表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不可避なLIMIT  作者:
第三章 「ESCAPE」
30/57

第29話

「わたしの能力は、数秒先を見通せる能力」


 ぬいぐるみを抱えた西園寺さんが短く答える。彼女の言葉に、僕は最初に彼女と喋った時のことを思い出した。僕が西園寺さんのぬいぐるみについて質問した時、彼女は数秒焦点が合わなくなり、その後の僕の台詞に対して、そう言ってくれると思ったから話したのだと言った。あの時彼女は、自分の能力を発動していたのだ。


 西園寺さんの告白を皮切りに、航輝、天音さん、早坂くんが自身の能力について話した。僕に直接的に能力の話をしていない一条さんも話してくれ、予想通り、彼女の能力は他人の心を読む能力だった。残るは、宮本さんと勇くん。


 先に口を開いてくれたのは宮本さんだった。


「アタシの能力は、約一キロ先まで見通せる能力」

「その能力って透視もできるの?」


 僕の疑問に、宮本さんは眉根を寄せながらも答えてくれた。


「アタシも昔試したことあんだけど、例えば箱の中に何が入ってるかとか見ることはできなかった。だから透視ってのとはちょっと違うんじゃないか? 多分、近くには適応できないんだと思う」


 なるほど。どこでも何でも見放題というわけにはいかないのか。


「因みに、ここ周辺を見てみたことある?」


 宮本さんは首肯するが、その表情は険しい。


「一キロなんて数字じゃ、樹しか見えなかった」


 僕は宮本さんに頷いてから、最後になった勇くんに目を向ける。彼は伸びた前髪の下にある唇を僅かに動かした。


「ぼくのは力をコントロールする能力……」


 今の一言ではピンとこない。僕は勇くんにもう少し詳しく説明してくれるように頼んだ。


「例えば立っている間足に力が入っている。体にある力を百とした場合立つために足に注ぎ込む力は片足八ずつ。その他の八四の力は使用していなければ体内の特定の場所に残留している。仮に右手に百の力を配分したら壁くらい難なく破壊できるし腹に百の力を配分したらそこを殴られても痛くない」


 ボソボソと抑揚なく早口で語られると、正直理解に手間取る。でもまあつまりは、体内の力をコントロールできる能力ということなのだろう。これで、勇くんが体育の授業で航輝のボールを掴むように受け止めたという現象に納得がいった。ボールを止められるだけの力を両手に配分して、航輝からの力強いボールを掴んだのだ。


 これで全員の能力を把握できた。問題はそれらの能力を活かして、ここを脱出できる策を考えることだ。


「みんな、ありがとう。今の話を参考にここから出られる方法を考えてみるから、二日時間を下さい。明後日の放課後、また僕の部屋に集合でお願いします」


 僕が頭を下げて顔を上げると、みんな頷いてくれていた。高林くんが爆死したことによって教師陣が明らかな敵役となり、生徒たちに一体感が生まれたのだろう。それに、この場からの脱出という共通の目的が設定され、しかもそれぞれの能力を共有したことによって、その一体感は更に強まった。今日このタイミングで自分の仮説をみんなに話したことは正解だった。


「ねえ、涼葉」


 みんながわらわらと僕の部屋から出て行く中、僕は涼葉を呼び止めた。


「何?」

「ちょっと高林くんが爆発する直前のこと教えてほしいんだけど、今時間いいかな?」


 涼葉は一瞬表情を曇らせたけど、すぐに了承してくれた。


 みんなが出て行った部屋で、僕はソファに腰かけ、涼葉はベッドの上に座る。


「で、訊きたいことって?」

「高林くんが爆発する寸前、彼の体は赤く点滅してた。間隔にして一秒。後ろがざわついているのに気付いて僕が高林くんに目を向けてから三回点滅があった。僕たちが気付くまでに高林くんが何回点滅してたか分かる?」


 涼葉は両手をそれぞれ太腿とベッドの間に差し込み、視線を床に落とした。


「多分二回……。最初に赤くピカッて光って、何だろうって思って辺りを見回したら、高林くんが光ってて……。それでわたしや愛加ちゃんが声を出して、すぐに前の席の人たちも振り向いたから多分……」


 涼葉の記憶を信じると、僕が気付いてからの点滅回数と合わせて、高林くんは計五回点滅したことになる。つまり、点滅という爆発の予兆が現れてから実際に爆発するまでの時間は五秒。あまりに短い。それでは何が起こっているのか頭が理解しようとしている間にあの世逝きだ。


 残酷な話だけど、今後残り九人の中で誰かが点滅したら、五秒以内になるべく遠くに逃げなくては爆発に巻き込まれてしまう可能性がある。教室には生徒が十名しかいなかったから机同士の間隔が広くて助かったけど、普通の高校のクラスの人数が教室にいて誰かが爆発したら、間違いなく怪我人、もしくは死亡者が出てしまっていただろう。


「涼葉、ありがとう。嫌なこと思い出させて悪かったね」

「いいよ別に、気にしないで。みんなが助かるためだから」


 涼葉は珍しく苦笑していた。いつもはあまりそんな表情は見せないのに。


 僕は玄関で涼葉を見送り、自分たちが助かるため、この鳥籠から脱出する方法を考え始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ