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感染者の沈黙  作者: 原案・文章:岡田健八郎 キャラクターアイディア:岡田健八郎の兄 
番外編:その他の人物の運命
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猫野良太

 5人は必死になって階段を駆け上がっていた。

 良太は下を見る。

 忌々しい感染者たちが群れをなして、奇声を発しながら階段を駆け上がってきた。

「畜生、忌々しいぜ!」

 良太は散弾銃を構える。

「よせ、無視するんだ」と佐々木奈々子は言い、上に行こうと目で合図した。

 5人は階段を駆け上がり続けたが、やがては階段の上からも感染者たちが新鮮な肉を求めて下ってきた。

「囲まれたぞ」

「4人とも、こっちだ!」とジュイは機関銃を構えたまま、ドアを蹴りあげるとそのまま廊下を前進した。後ろを振り向けば、感染者たちが狭いドアを通ろうと、詰め寄ってきていた。

 これはチャンスだと思い、良太は散弾銃を感染者めがけて乱射した。細かい散弾が広く飛び、多くの感染者の体に穴をあけた。

 何人かは死んだが、死体を乗り越えて大勢の感染者が廊下に侵入してきた。

「無視しろ!!」と須田は叫び、クロスボウを放った。矢はまっすぐ感染者の頭に命中し、感染者は自分の頭に刺さった矢を確認しようと頭をあげ、そのまま倒れこんだ。

 5人は廊下を進み、奥のドアを開けて階段に出ると、ドアを閉めて近くの棒を閊え棒にした。

「くそ、仲間がいたのは何階だ!?」良太は荒々しい口調で聞いた。

「私についてきて」と須田は階段を上がろうとしたその瞬間、階段の上から無数の奇声が聞こえた。

「畜生、ただでさえ無数のゾンビがマンションにいるのに、その上ゾンビ軍団がマンションに接近中!?戦車くらい欲しいね」

「わがまま言うな、若いの、ここは任せろ!!」

 感染者たちが上から姿を現せた。

 その瞬間だった。

 ジュイの機関銃が火を拭いた。

 その光景は表現のしようがなかった。あえて言うなら、個体が液体になっている、そんな感じだった。

 踊り場には、かつて個体だった感染者の液体が残っていた。

「よし、案内しろ!!」

 須田は階段を駆け上がり始めた。

 4人はついていく。

 下の階から奇声が聞こえたが、気にしなかった。

 ここで不思議と、良太は信じられない感情を抱いた。恐怖や不安は感じていた。感じて当然だ、だが、それ以外の感情があった。それは、地獄では決して感じてはいけない感情だった。

 緊張感と快感。まるでシューティングゲームをしているようなスリリングと、ゾンビたちを撃ち殺す快感、この二つを感じていた。

 だが、今は関係なかった。

「この階だ!!」

 須田はドアを蹴り、クロスボウを構えた。

 廊下には何もなかった。

「クリア!!」

 須田が言うと、ジュイ、紀子、奈々子、良太の順に中に入って行った。

 良太は聞いた。

「軍人気取りか、少佐?」

「あなたこそ、大佐」

 良太はにやりと笑った。

 二人は仲間がいる部屋に向かった。

 だが、その時、上に何かいた。

 二人が気づく前に、上にいる何かは二人の前に着地し、床を破壊した。

 二人と一匹はそのまま下の階に落ちた。

「いたたたた……」

「大丈夫か、レディー?」

「危ないっ!」

 須田は良太を押した。

 同時に二人に何かが横切った。

 それは、感染者とも人間ともいえない形状をした化け物であった。

 それは山羊のような頭をもち、赤い屈強な肉体をもった怪物だった。筋肉そのものが鎧のような感じであった。筋肉をむき出しにした怪物は、圧倒的な威圧感を放っていた。

「やばい感じ……」須田はそう呟いた。

「二人とも!!」と上からジュイが話しかけてきた。

「先に行ってくれベトナム兵。こいつは通してくれそうにない」

「しかし――」

「欲を言うなら、仲間の部屋で待機していてくれ。なぁに、すぐに戻ってくる」

「よし、わかったぞ」

 去っていく音がした。

 二人はそれぞれ自分の銃を怪物に向けた。怪物――ゴートともいうべきか――は唸り声をあげていた。牙が無数に並んだ口から、よだれが流れていた。

「あれはどうやって生まれたんだ?」

「多分、突然変異」

「いや、突然変異で済まされるような品物じゃないぞ、あれ……」

「じゃあ、悪魔に取り付かれた」

「それなら許せる」

 それが合図だった。

 二人は手持ちの武器の引き金を引いた。矢は頭に命中し、散弾は胸と腹に命中した。普通なら即死の攻撃だ。

 だが、ゴートは生きていた。むしろ、痛みを力に変えた。

 ゴートはすさまじいスピードで突進してきた。

 二人は横に跳び、それは回避した。

 ゴートはそのまま、近くにいた感染者の頭をラリアットで吹き飛ばした。

「なんて威力だ!!!」

 その時、廊下の奥から感染者の奇声が無数に聞こえた。

 距離はまだ遠いが、確実に近付いている。

「畜生、タイムリミットがあるのね」

「その間に決着をつければいい」

 二人はゴートと向き合った。

 ゴートは赤い目で、二人をにらんだ。

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