表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感染者の沈黙  作者: 原案・文章:岡田健八郎 キャラクターアイディア:岡田健八郎の兄 
番外編:その他の人物の運命
81/84

坂本真希

 真希は階段の踊り場で一休みしようと走るのをやめた。感染者達はすでに真希を追うのを諦めていた。

 真希は休憩しながら、窓から外を見た。大勢の感染者がマンションに向かって走ってきている。

 真希は思った。なぜ感染者は未感染者の居場所を察知できるの? 感染者達はこのマンションに迷いなく走ってきている。外まで聞こえるような音は出していないし出ていない。なら、なぜ?

 その時、後ろから気配が感じた。

 すぐに後ろに振り返ろうと思った瞬間、首にチクリと痛みが感じた。まずいと思った瞬間、意識が遠退き、やがては途絶えた。


 真希は目を覚ました。

 といっても、頭は完全には覚醒せず、朦朧としている。その影響か、眼鏡をかけているにも関わらず、視界がぼやけている。

 だが、首に違和感を感じ、息苦しいのは確かだ。そして引きずられているのも。

 腕を動かそうと思ったが、なぜか動かない。

 その時、左腕に鋭い痛みが走り、覚醒する。

 自分の腕は背中にねじり上げられ、手錠を掛けられていた。

 首は鎖に固く何重にも巻きつけられ、錠が掛けられていた。

 そして、首の鎖で自分を引っ張る肥満系の男――首にタトゥーがあり、『苦痛と快楽は紙一重』と彫られていた。

 再び左腕に痛みを感じた。

 見ると、今度はやせ細ったの男が、包丁についている真希の血をなめていた。

「この小娘、なかなかいけるぜ、文也」と痩せ男は言う。

「そうか、俺が捌く、大地」と肥満系――文也が答える。

 真希は、何度か立ち上がろうとは思ったが、バランスがとれず、うまくいかない。

 そのうち、再び首にチクリと痛みが感じ、また意識を失う。


 

 気が付くと、真希は地獄にいた。

 そこは人気のない、いわば地下壕のようなところだった。

 首には固く鎖が巻きついており、鎖は壁の太いパイプにくくりつけられていた。相変わらず両腕は後ろで手錠をかけられている。

 立ち上がることはできたが、自由は制限されていた。

 冷たい絶望感がたちまち全身に満たす。

 だが、叫んだりはしたくなかった。そんなことは弱い女がすることだ。

 真希は、まず手錠を跨ぎ越して、腕を後ろから前に戻した。そして、鎖を引っ張ってみる。駄目だった。鎖はパイプに固く結びついている。

 今度は、近くに何か道具がないか探した。大きな石でもいいから、そう願ったが、なかった。

 その時、ドアが開いた。

 3人の男――文也と大地、それに見知らぬ老人――が真希に近寄った。

「何だ、もう麻酔は切れたのか?」

「すまん、パパ」と文也は頭を下げながら言った。

 すると、何の警告もなく文也と大地は真希を壁に押し付けた。

「ちょっと、なにするの!?放して!放してよ!!」

 だが、二人は真希を強く押し付け、顔を無理やり老人――パパに向かせた。

 パパは杖を突きながら、最新式の義足をはめた右足を引きずるながら歩いてきた。

 パパはひげをきれいにそり、髪は整えてある。上等なスーツ。いかにもインテリだ。職業は医者か研究者、あるいは学者あたりかな?

 その表情は、笑みを浮かべていた。

「パパ、とてもうまそうだよぉ」

 大地が嫌らしい顔を見せながら、言った。パパはそんな大地に失望したのか、一瞬だけ顔を顰めた。が、その失望感を真希に向けた。突然、杖で真希の左太股を殴りつけた。思わず悲鳴を上げた。

 パパは一息つくと、しゃべり始めた。

「いいか、大地。お前は獲物の扱い方を間違っている。男ならまだしも、女の獲物は餌と考えてはお前はおしまいだ。いいか、この女の自由は奪っている。つまり、この女をどうするかは我々次第だ。幸い、この女は未成年だが、なかなかの上物だ。長年の性欲を解消できるかもしれない」

 大地は笑みを浮かべたが、文也は理解していないのか、真顔のままだ。

「私はこういう娘が痛めつけられ、悲鳴を上げた瞬間、とてつもない興奮を覚える」

 この時真希は、このパパが変人で猟奇的な思考の持ち主だと確信した。

「よし、5分後にはまずは洗う。次は身体検査、次は遊んで最後は食べる」

 食べるという単語を聞いた時、真希は寒気を感じた。もしや、多くの人がこの3人組に食べられたの?

「大地はホースを、文也はバスルームの準備だ」

 そう言って、3人はドアから外へ出た。

 真希は、3人が出た数十秒後に、すぐに鎖を引っ張ってみたが、びくともしなかった。

「畜生!」と思わず漏らしてしまう。

 まったく、ここはどこなのよ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ