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不可避なLIMIT  作者:
第四章 「TRUTH」
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第50話

 敵意剥き出しの僕を前に、涼葉父は少し楽しそうに微笑む。


「昔から思っていたよ。悠介くんは勉強しないだけで、回転が速い子だとね。それで……君は一体どこまで知っているんだい?」


 涼葉父は、立ち話もなんだから、と椅子に座ることを勧めてきたが、僕はそれを即座に断った。長話などする気は毛頭なかったから。訊きたいことだけ聞いて、さっさとばあちゃんの元に帰ろうと思っていた。


「涼葉から聞いてはいるよ。君たちがここに集められた理由が能力に関係あること、爆死が能力に影響していること、爆発の直接の原因が体内に埋め込まれた〝何か〟に因るものだということ、〝東京〟というワードが関係していること……。驚くべきことに、全て正解だよ」


 僕は歯を食い縛り、拳をぎゅっと握りしめる。自分で導いた仮説だけど、実際にそれが肯定されるほど辛く、苦しいことはなかった。


「私たちはヒントを出したわけではない。それでもそこまで推理した。それは称賛に値する。今回は特別に、悠介くんの質問には何でも答えてあげよう。……何が訊きたいのかな?」


「それではまず……、僕たちの体内にあるものは一体何なんですか」


 一番大事なこと、それは僕たちが近い将来死ぬのか死なないのか、だ。


「君たちの体内にある爆弾……それは〝潜在能力覚醒器〟だ」


〝潜在能力〟、それは小鳥先生のデスクに仕舞ってあった資料に書かれていた単語だ。


「潜在能力覚醒器は、私たち医学グループの研究課題だった。人間には誰しも潜在能力が備わっている。しかし残念なことに、ほとんどの人はその潜在能力が覚醒することなく一生を終える。そこで私たちが研究を重ね開発した代物、それが潜在能力覚醒器というわけだ」


 涼葉父の話に依ると、その潜在能力覚醒器の機能は、眠っている潜在能力を強制的に起こして使用可能を促す機器らしい。


 当時、犬での実験が行われ問題ないことが証明されたことにより、人間にも適用させる話が持ち上がった。だけど、それは内々に行われた。仮に潜在能力覚醒器を移植した人間がそのことが原因で異常をきたしたとなれば、マスコミから叩かれるのは必定。それに携わった人間が普通の生活を送れなくなる危険があったからだ。それでも移植に踏み切ったのは、折角の自分たちの研究成果をどこかで試したいという意思があったからだと言う。


 潜在能力覚醒器は全部で十用意され、東京にある帝都大学医学部附属病院で出産された赤ん坊に移植された。それが僕たちだったというわけだ。道理で手術された記憶がないはずだし、〝東京〟というワードが関係しているはずだ。それに、この似非国家プロジェクトの所管が文部科学省である理由もはっきりした。国立大学病院の管轄は文部科学省だと昔涼葉から聞いた覚えがある。


「今でも憶えているよ。十二月二十五日。まさに私たちにとっての聖夜だった。その日生まれた赤ん坊の心臓に潜在能力覚醒器を取り付けたんだ。残念ながら一人は移植中に亡くなってしまってね……、取り付けられたのは君たち九名だったんだ」


 これで涼葉が能力者でないことがはっきりした。彼女が嗅覚の能力を僕に伝えたのは、自分に疑いが向かないようにするためのフェイク。


「だけどね、その潜在能力覚醒器に重大な欠陥があることが最近判った。君たちの体内に仕込まれたその機器はそれ自体に負荷がかかっているということが判ったんだ……」


 能力を覚醒させてはい終わりではなく、能力の使用の度にその機器に負荷がかかり、それにより人体に影響を及ぼすと判ったのが約一年前。それから急ピッチで計画が進められ、この国家プロジェクト構想が立ち上がったというわけだ。


 潜在能力覚醒器にかかる負荷のことを聞き、僕は授業毎に行われていた測定の真の意味を悟った。あれは体内に埋め込まれた機器の消耗具合を見るためのもの。それを観察し、いつ僕たちが死に至るのか、大体の計算を立てていたのだろう。


「能力使用の度合いにも依るが、大体十八年がその機器の寿命だということが判った。それが寿命を迎えた時どうなるのか。私たちはその実験をして震撼したよ。何せ、その機器自体が爆発したのだから」


 機器にガタがくれば能力の使用後に限らず爆発することは、勇くんの例で初めて判ったらしいし、そもそも人間爆発が起こるなんてこともここに来てから判明したことらしい。体内に取り付けられた機器が爆発すれば、心臓ごと破裂して能力者は死に至る。そう考えていた涼葉父は、体が赤く点滅し、人間本体が爆発するという事象に目を見張ったと言う。


「さすがにどうして体が点滅するのか、体全てが爆発するのかまでは私たちにも分からない」


 涼葉父はそう言うけど、能力が完全に覚醒してしまった今、僕は何となくその意味が解るような気がしていた。無の時間の最中、僕は心臓付近から全身に何かが巡るのを感じた。心臓から送り出される血液に乗って、無理やり覚醒させられた能力のノウハウが全身に浸透していくような、そんな感覚があった。


 僕は涼葉父の話を聞いて思う。きっとその〝無の時間〟が僕たちの命を左右する爆弾の起爆スイッチだったのだと。一度スイッチが入ってしまえば、もう止めることはできない。瞳を閉じると僅かに聞こえてくる気がする。心音に呼応するようにカチッカチッと響く、自分のリミットに近づいていく音が。

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