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感染者の沈黙  作者: 原案・文章:岡田健八郎 キャラクターアイディア:岡田健八郎の兄 
感染
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発狂者

包帯で顔を隠した少年が、つるはしを振り回しながら、信二達に走っていった。感染者なのか、未感染者なのか判断が出来ない中途半端な奇声を発しながら。

信二は斧を構えた。

「逃げろ!!」信二は叫んだ。

と、同時に少年はつるはしを横向きに振り回した。信二は反射的に頭を下げた。

つるはしの先が信二の髪の毛をかすった。

が、少年は右足で信二を蹴り上げた。

信二は倒れてしまった。そして、つるはしを振り上げた。

まずい!信二は心の中で叫んだ。

真人が、少年を羽交い締めで抑えた。

「畜生!お前は感染者なのか!?」

真人は叫んだ。どうやら感染者なのか分からないようだ。

少年は後頭部で真人の顔を頭突きした。

真人は怯み、少年を解放してしまった。

少年はつるはしを無茶苦茶に振り回した。

「危なっ!」真人は避け続けた。

「くそ!持たない!」もう駄目だ!おしまいだ!

そう思った瞬間、少年が突然倒れた。

よく見ると、右脚に鎌が刺さっていた。

「早く逃げて!」立花が少年の脚に投げたのだ。

信二と真人は走り出した。立花は茜の車椅子を押しながら走った。

「エレベーターだ!乗ろう!」信二はエレベーターのボタンを押し、扉が開いた。

全員エレベーターに乗り込んだことを確認すると、すぐに1階を押した。

扉が閉まり、全員、一安心した。

「しかし、あいつは感染者だったのか?」真人は信二に尋ねた。

「分からない。中途半端な奇声だったから」

「でも、暴れるだけの無能には見えなかったな」

「これから彼をどう呼ぶの?」立花はそう言った。

真人は悩んだ。「う~ん、いっそ、半端野郎ってのは?」

「包帯男」茜がさり気なく言った。

信二は意見をまとめた。「分かった。あいつを感染者じゃないことを前提して、妨害者と呼ぼう」

エレベーターの扉が開いた。

信二達は病院から出ようとした。

が、病院入り口のシャッターが閉まっていた。

「これからどうする?」

「裏口があるはずだから、そこから出よう」

信二達は裏口に出ようと振り向いた瞬間、立花の頭に何か横切った。

さっき立花が投げた鎌だった。

信二達の目の前に、妨害者が居た。

「くそ!あいつの横を走れ!」信二は叫ぶと同時に、斧で妨害者の頭を割ろうとした。

妨害者はつるはしで、それを防いだ。真人はその隙に、妨害者の横腹をナタで切ろうとした。

妨害者は素手でナタの刃を握り、受け止めた。

立花は、茜の車椅子を押して、妨害者の横を通ろうとした。

妨害者は、車椅子を蹴った。

茜が車椅子から落ちた。

「茜!」

信二は茜のもとに駆け寄ろうとしたが、妨害者はつるはしで信二の足を引っ掛けた。

信二は倒れてしまった。

真人はナタで足を切ろうとした。だが、また刃を握られて失敗した。

立花は茜を車椅子に座らせて、再び押した。

信二の後に続いた。真人は妨害者の頭を右手で1発殴りつけた。妨害者は倒れこんだ。

信二達は、受付を飛び越えて、職員たちの待機室に入った。

そして、裏口が見えた。

「やった!」

信二がそう言って裏口を空けた瞬間、白衣を着た男性感染者が信二に掴み掛かった。

「畜生!」信二は感染者の腹を力いっぱい蹴りつけた。

感染者は外に飛ばされた。信二は裏口を閉め、鍵を掛けた。

来た道を引き返そうとしたが、妨害者が走ってきた。信二は待機室の扉を閉めた。

妨害者は木造の扉をつるはしで壊し始めた。

「どうするの!?」立花は信二に聞いた。

「立花は茜を頼む。真人」信二と真人は、武器を構えて女子2人の前に立った。

妨害者は扉を破壊し、室内に入った。

同時に感染者も裏口の鍵を壊し、室内に入った。

感染者は、信二達ではなく、妨害者に向かって恐ろしい奇声を発しながら走った。

妨害者は感染者の右足をつるはしで刺した。

感染者は一瞬怯んだが、妨害者のつるはしを奪い、投げ捨て、掴み掛かった。

妨害者も感染者に掴み掛かった。

あいつは感染者じゃなかったのか!信二は瞬時に理解した。

信二は感染者が破壊した裏口から外に出ようとした。

だが、複数の感染者が外に待機していた。

信二は裏口では脱出できないと判断し、来た道を引き返した。

感染者と妨害者が、まだ掴み合いをしていた。

信二達は、またホールに出た。出入り口では、やはりシャッターが閉まっていた。

見渡すと、階段も防災シャッターが降りていて、通行不可能だ。

馬鹿な!来た時には下げってなかったのに!

感染者達が院内に侵入してきた。信二は3人を連れえてエレベーターに乗った。適当にボタンを押し、扉を閉めさせた。


信二は、エレベーターという、聖地に居ることを確認した。

真人は震えていた。「あいつ、感染してなかったのか」

「でも、なぜ私たちを襲ったの?」

「さあな、発狂したんじゃないか?」

発狂……そういえば、あの老婆も発狂していたな。

極限の絶望や失望感で都内で精神がおかしくなった奴らがいるのか?

発狂者達クレイジーズ、いかれたもの達、つまり、あの少年も発狂者達クレイジーズの1人で、殺人鬼になってしまったのか?なら、都内にはもっと発狂者達が居るはずだ。厄介だな……

「で、どうする?1階は感染者に制圧されたぞ?」

「非常階段を使う」信二の答えは早かった。

「なるほどね」

エレベーターの扉が開いた。

「よし、さっさとこの糞忌々しい病院から出よう」

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