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不可避なLIMIT  作者:
終章 「FATE」
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第56話

 やっとあの島から解放され、僕は西園寺家の電話を貸してもらい、家に早速電話をかけた。ここに来て、例の腕輪を作ってもらってから一夜明けた午前だった。受話器を耳に当てる。だけど、誰も出ない。両親は仕事で家にいないとして、ばあちゃんは買い物にでも行ったのかな? と思っていた。だけど、僕のその予想はいとも簡単に崩れ去る。


 西園寺家の車で家まで送ってもらい、中に入ってずっと待っていた。だけどばあちゃんがいつまで経っても帰って来ない。おかしいなーと思って、僕はばあちゃんが戻って来るまでの間、久々の自宅を歩いて回った。そして、この家を出て行く前にはなかったものが置かれていることに気付き、その場で脱力するように跪いた。


「……ばあ……ちゃん……?」


 そこにあったのは、ばあちゃんの遺影だった。


 僕は信じられず、それしか口にできない。穏やかに微笑むばあちゃんの写真が僕の胸を締め付ける。目の前の現実が受け入れられない。僕が留守にしていた約半年の間に何があったのか。長いようで短い時間は、僕の大切な人を奪ったのか?


 両親は夜遅くに返ってきた。明かりのない家に一人いた僕に驚きつつも、彼らはすぐに僕をきつく抱きしめた。僕は魂の抜けきった顔で、小さく呟く。


「ねえ、ばあちゃんは?」


 両親は顔を見合わせ、俯いた。


 話を聞くに、ばあちゃんは僕が国家プロジェクトに参加してから約四ヶ月後に亡くなったらしい。僕と連絡が取れないことが判って、文部科学省に連絡。でも、プロジェクトが終わるまで電子機器による連絡が取れない旨を伝えられたらしい。それならと、ばあちゃんは手紙を書いては文科省に送っていたようだ。だけど、それが僕に届くことはなかった。


 ばあちゃんは僕からの返事を毎日楽しみに待っていたらしいが、徐々に元気がなくなり体調が悪くなって、ついには入院。そして、病院のベッドの上で亡くなったようだ。


 僕は泣いて泣いて泣き尽くした。一生分の涙を使い果たしたんじゃないかと思うほど。喚きしゃくり上げ、その日一日は相当荒れていたと思う。


 僕は翌日文部科学省に足を運んだ。溜まっているであろうばあちゃんの手紙を返してもらうために。国家プロジェクトの協力者だということを伝えると応接間に通された。口髭を生やした偉そうな人物が出てきて、謝罪と同時に手で抱えきれないほどの手紙を僕に手渡した。彼は何か話していたが、僕の耳に届かない。話している途中だったような気もするけど、僕は袋一杯に詰まった手紙を手に部屋を出て、そのままばあちゃんのお墓に向かった。


 ばあちゃんのお墓は黒くて艶があって新しく感じられた。じいちゃんと同じそのお墓は、ばあちゃんの骨を納める時にきれいにしたのかもしれない。


 僕はその前でばあちゃんの手紙を全て開けて音読した。その日やっていたテレビ番組のことだったり、買い物でのことだったり、たわいない一日のことが書かれていた。そして最後には必ず、僕の体を心配する旨の言葉や僕に早く会いたいといった内容が書かれていた。昨日で涙なんか全てなくなってしまったんだと思っていたのに、まだ出てくる。一枚一枚の手紙に僕は泣きながらも笑顔で返答した。そしてばあちゃんに向かって最後に掠れる声で一言呟いた。


「ばあちゃん、ごめんね……」


 今お茶淹れるからねぇ、と穏やかに笑うばあちゃんが家に帰るとひょっこり現れるような、そんな気がまだしていた。




 生徒たちの遺体は炎が強くて残らなかったということになっているため、形だけの葬式だった。お墓は立てられているものの、中に彼らは入っていない。


 僕たちは天音さん、勇くん、高林くん、早坂くん、宮本さんのご家族に彼らが国家プロジェクトに参加していた間どのように過ごしていたのかを訊かれ、心を痛めながらも嘘八百を並べた。死に怯えながら毎日を過ごしていたなんて口が裂けても言えない。楽しく毎日を過ごしていたと伝えることで、ご家族を安心させることにしたのだ。併せて、僕は天音さんと宮本さんから死ぬ直前にお願いされていた、彼らの親への感謝と謝罪の言葉を伝えた。天音さんの御両親はハンカチで顔を覆って泣いていたし、体の弱い宮本さんのお母さんは言葉を失くしてその場にしゃがみ込んでしまった。


 雨が次第に弱くなり、厚い雲の間からは僅かに光が差し込んできた。


 これは彼らからのプレゼントなのだろうか、と僕は空を見上げながら目を細める。


 一段落ついたものの、まだ何も終わっていない。


 僕たち四人はその腕にリミットを知らせる機器を身に付けながら歩いていく。いつか、爆弾が解除される日を願って。


 だけど僕たちのそんな思いとは裏腹に、体内ではまだ最期の時に向かって刻一刻とカウントダウンが進んでいるのだった。

この話はここで終わりとなります。

お付き合い下さった方々には、ただただ感謝の言葉しかありません。

更に良い作品を生み出せるように日々精進して参りますので、機会がありましたら、是非また目に留めていただけると幸いです。

ありがとうございました!!

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