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不可避なLIMIT  作者:
第四章 「TRUTH」
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第51話

 この爆弾の解除方法を知る爆弾処理班でもいればいいけど、きっとそんなのいないし、解除もできないと思う。爆発する直前みんなの体が赤く点滅したことからも、全身に爆弾の回線が張り巡らされているようなものだと推測できる。天音さんが自殺を図って爆発しなかったことを考えると、きっと本体が死ねば爆弾も止まる。だけど、本体が動き続けている限り爆弾は止まらない。


 僕はそう考えながらも、実は助かるという一縷の望みを託し、涼葉父に訊ねた。


「……僕たちが助かる方法はあるんですか」


 だけど、涼葉父は僕の予想通りの答えしか返してくれなかった。首を横に振り、口を開く。


「残念ながら今はまだ見つかっていない。君たちが生まれてすぐに取り付けた機器だ。どれだけ小さいか分かるかい? 仮に助かる方法があったとしても、相当の腕利きでもないと手術はできない」


「だったらその機器自体外してしまえばいいじゃない!」


 一条さんがいてもたってもいられず、涼葉父に食ってかかる。だけど彼はメガネを曇らせるだけだった。


「私もそう思ってね……、ちょうど自殺した君たちのお友達の体を開いて、潜在能力覚醒器を取り出そうとしたんだよ」


「――――――――――――――っ!?」


「でも、できなかった。潜在能力覚醒器は本当に小さい。成長の過程で心臓と一体化するように設計されている。だから君たちの成長と共に発生するメンテナンスも必要ない。……まあとにかく、私は機器を心臓から剥がそうと少しその間に触れたんだ。その時だったよ。彼女の体が赤く光り出した。これが例の点滅かと思って、私は手術をそのままに遠くに離れたよ。五回の点滅の後、彼女は本当に爆発した」


 西園寺さんはぬいぐるみを抱えたまま、崩れるようにその場に座り込んだ。一条さんと航輝は、そんな……、と微かに声を上げる。僕はというと、悲痛の叫びを上げながら、涼葉父が言い終わるより前に彼に掴みかかっていた。生暖かいものが頬を伝う。


「どうして!? どうして死んだ後まで彼女を弄んだ!? あんたに彼女の気持ちが解るか!? いつ訪れるか分からない死に怯え、自ら命を絶つことを選んだ彼女の気持ちがっ!!」


 涼葉父は襟元を掴む僕の腕を力強く振り払い、冷たく言い放つ。


「彼女の気持ちなど私の知ったことではない。私は君たちが助かる可能性を少しでも見出すために、機器の取り外しを図ったんだ。彼女は君たちの役に立ったんだよ。お陰で、機器を直接取り外すことはできないということが判ったんだ。感謝されることはあっても、非難される覚えはないがね」


『みんなの役に立ちたい』と言っていた天音さんの顔が浮かぶ。どうしてこんな時に彼女の顔が浮かんでくるのか。彼女が言っていた〝役に立つ〟というのは、こんなことではなかったはずだ。


 僕は肩を震わせ、爪が食い込んで血が滲むほど拳を強く握った。


「あんたに感謝することなんて何一つない……。そもそもこんな機器、開発しなければ良かったんだ! 僕たちを巻き込み、人生を狂わせ、踏みにじった。その落とし前はどうつけてくれるつもりだ!!」


「ハッ! バカ言うな! この研究は人類の真価を発揮する素晴らしい研究だ! 内々で行われた計画とはいえ、これは国が推進したもの。君たちが身体検査で受けるレントゲンなどにも考慮して、特殊な光でないと反応しないような技術が施されているし、超小型で性能も申し分ない。ガタが来るというのは誤算だったが、それさえ改善してしまえば人間の進化を促すノーベル賞ものの研究だ!!」


 興奮してずれたメガネを戻しつつ、咳払いする涼葉父。


「……友達繋がりでもう一つ教えてあげよう。この島を脱出した早坂瞬くん。先ほど、彼が死亡した旨の連絡が入ったよ」


「――――――――――――――――っ!?」


「実はここ、東京都の持つ島なんだ。昔は人もいたらしいんだが、戦争でみんな焼けてしまったらしい。唯一残っているのがこの校舎だったと聞いている。それを改築し、更にセキュリティの整った寮を建てた。購買がプレハブだったのは、品物を置くためだけの場所にお金をかける価値がないと判断したためだと聞いているよ」


 どうやら涼葉父は話を脱線するのが好きらしい。いつもの僕ならそういう人なんだなーと思って終わりだけど、さすがにそんな風に思う余裕はなかった。


「……そんな話はどうでもいい。さっさと早坂くんのことを教えろよ!!」


 僕の吐き捨てた台詞に涼葉父が渋面を作る。


「人にモノを頼む態度ではないな……。まあいい。早坂くんは、あの船に乗ってちゃんと東京に辿り着いた。ただ、そこには国の人間が待ち構えていてね。彼はそのまま国が秘密裏に保有している収容施設に連行された。君たちの居場所は、制服に内蔵されている発信機で把握していたんだ。君たちはこの区画から脱出する際、フェンスの上にセンサーか何かが取り付けられていて、それを遮ったらアラームが鳴ると考えていたかもしれないが、実は君たちがフェンスの外側に出ただけでアラームが鳴る仕組みになっていたんだ」


 再び脱線した話に、僕は睨みを利かす。発信機は夏でも冬でも変化せず身に着ける制服に施されているはず。多分ズボンとスカートだ。だけどそんなのここで脱ぐわけにいかない。それに、ここで脱いだところであまり意味がない。ブレザーの色を白にしたのは、下の制服に注意を向けないために敢えて目立つようにしたからだろう。


「……早坂くんの話だったね。国の人間に捕らえられまいとその時随分能力を使用したようだ。収容された後は大人しくしていたようだけど、昨日の夜亡くなったそうだ。彼が脱走してから毎日、彼が今どうしているか連絡を取っていたんだが残念だよ」


 悲愴な表情を見せるが、白々しくて腹が立つ。それと同時に、僕はひどい罪悪感に苛まれていた。早坂くんが脱出したあの時、船に乗って助けを求めに行くように言ったのは、紛れもなく僕だ。早坂くんは収容所で一人孤独に耐え、死と戦いながら死んでいった。彼はその時どんな気持ちだったのだろう。考えただけで胸が張り裂けそうになり、自然と涙が溢れ出る。僕が早坂くんを死に追いやってしまったのだ。宮本さんの時と同じように……。


 辺りには一条さんの咽び泣く声が大きく響いていた。

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