2人目の転入生
月曜日の朝
真人は教室に居た。「まだ信二君との距離は縮まっていない。これからどうする?」
本当に困った作戦だ。
紀子は真人に近づいた。「で、信二君との距離は?」
「100%中、0,001%」
紀子はため息ついた。まったく、先が思いやられる。
「広報委員石川紀子は居るか?」
鳥山と猫田がやってきた。
「おい、あれ狐狩りじゃないか?」
「紀子、今度は狐狩りに手を出したか}
「アーメン」
紀子は、そんなクラスメートの囁きを無視して、2人の不良の元に来た。真人も着いてきた。
「で、何のようよ?」
「はっはっは!相変わらず気の強い女だ」
「くくく・・・俺達狐狩りと同等になったつもりか?」
2人の不良は校長室へ連れて行った。校長室には液田井……ではなく総統と蛸田が待っていた。
「石川広報委員。情報がある」総統は悪役っぽい声で言った。
「朗報?」
「蛸田、言え」
蛸田はファイルを持って説明した。
「2つあります。1つ目は、信二君は、あの事件の生還者の可能性が高くなってきた」
紀子は興奮気味だった。「そうこなくちゃ!」
「2つ目は?」
「2つ目は、君たちのクラスにまた転校生が来る」
これは朗報だ。真人はそう思った。
「男子か、女子か?」
「美女だ」
ほほ~またまた朗報だ。
「もうすぐチャイムが鳴るわ。戻りましょう」
信二は走って登校していた。寝過ごしてしまった。真希は生徒会の仕事があったから先に登校していた。チャイムが鳴った。また遅刻しそうだった。
廊下を走っていると、誰かにぶつかった。外見上、森田ではないことは確かだった。だが、走ることに夢中だったため、顔は見ていない。
「あ、待って」女子だった。
「ごめんなさい!」
信二は走りながら謝った。
教室に着いた。
「あれ、まだ先生は来てない?」
信二は自分の席に座った。
「危うく遅刻しそうだったね」真希が話しかけた。
「ええ、まったくですよ」
スライドドアが開き、誰か入ってきた。
女子だった。自信に溢れた歩き方をしていた。ツインテールの髪型をしていて、人気アイドル風のルックス、巨乳、まさに男子のツボを抑えたような容姿だ。いわゆる美人。
まったく、この学校は美人が多いだこと。信二はそう思った。
だが、周りの男子達は興奮していた。
「おお!やっと我らがアイドルが旅行から帰ってきた!」
「ああ、幸せ!」
「1枚写真を取らせてください!」
きもい!まるでオタクだ!
「あの、真希さん。あの人は?」
真希は信二の耳元で囁いた。「綾瀬マユ。容姿端整、成績優秀、運動神経抜群、歌もうまい、家事も出来る、まさにこの学校のアイドル。あの子を泣かすと、学校中の男子を敵に回すよ」
近代の男子は怖いな。
マユは笑顔で返事を返していたが、信二を見ると、男子の声を無視して信二の下に来た。
「あなた見かけない子ね」声もアイドルらしい。だが信二の好みではなかった。真希の方がまだ好みだな。あるいは……
「最近転入して来たんです。たぶん、転入当日あなたはいなかった」
ふ~んとばかりに、マユは信二をじろじろ見た。
「ふふふ、不思議な子」
信二は頭が痛くなりそうだった。
「今日から付き合ってください」
ええ~!!信二だけでなく、クラスメート全員が驚いた。
「どういうことですか!マユさん!?」
「そうです。そんな男より俺と!」
「いや俺と!」
信二も納得できない。なぜ初対面の女子が男子に告白するんだ?
「あ、あのう~なぜ僕を?」
「一目ぼれ」
もう頭がおかしくなりそうだ。
蛇谷がやっと来た。「綾瀬、来たのか?席に座れ」
マユは席に座った。
「え~と!今日も転入生が来る。皆、仲良くしな」
また全員騒ぎ出した。
「男かな?女かな?」
「美人がいいな」
「美少年でしょ?」
真人と紀子は、すでに性別を知っていた。
「入れ」
スライドドアが開き、女子が入ってきた。
美少女だ。ロングヘアーで、白い肌、可愛らしいルックス、真人にとっては綾瀬とは負けず劣らずの美少女だ。まるで天使。だが、無口そうだな。感情が表に出ていない。
だが、信二は興味が無いのか、窓の外を見ている。
男子達は囁き声で話した。
「あのこ、めっちゃ可愛いじゃん!」
「うんうん!綾瀬さんとは違う可愛らしさだ」
「やべ、超俺の好みだ」
「俺、思い切ってアタックしようかな」
「無理無理。俺くらいじゃないと」
蛇谷は呆れた顔で男子達を見た。「うるさいぞ。黙れ」
転入生は自己紹介をした。
「立花裕香です。これからお世話になります」可愛らしい声だ。
信二が名前を聞いた瞬間、転入生の顔を見た。
「立花!」明らかに驚いていた。
立花は信二を見た。「信二君!?」こちらも驚いていた。
クラス中も驚いていた。
蛇谷は2人に聞いた。「面識はあるのか?」
信二と立花は縦に首を振った。
「ええ~!!」クラスメート全員驚いた。
真希が尋ねた。「一体どういう関係?」
立花が答えた。「昔の友人です」
信二が訂正した。「いや、幼馴染だ」
他の人も質問しようとしたが、信二と立花がこれ以上聞かないでくれと言う目をしたので、やめた。
紀子は真人に話しかけた。「もしかして、あの娘も事件の生還者かも」
真人は呆れた。「だから、結び付けるな」
信二と立花は屋上に居た。
「お前も東京に来たのか」
立花はうなずいた。「ええ…」
「久しぶりだな」
「ええ…」
相変わらず無口だな。「まあ、仲良くやっていこう」
「ええ」
「懐かしいな。あの時の友人達が」
「ええ…」この時だけ、悲しそうな声だった。信二にもこの気持ちは分かる。
立花が信二に質問した。「もう、あの<感染>は起きないわよね……?」
「たぶんな」
感染……この言葉で急に不安に駆られた。
信二は近いうちに感染が出てきそうな予感がした。
「出来れば、あの<感染>は起きてほしくないな」
【追加登場人物】
立花裕香
転入生。【大羽中学校封鎖事件】の生還者。好意を抱いていた男が事件で死んだ。