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不可避なLIMIT  作者:
終章 「FATE」
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第55話

 悲しみを体現するかのように振り続く雨は、僕たちに暗い影を落とす。


 チャコールグレーの制服に身を包みながら、僕は今回の国家プロジェクトで犠牲となった者たちの葬式に参列していた。僕たちや亡くなった方のご家族だけでなく、マスコミも多く駆けつけている。


『国家プロジェクトで爆発事故』、そんな見出しが新聞の一面を飾り、一命を取り留めた生徒として僕、西園寺さん、一条さん、航輝の四人は取材の嵐。かなり迷惑なことに一躍有名になってしまった。だけど、僕たちは真実をほとんど語っていない。それは、本当のことを話せば僕たち能力者の命を狙う輩が現れるかもしれないという小鳥先生からの忠告のためだった。


 炎が強すぎて遺体の有無が判断できないとのことから、僕たちの証言を基に死亡者の確認が行われた。涼葉や都築先生たち五名は行方不明者として扱われている。



 あの後、僕たちはヘリで西園寺さんの家に直行した。東京にこんなに土地があるのか、と自分の目を疑うほどの敷地、豪邸。ヘリポートまで用意されていて、僕たちの乗っていたヘリは余裕でそこへ到着した。


 西園寺さんの家って……、と今度こそ訊けるタイミングだと思い訊ねると、僕の隣にいた小鳥先生があっさりと答えてくれた。


「西園寺財閥。日本屈指の金持ち名家。本当に知らないのかしら?」


「知りませんよ!」


 僕が即行でツッコむと、更に小鳥先生は衝撃発言を重ねたのだった。


「しかも裏の顔は隠密屋さんだと言うのですから、表の顔だけではそのものの本質を判断する材料としては不足ですわね」


「……餡蜜屋?」


「隠密屋」


「………」


 隠密って所謂スパイのことですよね!?


 僕は開いた口が塞がらない。前を歩くフランス人形のような西園寺さんの背中をひたすら眺める。


 西園寺さんは……まあいいとして、そういえば小鳥先生も何者なのか謎だった、と思って、折角なので僕はそれも訊いてみた。すると、彼女はそれもあっさり答えてくれたのだった。


「わたくしですか? 西園寺家にお仕えする隠密ですわ」


「………………………………」


 小鳥先生は、透谷くんにはお世話になりましたから特別ですよ、と笑って色々なことを教えてくれた。


 裏社会のことはよく分からないけど、国に不穏な動きがあることをいち早く察知した西園寺家が小鳥先生を派遣したらしい。それに見事西園寺家のお嬢様が当選したというわけだ。


「だったら、さっさと助けてくれれば良かったじゃないですか」


 不満たらたらの僕の発言に、小鳥先生は苦笑する。


「それはできなかったのですわ。冬子さんは文科省の人間、夏男くんとセリカちゃんは医師免許をお持ちでした。でも、あの先生たちは特殊な訓練を受けた経験のある方々でした。わたくし一人で三人を相手にするのは少々無理がありましたの。透谷くんたちに味方するとわたくしが隠密であることが生徒たちにも先生たちにもバレてしまいます。それは避けなくてはなりませんでした。それに、わたくしたち教師勢はあの場所が圏外だということを行って初めて知ったのです。いくら島とはいえ、ネットワークくらい繋げていると思っておりました。でもそれはわたくしの甘さでしたわね。主催者である片瀬さんは、わたくしたちのことを心の底から信用してはいなかったのかもしれません。彼の研究室に入ることも許されておりませんでしたし、イリジウムケータイを手にする機会もありませんでしたわ」


 そう話す小鳥先生は少し落ち込んでいるように見えた。


 小鳥先生が国に潜入して得た能力者の情報は、国家プロジェクトが始まる前に既に西園寺家に送られていたらしい。でも国家プロジェクト自体を潰さなかったのは、僕たちに埋め込まれた潜在能力覚醒器という機器に対する情報が少なすぎたからのようだ。能力者を死から解放しようとしても、やり方が分からなければ何もできない。


 僕たちは西園寺家に到着してすぐに精密検査を受けさせられた。どうやら表に出ていない超凄腕の医師たちが西園寺家にいるらしく、あの島で僕たちが聞いたことを元に助かる方法を探してくれるというのだ。


 だけど結局、すぐに爆弾の解除方法が見つかるわけもなかった。でも、点滅前に死を告げる機器の開発はしてくれた。涼葉父が特殊なセンサーか何かを当てることにより潜在能力覚醒器の様子を窺っていた、という情報を僕が提供したことにより、その機器の傷み具合から死までのリミットを逆算して僕たちに伝える腕輪のようなものを開発してくれたのだ。僕にはよく分からないけど、機器の傷みと脈の速さが僅かに連動していることが精密検査で判ったらしい。死の二十四時間前に、腕輪の装飾である赤い宝石が光るようにできているようだ。


 僕たちはそれを嵌めることによって、日常生活が可能になった。二十四時間も前に知らせてもらえれば、周りに迷惑はかけずに済む。

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