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感染者の沈黙  作者: 原案・文章:岡田健八郎 キャラクターアイディア:岡田健八郎の兄 
平和
3/84

取材

1時間目の数学が終わった。

紀子は信二の席へと向かった。信二は紀子を見た。眼鏡にカメラに手帳、いかにも取材陣らしい。そう信二は思った。

「どうも。クラスメートの石川紀子です」紀子は信二を握手した。

「ど、どうも・・・相沢信二です」

紀子は、胸にあるポケットから何かを取り出した。小型録音機だった。

「信二君、2,3質問します。まず、あなたの前に居た学校は?」

信二は首を横に振った。「すいません。それは言えません」

「では、転校理由は?」

「家庭内の事情です」

「どんな事情ですか?」

「それは、秘密です」

紀子は単刀直入に聞くことにした。

「あなたは<大羽中学校封鎖事件>の生還者ですか?」

信二は一瞬黙り込んだが、すぐに答えた。「いいえ」

「本当に?」

信二はため息をついた。「あなたは、あの事件の事実を知りたいのですか?」

「はっきり言えば、そうですね」

「なら、インターネットで<感染者の牙>を検索するといい」

紀子は、聞き返した。「感染者の牙?」

「大羽中学生が投稿した封鎖事件の真実ですよ」

紀子は録音機を止めた。「ありがとうございます」


「で?収穫は?」真人は呆れ声で言った。

「感染者の牙をネット検索しろ・・・だってさ」

真人は渋い顔した。「感染者の牙?帰って検索するか」

紀子は真人に笑顔を見せた。「別に、今でも検索できるわよ」


 ―第1技術室―

第1技術室は、いわばパソコンルームだ。

「ごめんね~真希ちゃん。いろいろコネを使ってもらって」紀子はそう言った。

「別にいいよ。私もちょっと気になるし♪」真希は愛想の良い声で答えた。

「ほんとに、お世話になるわ~」

技術室には、真人、紀子、真希、真斗、聖夜、トリエンが居た。

「何でお前らも居るの?」真人はそう聞いた。

「だって、気になるもん」全員、そう答えた。

紀子はパソコンの電源をつけ、インターネットを開いた。

「えっと、感染者の牙っと」紀子は検索した。

「あったあった」

紀子はクリックした。

聖夜は画面を見た。「どうやらネット小説らしい」

「題名が感染者の牙で、あらすじは、この物語は真実です。大羽中学校封鎖の真実を書きます。作者、和真・・・鳥円!」

全員、トリエンを見た。「違うよ!俺じゃないよ!俺ベトナム人!」

「分かってるわよ。それよりも小説を読もう」

全員、小説を読み始めた。


 ―数分後―

「こ、これって・・・」と紀子。

「明らかに・・・」と真人。

「いや絶対に・・・」と聖夜。

「フィクションだニャ♪」と真希。

真希を除いて、全員失望のムードになった。

「トリエン!てめー、ふざけたこと投稿するな!」聖夜はトリエンを殴った。

「違うよ!俺じゃないよ!俺はネット小説なんか書かないよ!」

「とにかく、教室に戻りましょう。時間の無駄だったわ」紀子はそう言った。

「そうかな~?私は結構、面白かったけど♪」

全員、技術室を出て、教室へと戻った。


「やっぱり本人から聞くのが一番ね」紀子は言った。

「でも、本人は否定してるぜ?」真人はそう答えた。

「分かってないわね~。嘘ついてるのよ」

「嘘?」

「そう・・・私は彼に、あの事件の生還者か?って聞いたの。違うなら普通即答なんだけど、彼は一瞬黙り込んだのよ」

「ああ!なるほど!」

「だから彼は絶対、あの事件の生還者で、事実を知っているはず」

「でもどうやって?」

紀子はウィンクした。「簡単よ!彼の友人になるのよ」

「友人?」

「そう・・・彼と友人になり、友情を深めていって、親しい仲になるの」

「なってどうする?」

「分かってないわね~。親友だから打ち明けられる秘密もあるもんでしょう?」

真人は目を丸くした。「じゃあ、あいつと親友になって、あの事件の真実を語らせようと?」

「そういう事」

「でも親友なんて、そうそうなれるもんじゃないぜ」

「そこで、あなた出番よ」

「お、俺!?」

「だってあなたは友情を大切にする人じゃない」

「でも、相手はまだ得体も知れない人物だぜ」

「そこを何とかしなさいよ」

「んな無茶な~」

「お願い・・・ふふふ」

真人はため息をついた。面倒な事になってきたぞ。


信二は、社会の歴史の教科書を忘れたことに気づいた。隣に座る真希に頼み込んだ。

「お願いします。教科書を見せてください」

真希は笑顔で答えた。「うん!いいよ♪」そう言って自分の席を信二にくっつけた。

「ありがとうございます!」

「お礼はいいよ。私は坂本真希。以後よろしく♪」

「こちらこそ、以後よろしくお願いします、坂本さん」

「敬語は使わなくていいよ。堅苦しいから。それに私のことは真希って呼んでね♪」

信二は真希の人柄を気に入った。この人とならうまくいきそう・・・。そう思った。




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