猫野良太
猫野良太は、自分たちがいるマンションの部屋の玄関を見張っていた。
実のところ、食料のいっぱいある場所に避難したかった。今は夜であり、なおかつ激しい雨も降っている。雨と闇に紛れて移動も可能だが、人数が多いため、それは叶いそうにない。
東京にどれほどの感染者がいるかさえわからない状態だ。あのわが日本国を防衛するはずの陸上自衛隊がご立派に守るべき国民を射殺しまくったが、それでも大多数の感染者が生き残っているのは確かだ。
良太は、絶えず覗き穴から廊下の様子を確認している。驚くほど静かだ。
今はウォッカを少し飲んだおかげで、恐怖感というものはなくなっている。酒の力を改めて過大評価した。良太は、警官から頂いた回転式拳銃の手入れをしながら、外の様子を確認した。
このマンションの正面玄関は封鎖しておいた。このマンションの正面玄関のガラスは強化ガラスだから、容易に侵入はできない。だが、マンション内にはまだ相当数の感染者がいるはずだ。全員を殺す自信はない。
だが、不幸なことに相沢茜が熱を出した。熱を出して言うことは、体がウイルスと闘っている証拠だ。しかし、発熱中の人は足手まといだ。不幸にも、この部屋には薬がなかった。あったとしたら、ヘロインとコカインくらいだった。
須田が隣にきた。
「容体は?」
「正直、よくないね。解熱剤はないし、あるのは頭痛薬、睡眠薬、下剤だけ」
良太はため息ついた。仕方ない。
「薬を探すしかないな」
「え?」
「言っただろう?薬を集めるんだ」
不良いう台詞ではない。しかし、このままでは茜が足手まといだ。そう自分を納得させたが、実のところ彼をこの行動を取らせるのは、心に残った良心からだ。
「OK、じゃ、私も同行するわ」
「いいのか?危険だぞ?」
「あなたよりは強いよ?昔は空手を習って、紫帯まで上り詰めたんだけど、色々あってやめた」
これはいい。強い相棒だ。
「鳥山!」
すると、巨漢の中学生、鳥山が来た。
「何だ?」
「俺たちは。ちと薬を探しに行く。玄関の見張り、頼んだぞ」
「はっはっは!任せろ兄弟!」
というわけで。2人は薬を探しに廊下に出た。
廊下は暗かった。
だが、視界は確保できる。
2人は、薬を求めて薬局店に行くことにした。