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感染者の沈黙  作者: 原案・文章:岡田健八郎 キャラクターアイディア:岡田健八郎の兄 
感染
36/84

良治の正体

 石倉は自身の小銃を何回も点検している。

「隊長、一体何回点検するのですか?」

尾崎はバックミラーで石倉の様子を見ていた。

「気が済むまで何回でも」

「隊長、今回の任務は?」

そういえば聞いてなかった。

良治が代わりに答えた。

「この場所に向かってください」

良治はそう言いながら、印の付いた地図を渡した。

「ここに何があるんだ?」石倉はそう聞いた。

「実は、ブラックホークの墜落現場です」

ブラックホークの墜落現場と聞いて、尾崎は不安に襲われた。

「誰が乗っていたんですか?」

「最重要人物だ。政府関係者ではないが、今回の事態の関係者だ」

石倉は考えを張り巡らせた。今回の事態の関係者ってことは、研究員か?

尾崎は地図を永田に見せた。

「案外近いですね」

「何分くらいにつきそうだ?」

「もう目の前です」

ブラックホークの墜落現場に付いた。そこは、狭い道路だった。ブラックホークは無残な姿をさらしていた。爆発が起きていないのか、原型は留めていた。

「よし降りるぞ」

石倉はそう言った。良治を残して全員、機動車から降りた。

尾崎がブラックホークの中に入った。

「隊長、操縦士たちの死体以外何もありません」

石倉はすぐ近くのマンションらしい建物を見た。

「最重要人物はこの建物に逃げた可能性がある」

そう言って1人でマンションに入った。

すると、物音が聞こえた。

「3階から聞こえますね」

いつの間にか尾崎が居た。

「そうか、3階か」

石倉はエレベーターのスイッチを押した。

だが、電力が供給されてないのか、何の反応もなかった。

石倉は仕方なく、エレベーターの横の階段に上がった。

「よせ、感染者が居るかもしれない!」

石倉は良治の忠告を無視し、1人で向かった。


 3階では女性の鳴き声が聞こえた。先の物音といい、女性の鳴き声といい、暴漢に襲われたのか?

 マンションの廊下で女性が座り込んで泣いていた。

「すいません、大丈夫ですか?」

石倉はなるべく丁重に言った。怖がらせないためだ。だが、女性は顔を上げた。そして、近くのドアに入り込み、鍵を掛けた。

「待って!」

石倉はドアを開けようとしたが、開かなかった。

 その時、何者かに足を掴まれた。石倉は床を見た。そこには、瀕死の警察官が倒れていた。

「大丈夫ですか」

「……われた……」

「しっかりしてください!何が割れたんですか?」

「…う…ばわ…れた…」

「何を?」

「拳銃を…」

「動くな」

いつの間にか、サラリーマンのような男が警察官用の回転式拳銃リボルバーを石倉の後頭部に突きつけていた。

「待て!撃つな!俺は何も危害を加えない!」

「いい銃持ってるな、よこせ」

「分かった。渡すから撃たないでくれ」

我ながら情けない。現役陸上自衛隊曹長が、たかがサラリーマンに脅されて銃をおとなしく渡すなんて。

 石倉は銃を渡そうと男に向いた。その瞬間、石倉は男の拳銃を持ってる右手首を掴み、捻った。

「いってえ!」

男は拳銃を落とした。すかさず、小銃を男に向けた。

「う、撃たないでくれ!」

「両手を頭の後ろに置け」

「わ、分かった!」

男は両手を頭の後ろにやった。その時、銃声が鳴った。

重症の警察官が落ちた拳銃を拾い、男を撃ったのだ。

弾丸は、男の額に炸裂した。男は倒れこんだ。即死だった。

石倉は警察官に駆け寄った。

「大丈夫か?」

「あの子を……頼む」

「部屋に逃げ込んだ女か?」

「違う……白い…ワンピースを着た…外国人の少女だ…」

「名前は?」

「…そ……そ…そふぃ…」

警察官は黙り込んだ。

「おい!しっかりしろ!おい!おい!」

石倉は警察官の胸を見た。胸には2つ小さい穴が開いていた。銃で撃たれたのだろう。

「死んだか…」

脈をはかった。完全に死んでいる。

「隊長!」

尾崎たちがやって来た。石倉は尾崎の下に駆け寄った。

「いまの銃声は?」

「なんでもない、それより扉を開けるのを手伝ってくれないか?女性が立てこもってるんだ」

「いいですが、どの扉ですか?」

「あの扉だ」

石倉は指を指そうと振り向いた。だが、女性の入った部屋の扉は開いていた。警察官の死体もなかった。

「馬鹿な!」

石倉は部屋に入った。リビングに入った瞬間、衝撃が待っていた。


 警察官が女性を食っていた。女性の首筋を噛むたびに食いちぎっていた。

「嘘だろ…」

警察官は死んだはずだった。だが、石倉の目の前で女性を食っている。

「隊長!どうし…うわあ!」

尾崎は思わず悲鳴を上げた。警察官は石倉を見た。そして、うなり声を上げながら立ち上がった。

「待て!俺だ!」

警察官は恐ろしい奇声を発しながら石倉に向かって走った。石倉は右手で殴った。

「正気に戻れ!」

警察官は石倉の頭を掴んだ。尾崎は警察官を後ろから取り押さえた。

「隊長!撃ってください!この人は感染者だ!」

石倉は銃を構えた。

「許せ」

引き金を引いた。89式小銃は火を噴き、弾丸を放出した。弾丸はまっすぐ検察官の頭を貫いた。

警察官は2度死んだ。

良治と残り2人の隊員が来た。

「どうした?」

石倉は良治の胸倉を掴んだ。

「お前!一体何を隠してる!」

「隊長落ち着いて!」

尾崎は石倉と良治を離した。

「一体何の感染だ!」

「単純な感染とは違う」

「あれ見れば誰にだって分かる!!」

「隊長、どうしたんですか?」

石倉は警察官を指した。「あの警察はな、つい1分前までは何ともなかった!死体だったんだ!なのに死体が立ち上がって、人を食った!狂犬病と明らかに違う!!」

「君達は、私の発令する命令を実行すればいい」

「あんた何者だ!厚生労働省と聞いたがどうもおかしい!」

「何を馬鹿な…」

永田は冷静な声で聞いた。

「あんた何者だ?厚生労働省だろう?」

「労働省は何も関係ない。真相は知らされてないし、この事態の担当でもない」

良治はポケットに入っているカードを見せた。永田は見た。

「冗談きついぜ…隊長、こいつは本州生物科学研究所の人間だ」

本州生物科学研究所だと?あそこは半年前に出来たばかりの研究所だ。

「おい、ここは何に汚染されてる?」

永田はからかい口調で聞いた。

「バイオセーフティーレベル4の機密ウイルスが東京に漏れたんだ」

永田は笑った。やけくそ笑いだ。

「どんなウイルスだ?狂犬病か?新型狂犬病か?」

「新種のウイルスだ」

尾崎と矢倍は驚いた。

「半年以上前に起きた、大羽中学校封鎖事件で発見された新種のウイルスだ」

「どんなウイルスだ?」

「呆れたな。自衛隊は情報を全ての隊員に伝えてないのか?」

「あの事件の真相を知ってるのは幹部と事件関係者だけだ」永田は冷静に答えた。

「一体何のウイルスに汚染されてる!」

「ラブドウイルス科で極秘機密の新種感染症、DEMONYOデモーニョ

「デモーニョ?」

「ある科学者のレポートによると、ウイルスはフィリピンのある少女に発見され、それを日本に持ち込んだ。ウイルスは、感染すると、感染者の脳に侵入し、感情を司る神経を破壊し、凶暴性を剥き出しにする。つまり、殺人衝動を引き起こす」

「実はこのウイルスに免疫を持った少女がいる。名はソフィー・ヴェルネで、封鎖事件の生還者の一人で、ウイルスに感染しながらも発症してない。つまり保菌者だ」

「この子はしばらく研究所で研究されてた。だが、研究所で停電が発生し、この子は脱走した」

「それで感染が広まった?」

「少女はすぐに捕獲されたが、彼女を運んだヘリコプターが何らかのトラブルが発生したのか、墜落した」

永田は笑った。「で、俺達に少女を探せと?この拾い東京でどこに居るか分からない少女を?」

「少女が行きそうな場所は検討がついてる」

「事情は分かった。さっさと少女を見つけて、この狂気の街からさっさと出よう」永田はそう言って、外に出て、機動車に向かった。尾崎と矢倍も後に続いた。

「少女の血液で、ワクチンが作れるかもしれない。頼むぞ」

良治も外に出た。石倉は、近くの椅子に座った。

 くそみたいだぜ。これがアメリカ、イギリス、フランス、スペインならまだ分かるぜ。でも何でよりによって日本なんだ?

 そんな思いを抱えながら外に出た。すると、階段の上から、白いワンピースを着た外国人少女が降りてきた。石倉は警察官の遺言を思い出した。

「そこのお嬢さん」

なるべく優しそうに言った。少女は石倉を見た。明らかに怯えてる。

「大丈夫だよ、俺は何もしない。安心しろ」

小銃を背中に隠した。少女は上へ逃げた。

「持って!」

石倉は追いかけた。だが、居所が分からなくなった。

「まったくついてないぜ」


だが石倉は気づいていなかった。その少女こそが、任務の目標であることを




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