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不可避なLIMIT  作者:
第一章 「UNKNOWN」
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第3話

 バタンとドアを閉め、そのままベッドにダイブする。仰臥して手紙を眺めた。


 国家プロジェクトの詳細、それは一言でいうと〝日本人の学力を高めよう〟だ。無作為に選ばれた協力者は、約半年間国が用意した特別な学校に通うらしい。しかも寮生活で、そのプロジェクトが終わるまでは家に帰れないらしい。誕生日は家でケーキ食べられないなー……。


 所謂半年の合宿は、優秀な先生が優秀な授業をすれば学力は本当に伸びるのか、ということを確かめるためのものだ。これで成果が出たら国は優秀な先生の育成に力を入れることだろう。


 選ばれた協力者はトップ水準の先生の授業を受けられるため、デメリットはない、という内容がやんわり手紙に書かれていた。僕のように運悪く当選してしまった人が断らないための口実だろう。


 協力者と言うと聞こえはいいが、詰まる所、(てい)のいいモルモットだ。

 僕は嘆息しながら、上に伸ばしていた腕が辛くなってきたので一度それを下ろした。


 日本人の学力を向上させたい、というのは解る。ずっと上位をキープしていた日本人だけど、最近は他国に抜かれていると聞いたことがある。


 それにしても、どうして国家プロジェクトと銘打って大金かけてこんなことを行う必要がある? 優秀な先生が授業するだけなら、どこかの学校に協力を仰いで一クラス丸ごと貸し切ってしまえば早い。もし様々な学力を持った生徒を集めたかったのだとしても、合宿形式にする必要はない。


 そう結論付けようとして、いや待てよ、と自分の中でストップをかける。

このプロジェクトに当選しなかった生徒やその親が当選者に危害を加えることを恐れて、通学形式ではなく合宿形式にしたのか? それにしたって、マスコミに流してここまで大仰にする必要はないんじゃないのか? もしや当選者の断り防止のためか? ニュースにもなる国家プロジェクトのメンバーに選ばれたとなれば親としても鼻が高いし、当選者も悪い気はしない。


 それに、もう一つ怪しいことがある。それは手紙に書かれている〝厳選なる抽選の結果〟という言葉だ。全国の高校生の中からたった十名しか当たらない抽選で僕が当たるわけがない。自慢ではないが、町内会のくじ引きで当たるのは、例外なくいつもポケットティッシュだ。


 僕はそんなに頭がいいわけではないと自分で解っているつもりだ。柄にもなくこんなに思考を巡らせてしまったせいで脳内沸点が五十度くらいの僕の頭からは既に蒸気が立ち上っていた。


 考えるのはもうやめよう。どうせ、僕に拒否権ないし。親が決めるだろう。


 僕は晩御飯ができるまで、部屋でテレビゲームを始めたのだった。

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