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不可避なLIMIT  作者:
第四章 「TRUTH」
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第48話

「で、今日は一体何なんだよ?」


 航輝が眉根を寄せながら、溜息を漏らす。


 僕は放課後、教室から散ろうとする生徒たちを足止めした。都築先生の出て行った教室で辺りに響かないように声を低くしながら生徒たちに説明する。


「今から僕の言う通りに動いてほしい。理由は訊かないで。後でどうせ判るから」


 強引なお願いに全員が顔を顰める。


「……ゆーすけ、人にお願いする時の態度じゃないよ?」

「それは百も承知だよ。でも、絶対みんなのためになるから」


 僕のこの言葉で涼葉は渋々了承した。優等生タイプの彼女は〝みんなのため〟という理由に反論することができない。


「じゃあまず一階に下りて、全員で階段裏に隠れるよ」


 僕は全員を前に歩かせ、階段裏までやって来た。五人の生徒が隠れるには少し狭いけど、我慢するしかない。薄暗い中、西園寺さんと肩がぶつかる。


 僕は少しドキッとしながら、今はそんな状況ではないと脳内から花畑を追い出し、声を潜めた。


「みんなには悪いけど、暫くの間こうしていてほしい。トイレに行きたくなったら、先生たちに見つからないように行くように」

「暫くってどれくらいよ?」


 一条さんが口を尖らせる。


「分からない」

「『分からない』!? ちょっと説明しなさいよね!」


 僕は仕方なく溜息を溢す。こうなってしまっては、一条さんはきっと納得しないと僕の提案に乗ってくれない。予想していたことだ。


 僕は観念したように口を開く。


「今から言うことに対して、決して声を出さないでほしい。それは約束できる?」


 一条さんは渋々頷く。他のみんなも首肯したのを確認して話し始めた。


「僕たち五人の中に――――国側の内通者がいる」


「――――――――っ!?」


 みんなの目の色が変わる。不審、戸惑い、狼狽。それらが入り混じったような瞳をしていた。


「ちょっと、それホントなの!?」


 一条さんが興奮気味に囁く。


「残念ながら本当だよ」

「だったら誰なのか教えなさいよ!」

「今はできない」

「どうして!?」

「今言ったら、これからやろうとしていることに支障が出るからだよ」

「『これからやろうとしていること』?」


 僕は黙って頷いた。


「僕たちはこの区画に、僕たち生徒と四人の先生しかいないと思い込んでいた。でも、実はそうじゃない。もう一人、この校舎にいることが判ったんだ」


 全員静聴している。息を呑みながら。


「きっとその人物がこのプロジェクトの主催者であり監督者だ。その人物がいる場所、それがこの校舎の一階、職員室の斜め向かいの開かずの間なんだ」


 オートロックで中に入ることができず、宮本さんが中に何もないと突きとめた部屋。


「……仮にそれが本当だったとして、どうやって開かずの間に入ることができるのよ」


 一条さんの訝しがる目が僕を捉える。


「いくらオートロックといっても、本人が扉を開けてから閉まるまでの間は、僕たちでも出入りできる。だったら、本人が出てきた時を狙って扉が閉まる前に中に入ってしまえばいい」


「もしそれを実行するんだったら、あの部屋からここは遠すぎると思うけど?」


「一条さんの言う通り。だけど、一つだけ成功する方法がある。本人があの部屋から出て来た時を狙うのは無理でも、戻って来た時なら可能なんだよ。部屋に戻るタイミングは僕たちからも見ることができる。だったら問題はない」


「何言ってるの!? バレバレじゃない! すぐに扉を閉められて終わりよ」


「そこは僕を信じてほしい。今は言えないけど、必ずあの部屋の中へ入れるから」


 一条さんが不服そうにしながら、更に言葉を重ねようとするのを涼葉が阻んだ。


「ゆーすけがここまで言ってるんだから、みんな信じよう?」


 涼葉を一瞥して一条さんは押し黙る。


「というわけだから、僕たちの中にいる内通者に、今の話を仲間に伝えられないようお互い監視していてほしいんだ。どんな手段で相手に連絡を取っているか分からないから。因みに、事故を装って声を上げたりして、この計画の邪魔をする人物が僕たちの中にいたら、その人が内通者だと思っていいから」


 捲し立てるように話し、敵の動きを制限する。


 僕が何の予告もなく実行の直前にみんなを招集した訳。それは僕の立てた計画を事前に相手に知られないようにするため。だけど、その計画の大筋を話してしまった今、内通者が強硬手段に出ることも考えられた。男が部屋から出てくる時に、大声で出てこないように叫ぶのだ。内通者が誰であるかがその場でバレてしまう代わりに、僕たちはあの部屋に入ることが難しくなってしまう。それは賭けだった。

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