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感染者の沈黙  作者: 原案・文章:岡田健八郎 キャラクターアイディア:岡田健八郎の兄 
感染
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感染者の襲撃

 「吉川裕也の視点」

 気がつくと、俺達の班は、どこかのサイゼリアに中に隠れて居た。

 俺の班は狐狩りのリーダーの液田井に幹部の蛸田、剣道部の実力者である佐々木と五右衛門がメンバーだ。心強い身代わりだ。俺は彼らをとことん利用する。そして、切り捨てる。

 俺はトイレに向かった。幸い、このサイゼリアの窓という窓は全て板で打ち付けられている。

 男子トイレに入ると、俺は一瞬吐き気に襲われた。警察官の死体がトイレに座ってあった。

 ホラー映画のおかげで、はかずにすんだ。

「まてよ?警察といえば…」

期待を胸に、俺は警察官のベルトのホルスターに手を伸ばした。

 案の定、回転式拳銃リボルバーがあった。

 

 コルトディティクティヴスペシャル。38口径、38スペシャル弾使用、装弾数6発の回転式拳銃。

日本全国都道府県警察制式採用銃で私服警官なども使っている。


 俺は拳銃をホルスターから抜こうとした。だが、銃把グリップの底とゴム製っぽい紐が繋がっていて、持ち出しが不可能だ。悪態つきたかった。

 だが、俺は護身用にと厨房から持ち出した包丁で拳銃の紐を切った。そして、拳銃をポケットに隠した。俺はとことんついてる。強力な利用できる連中と班を組み、拳銃を拾えるなんて……

 もう怖いものは無い。この拳銃さえあれば、俺は液田井にも勝てる。

 結局、地味で気持ち悪いと言われていた俺が、生き残れるんだよ。俺を見下してた連中は後悔するだろう。俺は無敵だ。


 「液田井の視点」

 俺は真ん中のテーブルに座り、メリケンサックを磨いた。

 他の班は無事だろうか?俺の幹部が居るから、心配は無いだろう……たぶん。

 俺は吉川が信用できん。あいつは、地味でルックスも悪いが、地味な奴ほど根は悪い奴だと、不良の世界を生きてはじめて知った。きっと何か企んでるだろう。あいつは俺達を利用する気だな?

 あいにく、利用するのは俺だ。


 「蛸田の視点」

 さっきから胸騒ぎがする。なぜだろうか?

 つい数分前に、どこか遠くの店で爆発が起きた。心配する俺に、ボスは「車が衝突したんだろう。心配するな」とか言っていた。確かに、他の班の連中で自爆するような奴なんて居ない。

 だが、なぜか胸騒ぎする。

 俺は伐採用の斧を見つめた。

 今は渋谷中の住民が感染者になっている。

 まったく、ゾンビ事件はアメリカだけで十分だ。よりによって日本だなんてな。

 百を越える感染者相手に、1本の斧で戦うのは無理がある。

 すまないがボス、俺はいざとなったら、あんたを裏切る。


 「五右衛門の視点」

 油断は死を招くぞ。


 「奈々子の視点」

 日本でゾンビだなんて、冗談みたいだな。

 私は、何故か真人が心配だ。彼は無事なんだろうな……死んで無いよな……

 いくら退部した裏切り者でも、こんな状態では心配になってしまう。私の頭はいかれているのか!

なぜ真人ばかりを心配する!他の奴も心配しないとな!

 ………

 やはり真人が心配だ。私の隣ですすり泣く幼女が居る。先にサイゼリアに逃げ込んだ少女だ。

この子は両親が心配で泣いている。両親……そうだ!父さんと母さんは無事なんだろうか!

 無事を確認したい。後真人の安否……なぜ真人が出てくる!

 私は厨房に飾ってあった日本刀を眺めた。これは真剣だ。切れ味も素晴らしいの一言だ。

私は幼女の頭を撫でた。

「大丈夫、お父さんも、お母さんも無事だよ」

「ひっく……う、うん」

私は、少し暗い気分になった。

 突然、少女が顔を上げた。

「お父さん!お母さん!」

幼女は窓に駆けた。

「危ない!」

私は幼女に駆け寄った。

 だが、時は遅かった。

 窓がわれ、板が折れ、幼女は外の世界に居る住民に腕を掴まれ、引っ張られた。

 ウイルスによって、人間らしさを失った哀れな感染者が、幼女の右腕を外に引っ張った。

 私は助けを求めながら、幼女の左手を引っ張った。

「お姉さん助けて!」

幼女は泣き叫んだ。他の班のメンバーがこっちに走ってきた。

「痛い!痛い!助けて!」

 頼む、助かってくれ!!


 「幼女の視点」

 外の怖いおじさん達が、あたしの腕を引っ張ってる。腕が千切れそう……!

「お姉さん、助けて!」

あたしはお姉さんに助けた欲しかった。

あたしの腕を引っ張ってるのは、お父さんだ。

「お父さん?」

お父さんはあたしの腕を噛んだ。

「痛い!痛い!噛まないで!お願い!」

お父さんはあたしの腕を食べてる。

「お父さんやめて!」

お父さんは腕をはなしてくれた。

腕を引っ張ってたお姉さんは転んで、あたしはお姉さんの上に転んだ。

お父さんから噛まれた腕が、とても痛かった。

腕だけじゃない。頭も痛い。割れちゃう!

 あたしはお姉さんを見た。

 綺麗なお姉さん……

あたしの頭が壊れそう。お姉さんを襲いたい。

背中が痒い。お腹が減った。

頭が痛い。背中が痒い

痛い痒い痛い痒い――――お姉さん美人ね――――憎い

ひどくおなかがへる あ ま 痛い

いたい

かゆい

ころしたい


 「神の視点」

 幼女は血を吐いた。奈々子は少女の身を案じた。

 幼女は奈々子を見つめた。目は正常だ。

 次の瞬間、虹彩が突然赤くなった。

「大丈夫か!」

 液田井(総督)は奈々子に駆け寄った。

 突然、幼女が奇声を発しながら、奈々子の首筋を噛み付こうとした。

「やめろ!私だ!しっかりしろ!」

奈々子は幼女の首を掴み、顔を遠ざけた。

「佐々木!踏ん張れ!」

蛸田は斧で幼女の後頭部を割った。後頭部が割れ、大量の血と脳の破片が流れ出した。

「油断は死を招くぞ」

五右衛門は奈々子に手を差し出した。

「あ…ありがとう…」

 その瞬間、次々と感染者が窓を割って入ってきた。

「全員厨房の裏口から逃げろ!」

総督はそう怒鳴って、進入して来る感染者の頭をメリケンサックで殴った。

「行くぞ!」

蛸田は全員を誘導した。奈々子は幼女の死体を見た。

「すまない……!」

絶命した幼女に謝って、厨房に走った。

 総督は感染者を殴りつけた。

「おら!その程度か!」

総督はテーブルに乗っかった。

「おいしい餌がここに居るぞ!ご馳走だ!」

総督は上がってくる感染者を次々とメリケンサックで殴り殺した。

殴られた感染者は、骨が砕かれ、棘で肉を引き裂かれた。

「どうしたゾンビ!あの処刑人デカマッチョが居ないと雑魚だな!」

次々と感染者が殺されていた。だが、同時に次々と窓を割って進入してきた。

「糞!増える一方だ!」

奈々子が日本刀をさやから抜いて、厨房から来た。

「早く来て!」

総督は思いついた。

「ガス栓を全開だ!」

「え?」

「全部のガス栓を全開だ!」

感染者の1人が奈々子に向かった。奈々子は反射的に感染者を刀で切り裂いた。

感染者の頭は胴体から落ちた。大量の血が、噴出した。奈々子は一瞬吐きそうになった。

だが、総督の言うとおり、厨房に戻り、ガス栓を全開した。

「やったぞ!」

厨房から叫んだ。

「お前は出ろ!」

奈々子は裏口から外に出た。そして、ワゴン車に向かって走った。

 運転席で、蛸田が待機していた。全員、後部座席に座っていた。

「ボスは!?」

「もうすぐ来る!」

 総督は厨房に入った。トースターに雑誌をさしこみ、スイッチを入れた。

「バーベキューだ」

総督は裏口から外に出た。感染者が次々と、厨房に入りこんだ。

総督はワゴン車の助手席に座った。

「出せ!」

蛸田はアクセルを踏んだ。

だが、なぜかワゴン車はバックした。

「ごめん、間違えてバックした」

今度こそアクセルを踏んで前進した。

感染者が裏口から出てきた。

が、

突然サイゼリアが大爆発を起こした。店内の感染者は爆死し、付近に衝撃波が発生した。

「何があった?」

蛸田は驚いた。

「簡単さ。どこかの映画の真似をした」

ワゴン車は、そのままサイゼリアを離れた。


 「感染者の視点」

感染者の1人、幼女の父親は走っていく車を見つめた。爆発で吹き飛ばされたが、五体は無事だ。

父親は奇声を発した。

そして、次なる獲物を求め、彷徨い始めた。


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