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不可避なLIMIT  作者:
第三章 「ESCAPE」
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第39話

 どうせ何をしたって無駄だ、という失望に苛まれた心が彼らの瞳に影を落とす。今更どうしてこの場に呼ばれたのか、理解できないといった様子だった。


「ゆーすけ、今度は何なの? ここは島なんだよ? しかもケータイも通じない。わたしたちにもう助かる術なんてないのに、どうして……」


 いつも強気な涼葉がさすがに弱っていた。僕はそんな痛々しい彼女を見て暗雲とした気持ちが立ち込めるけど、それを晴らすようにしっかりと前を向いた。


「まだ終わってない。僕たちが助かる方法はまだある!」


 みんなが僕の言葉に反応するように顔を上げた。期待と疑いの混じる瞳が僕を見つめる。


「その根拠は? こんな時に適当なこと言ってたら承知しないからね」


 一条さんの促しに、僕は一度頷いて口を開く。


「島だからといって、外部に助けを求められないわけじゃない。定期的に購買に品物を補充しに来る業者の乗る船に、僕たちも潜り込めばいいんだ」


 それを聞いて、早坂くんが顎に手を当てる。


「確かにそれだったら、この島から脱出できるね。品物を積んでくるんだから、勿論おれたちが隠れられるスペースもある。上手くすれば、この島から脱出できるよ!」


 その一言で、みんなの瞳に光が戻る。


「脱出方法は、業者があのフェンスの扉を通ったすぐ後に僕たちもその扉から外へ出る。多分業者にフェンスの上を越えてもらうようなことはしてないだろうし、業者が通ったすぐ後なら電気が流れてないだろうしね。この間航輝たちが脱走した時に、西園寺さんが言っていた保健室で鳴ったアラームは、多分誰かがフェンスを越えた時に鳴るシステムだ。脱走者を感知するためにね。つまり、フェンスを越えなければあのアラームが鳴ることはなく、先生に見つかる心配もない! 次に業者が来るのは一週間半後だから、特に目安箱も使わないよ」


 目安箱を使用するのは、リスクがあった。業者がリクエストされたものだけを運びに来た場合、僕たちが脱走して隠れるスペースが確保できない可能性が考えられた。


 僕は取り敢えずみんなに脱出できることを伝えた後、外部と連絡を取れる手段が何かしらあることも伝えた。


「その手段が何か判らないけど、見つけることができればここにいても外部に助けを求めることができる可能性はある」


 僕はここで一度深呼吸をして、それと、と続けた。


「宮本さんが爆発した時のことだけど」


 みんなの表情が瞬時に強張る。自分が彼女と同じ末路を辿る可能性はまだ消えていないのだ。


「宮本さんが爆発する前、彼女は自分の能力を使っていた。使った直後、彼女の体が点滅し始めた。そこから推察するに、爆発は各々が能力を使用した直後に起こる可能性が高い」


 今まで能力を使用してきたみんなの顔からは徐々に血の気が引いていく。


「ちょ、ちょっと待てよ! じゃあ高林くんはどうだったんだよ? あの時、彼は能力使ってたのかよ!?」


 航輝が困惑と焦りを抱える。


「多分。高林くんの能力は、記憶をコントロールするもの。授業で教わったことを忘れないように、必要だと思ったものは絶対に記憶から抹消されないように能力を発揮していたとしても不思議じゃない。もしそうだとすると、彼も能力使用後に爆発したと言える。逆に言えば、能力を使用しなければ、爆発しない」

「……………………」


 沈黙には恐れと安堵が入り混じっていた。能力を使用することへの恐怖と、使用しない限り死ぬことはないのだという安心。


 今回の計画。それは、一週間半後にやって来る業者の船に乗り込み、全員での脱出を試みること。失敗すれば、今度こそ後がない。犠牲者を一人も出さず、無事この島を抜け出すこと。これが今回の計画の絶対条件だった。


 そして、一週間半後という日は何事もなく到来した。

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