感染者の黙示録
陸自の司令部に居る長官の和田は、言った。
「航空自衛隊からの応答は?」
「爆撃機はいつでも飛ばせるそうです」
その時、隣に居る男性が言った。
「長官、お電話です」
受話器を取った。
「はい和田です。何でしょうか?」
信也はため息をついた。息子が死んだ。今無き妻との約束を守れなかった。絶対に子供達を守ると。信二には、最後に出会うことも出来ず、抱きしめることも出来ず、愛してると声もかけられなかった。幼い頃から厳しく教育していたためか、信二の笑顔を見ることはなった。
信也は後悔していた。
もう少し甘やかせば、もう少し優しければ、もう少し息子のことを思えば……
機内は悲しみに満ちていた。
すると、パイロットが言った。
「陸相殿、連絡です」
「何だ?」
「緊急事態だそうです」
長官は電話を切った。
「長官、内容は?」
「警視庁、ならびに現地の部隊によると、千葉県、神奈川県、埼玉県に感染者と思われる多数の集団が目撃されたと」
全員が驚いた。
「その数は?」
「把握されていない」
千葉県
大勢の感染者が、市民や警察を襲っていた。
感染者達は奇声を発し、走り、そして襲う。
長官は立ち上がる。
「総理から命令が下された。直ちにコード・レッドを中止し、陸、海、空、全ての自衛隊の総力を結集し、これに対処する」
信也はパイロットに言った。
「進路を変更、沖縄県に向かえ」
「了解」
京子が顔をあげる。
「どうしたんですか?」
「東京外に感染者が現れた」
全員が驚いた。
「あの感染症は強い感染力を秘めている。恐らくたちまち日本全土に感染が広まるだろう。唯一日本本土と繋がっていない沖縄なら感染は防げる」
信也は大声で言った。
「感染爆発が始まった」