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感染者の沈黙  作者: 原案・文章:岡田健八郎 キャラクターアイディア:岡田健八郎の兄 
感染
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血の乾いた獣

 『梶尾聖夜』

 俺は苛立っていた。

 勇敢な軍人もどきの友人が糞忌々しい巨漢を道連れに自爆した。

 普通の中学生なら出来ない、いかれた行為だ。

 そのおかげで助かったのも事実だ。

 この東京でゾンビ物の感染なんて、冗談みたいだ。

 アメリカや、フランスや、イギリスとかならまだ分かる。

 けど、よりによって日本なんて、糞みたいな気分だ。

「大丈夫だ、危険は無い梶尾」

 雑賀っていうサイコ野郎がどっかの小学校の職員室で休憩してる俺に報告してくれた。

 俺は携帯電話でもう一度連絡を取ってみた。

 繋がらない。

 今は電話は使えない。いや、電話だけでなくパソコンのインターネットも使えない。

 完全に外部と連絡が取れない状況だ。

 マスコミに今の状況を伝えたいもんだ。

 その時、職員室の入り口を破壊し、何かが入ってきた。

 血に飢えた獣(感染者)だ。

 俺は図工室にあったノコギリを構えた。

 感染者は奇声を発しながら走ってきた。

「くたばれ!」

 俺は叫ぶと同時にノコギリを感染者の首筋に振り下ろした。

 刃が食い込む。

 俺はノコギリを引く。

 感染者の皮が、肉が、動脈が、切り裂かれた。

 感染者は奇声を発しながら倒れた。

 俺は快感を覚えた。

「ざまーみろ!この間抜け共が!」

 雑賀は黙って俺を見ていた。

「何だ?」

 俺は雑賀に聞いた。

「……変わってしまったな」

 雑賀はそう言って職員室を出た。

 変わった?どういう意味だ?

 俺は雑賀を追いかけようと職員室を出た。

 だが、廊下の奥から感染者が走ってきた。

 俺よりも若く小さい感染者だ。

 俺は玄翁を投げつけた。

 玄翁は感染者のおでこに命中した。

 何かが砕ける音がした。

 感染者は倒れた。

 俺は感染者に近寄った。まだ生きていた。

 俺は玄翁を拾うと、感染者の頭を殴った。

 殴り、殴り、殴りまくった。

 気づけば原型は留めていない。むしろいい気味だ。

 俺は図書室に向かおうと思った。

 集合場所……というより皆が待機している場所だ。

 だが、渡り廊下に誰かが倒れていた。

 警察官だ。

 手に刑事ドラマで見る回転式拳銃リボルバーを持って。

 俺は銃を取り、ベルトに挟んだ。

 すると、後ろから何かが走ってきた。

 ランドセルを背負った、まだ1年生くらいの幼い男子感染者だった。

 俺は躊躇いを感じた。だが向こうは躊躇無く俺に飛び掛った。

 俺はそいつを窓に投げつけた。

 窓が割れ、破片が体中に刺さっても、そいつは俺に飛び掛った。

 俺はそいつを抑えると、玄翁を構えた。

「正当防衛、正当防衛だ!」

 俺はそいつの後頭部に玄翁を振り下ろした。

 そいつは動かなくなった。

 後頭部の皮膚がゆがみ、骨が砕かれ、血が湧き出てきた。

 俺は多少の罪悪感は感じた。だがこいつが俺を殺そうとした。

 俺は駆け足で図書室に入った。

 そこには全員居た。

「大丈夫ですか?梶尾さん?」

 小島が優しげに聞いてきた。

「ああ、大丈夫だ」

 大丈夫だ……俺は大丈夫……

 自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。

 『綾瀬マユ』

 私は校内の教室で女の子を慰めていた。

「大丈夫、お母さんは無事だから」

 女の子は泣いていた。

 廊下で何かが動いた。

 私は丸腰。でも安全は確認しないといけない。

 私は勇気を振り絞った。

「いい?掃除用具入れに隠れて」

 女の子はうなずくと、掃除用具入れに隠れた。

 私は箒を持って廊下に出た。

 背後に気配が感じた。

 気づいたら、首にチクリと鋭い痛みを感じた。意識がなくなる


 『俺』

 は、綾瀬を拉致した。

 ついに!

 俺は興奮を抑えられない。

 さあ綾瀬よ、俺の願いを叶えてくれ。


 『綾瀬』

 気が付くと、私は地下室に居た。

 いや、ボイラー室が正しいか………

 椅子に座っていた。両手両足がガムテープで椅子に縛られていた。

 絶望感が全身に走る。

 同時に怒りと闘争心も沸いてきた。

 私はこんなとこで死なない!私は生き延びる!

 誰かが部屋に入ってきた。

「やあ、綾瀬ちゃん」

 吉川ってクラスメートだ。

 相変わらず地味で変に首を回していた。

「あなたなの?私を拉致したのは?」

 私は怒りを抑えた声で言った。

「そうだよ、僕は綾瀬ちゃんの命を握っている」

 この変態!私は叫びたかった。

 けど、ここであいつを怒らせたら何をするか分からない。ここは辛抱よ!

 吉川は拳銃を構えた。

「これは本物の拳銃だ。下手な真似してみろ?その自慢の顔が台無しになる」

 私はこいつを馬鹿にしたかったが、ここは辛抱!

 吉川は私のポールシャツのボタンを外し始めた。

「何をするの?」

「いいこと」

 吉川はポールシャツを脱がせた。

「いい!いい体だ!いいブラだ!」

 私の素肌とブラが露出する。

 吉川は胸を触った。

「いい!Bカップか!いい大きさ!」

 そもそも吉川は別の班だったはず…

 吉川はブラを外した。

「この変態!」

 ついに言ってしまった。

 吉川は何故か怒った顔になった。

「また言ったね」

 また(・・)

 吉川は突然私の頬に平手打ちした。

「また言ったな!」

 また平手打ちした。

「どうして殴るの?!」

 吉川は拳銃を向けた。

「君は僕の告白を断った」

 はい?

「僕は君が好きだった!なのに君は僕の告白を断った」

 思い出した。

 こいつは2年生になってからしつこく電話やメールを入れてきた。夜中にも!

 挙句の果てには人気の無い場所に連れて行き、私と付き合えと行ってきた。誰だって断るだろう。

「俺は友人達に失望され、馬鹿にされた!お前は俺の人生を滅茶苦茶にした!」

 自分で招いた事態だろう………自己責任だ。

 私はこいつの頭に一発殴りたかった。

「けどいいんだ。これで君は僕のもの」

 変態!変態!変態!この不細工!

「あんたのあそこは小さいでしょ!」

「お前!僕のコンプレックスを…!」

 本当に小さいんだ………

「まあ、君の胸を触れば、気分は良くなる」

 そう言って私の胸をもみ始めた。

「ああ!いい気分da!]

 私は侮辱された気分だ。

 手足さえ自由だったら!


 『感染者』

 感染者は校内を彷徨った。

 血に飢えた猛獣は血を撒き散らしながら歩いた。

 抑えきれぬ殺人衝動が溢れ出て、本能のままに行動した。

 声が聞こえた。

「僕は君が好きだった!なのに君は僕の告白を断った!」

 声は下から聞こえた。

 感染者は走った。

 獲物を求めて。


 『雑賀照夫』

 俺は強い性欲を持った人物の気配を感じていた。

 この性欲は………尋常ではない。

 こいつは狂ってる(クレイジー)だ。

 だが、もう1人の発狂者クレイジーズの気配が感じる。

 強い、殺人衝動を持った奴の気配が!

 俺は鳥山に話しかけた。

「ちょっと付いて来てくれ」

「いいが、何のようだ?」

 俺は鳥山を連れて廊下に出た。

 

 『綾瀬』

 私は耐えていた。

 このふざけた男のふざけた行動に耐えていた。

「たまらん!もう耐えられない!」

 吉川はズボンを脱いだ。

 ブリーフパンツを脱ごうとした。

「何をするの?」

「俺の性欲を解消してくれ!」

 私はガムテープを外そうともがいた。

 吉川がパンツを脱ごうと手をかけた。

「やめて!お願い!」

 その時、扉が開いた。

 同時に吉川は殴られ、倒れた。

「大丈夫か?」

 鳥山さんと雑賀さんだった。

「鳥山さん!」

 私は思わず歓喜の声をあげた。

「縛られてるのか?雑賀、鎌をよこせ!」

 雑賀は大鎌を鳥山に投げた。

 鳥山は私を縛ってるテープを切った。

「ありがとうございます」

 私はこの2人に抱きつきたくなった。

 本当にありがたい!

 雑賀は吉川を見つめた。

 吉川は気絶していた。

「性欲の正体はお前だったか」

 雑賀がそう呟いた。

 その時、吉川が拳銃を向けた。

 私を含め、全員手を上げた。

「よくも邪魔したな!」

 吉川は立ち上がりながら、言った。

「殺してやる!誰からだ!」

 鳥山は大鎌を置いた。

「落ち着け、お前の目を見れば分かる。お前は本当は撃ちたくないんだろ?」

「黙れ!」

「ここで撃てば、お前は俺みたいになる。俺みたいな奴にはなるな」

 吉川は一瞬拳銃を下ろした。

 鳥山はすかさず吉川の顔面を殴った。

 鼻が折れる音がした。

 吉川は入り口まで飛ばされた。

 慌てて立ち上がり、部屋を出た。

 雑賀は大鎌を拾った。

 私はブラを付け直し、ポールシャツのボタンを閉めた。

「あの、本当にありがとうございます」

「礼はいいから、図書室に行こう」

 雑賀は上を見た。

「早くしたほうがいいな、尋常ではない殺意が感じる」

 尋常ではない殺意?一体どういう意味かしら?

 私は2人と共に図書室に向かった。

 

 『梶尾』

 俺は廊下を歩いた。

 感染者の1人が俺に向かって走ってきた。

 俺は玄翁で頭を殴った。

 打ち所が悪かったのか、怯んだもののまた襲ってきた。

 俺はまた頭を殴った。

 今度は倒れ、血を流して動かなくなった。

 また感染者が現れた。

 俺はノコギリで喉を切った。

 血を噴出しながら、そいつは倒れた。

 まだだ。

 俺の怒りはこの程度で収まらない。

 俺は玄翁で死体を殴った。

 俺の怒りはこの程度では収まらない。

 感染者が走ってきた。

 俺は玄翁を掲げた。

 俺の怒りは収まらない。

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