、その主とやらから探しものが見つかった場合はどうするように言われてるんだ?』


『探しもの、発見、したら、報告。その後、命令、待ち』


『なるほどな。ならお前達は、今からその主のもとに帰るんだな?』


『肯定。帰還、する』


『となると、俺達はどうすればいい?お前達の主は近くにいるのか?』


『否。ここ、から、東に、三日』


『ここから東に三日か。となると、リュバイド山脈の辺りにいるのか。それなら、今日はもう帰るか。それでいいか、アスト?』


「うん。ぼく、きょうはもうかえってねたいよ、おにいちゃん」


マスターは、目元を擦りながらそう言った。


『そうか。それならこっちはそれでいいな。アイン』


『?』


『お前達が戻ってからまたこっちに来るまで大体一週間くらいかかるだろうから、俺達は一週間後にここにいればいいか?』


アインは、後ろを振り返り他のスケルトン達を見て、すぐに視線をお兄さんに戻した。


『肯定。それで、いい』


『わかった。それじゃあ、これでお開きだな。アスト、帰るからアイン達にバイバイしろ』


「わかった。アインさんたち、バイバイ」


そう言って、マスターはアイン達に手を振った。


『バイ、バイ』


アイン達もマスターに手を振り返し、その後アイン達は東の方に去って行った。


『じゃあアスト。俺達も帰るとするか』


「うん」


そう言うとマスターは、座っていたお兄さんの尻尾を登って、お兄さんの首まで移動した。


『しっかりつかまっていろよ』


「うん!」


マスターが元気よく答えると、お兄さんは翼を羽ばたかせ、大空へと舞い上がった。


『さて、あれも持って帰らないとな』


そう言ってお兄さんは、今まで放置されていた石像の上空に移動した。


『これだけの被害を出したんだ、ギルドへの言い訳の為にも、ここを整地なり何なりする為にも、かなり費用がかかるだろう。こいつは、その穴埋めに使わせてもらうとしよう』


お兄さんは、自分がブレスで作ったクレーターを見ながらそう言った。

たしかに、影を一キロメートル近くも吹き飛ばした揚句、二百メートル近い大穴を作りましたからね。穴を埋めたてる為にも、かなりの資金と労力が必要になるでしょう。しかし、石化の魔眼で石像になったこれに、価値などあるのでしょうか?


『私』は、物言わぬ石像を見ながら素直にそう思った。


「おにいちゃん」


『なんだ、アスト?』


「これって、うれるの?」


『ああ、そこは問題ない。手加減していたとはいえ、俺とここまで戦えた謎の存在だ。国やギルドの研究資料にしろ、好事家のコレクションにしろ、普通に売れるさ』


「ふうーん、そうなんだ」


こんな石像に値段が付くとは、何処の世界にでもそういう変わった人達がいるものですね。


『それじゃあ、しっかりつかまっていろよ、アスト』


「うん」


マスターは、お兄さんの首に腕を回して、しっかり抱き着いた。


お兄さんは、それを確認してから、自身も石像を抱き抱えて、大空に羽ばたいた。


そして、その状態で街まで飛んで行った。




∴∴∴∴∴∴∴∴∴


アスティア達が去ったその後、森で新たな異変が起きた。


影の獣が、バリュクスによって石像にかえられた場所。その場所でバリュクスが回収していなかった右前足が動きだしたのだ。


それを見る者がいれば、気の弱い者ならば悲鳴を上げていただろう。それほどに不気味な光景だった。


バリュクスの尾の一撃を受けて、捩切れ、吹き飛ばされた右前足が立ち上がったのだから。


そう、立ち上がったのだ。胴体に繋がってもいない足が、まるでそんなことは無いと言わんばかりに。先程、影の獣に生えていた時同様に、大地を踏み締めて。


立ち上がった足は、全身を開始した。


一歩、また一歩。四足獣の獣のごとく、確かなあしどりで移動して行く。


何処に向かっているのだろう?


この光景を見た者がいれば、みんなそう思うだろう。


だが、ここにはそう思う者も、それに答える者もいない。


アスティア達の去った夕暮れの森の中を、ただ足だけが進んで行く。


しばらくして、足が進むのを止めた。


足が止まったそこは、最初にあの影の獣が出現した場所だった。


ピキ、ピキ、ピキキ、パリーン!!


足が止まって少しすると、再び空間が歪み、やがて影の獣が出現した時のように、けたたましい音が森に響き渡った。


しかし、今度は影の獣の時とは様子が違った。


出現したのは、大きさ三十センチメートルほどの、全体の形は鷹や鷲のような猛禽類に似ている何かだった。くちばしは鉤のように曲がり、尾は5筋に分かれて長く伸び、羽根や尾羽の色は鮮やかな青や緑の色をしている。羽根は、孔雀のと同様に目玉のような模様となっている。そして、何故か足が鳥類の細いかぎづめではなく、四足獣の、そう、犬の前足のような形状をしていた。


新たに出現した何かは、周囲をキョロキョロ見回し、自身の正面にいた影の獣の足に視線を止めた。


鳥の方は凝視しているが、足の方は鳥の方に興味は無いらしく、鳥が出て来た空間の亀裂に向かって歩みを再開した。


鳥は、足が亀裂の中に消えるまで凝視を続けた。


そして、足が亀裂の向こう側に消えると同時に、亀裂は塞がっていった。


鳥は、足を見送った後、また周囲をキョロキョロ見回しだした。


それからしばらくは周囲を忙しなく見ていたが、不意にある方向で視線が固定された。


それは偶然か、あるいわ何か理由があるのかもしれないが、アスティア達が住む街の方向だった。


鳥はしばらく動かなかったが、急に翼を広げ、アスティア達が帰って行った交易都市の方向に飛び去って行った。


この鳥が、あの影の獣と関係があるのかはわからないが、また何かが起こるのかもしれない。

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