転入生
【前作の登場人物】
相沢信二
大羽中学校学校封鎖事件の数少ない生存者。あの出来事がトラウマになっており、毎日悪夢にうなされている
相沢信也
信二の父親。陸上自衛隊に入隊しており、階級は陸将。前作では名前のみの登場
相沢茜
信二の妹で信也の娘。重い病気を患い、入院中。
相沢信一
信二と茜の兄で信也の息子。SATの狙撃手。
【新たな登場人物】
安藤真人
転入した信二の始めての友人。友情は大切にする人物。陸上部所属。結構異性から人気ある。イケメンで運動神経抜群。一人称は俺
梶尾聖夜
大柄の肉体派男子。成績はそれなりに良い。部活はサッカー部。クリスマスに生まれたため「聖夜」と名づけられる。普段は常に不機嫌。猫アレルギー一人称は俺。
坂本真希
はちゃめちゃ生徒会長で眼鏡をかけた女子。信二に興味を示す。
帰宅部だが、相当なタフで学校内では人気がある美女。猫好きで口癖は「ニャー」一人称は私。
実は空手を習っており、黒帯。常に上機嫌。
波川五右衛門
剣道部所属の男子。相当な実力者で町内大会を何度も優勝。物静かで堂々な性格のため、周囲からは現在に生きる侍と呼ばれる。口癖は「油断は死を招くぞ」一人称は拙者。
佐々木奈々子(ささきななこ)
剣道部所属の女子。ポニーテールのロングヘアーで美女だが、五右衛門に匹敵する実力者。口癖は「隙だらけだぞ」一人称は私。
吉川裕也
落ちこぼれで、冴えない男子。友人も少なくいつもクラスでは孤立する。部活は美術部だが、美術は苦手。一人称は僕。
黒澤真斗
左右不対称のツインテールをした美少女。無口で性格は純粋で嫉妬しない。滅多に笑顔を見せないため、彼女の笑顔はレアと言われている。帰宅部だが剣道、柔道、空手の達人。一人称は私。
武田松江
渋い男子。自分のことを大佐と呼ばせる。柔道を習っている。一人称は俺
尾田句田
ゾンビオタク。赤いコンタクトレンズを持っている。一人称は僕。
綾瀬マユ
学校内ではアイドル的存在の優等生女子。男子からは人気、女子から妬まれている。なぜか信二を気に入った。一人称は私。
ジャン・ヤ・トリエン
ベトナム人の優等生。傲慢な性格。一人称は俺様。
蛇谷古代
元自衛隊の教師。基本的に面倒見が良く、声も渋いため生徒から人気がある。担当教科は社会。安藤達の担任。一人称は俺。
石川紀子
広報委員。信二を【大羽中学校封鎖事件】の生存者だと睨み、インタビューする。一人称は私。
小島香美
金持ちのお嬢様っ子。プライドが高い。一人称は私
3年1組の安藤真人はいつも通り、教室の窓側の席に座っていた。
「今日も平和だね~」そう呟いた。
「隙だらけだぞ」何者かがそう言って真人の右肩を竹刀で叩いた。
「いってえよ!奈々子!」佐々木奈々子が竹刀を肩に担ぎ、真人を睨んでいた。
「平和ボケしてるなよ。人間はいつどこで死ぬか判らないからな」
平和ボケって・・・戦争が無いからすりゃあ平和ボケするよ。おかしな女だな。
「五右衛門!この女子に一言言ってくれ!」真人は、自分の2個後ろに座る波川五右衛門に助けを求めた。五右衛門は真人を見つめた。「油断は死を招くぞ」
「五右衛門まで・・・」真人は絶望した。
「今なら間に合う。剣道部に入れ」奈々子はそうアドバイスした。
「無理だね。もう陸上部に入ってる。陸上部が廃部しない限り、俺は陸上部をやめない」
真人は隣に座る坂本真希に助けを求めようとした。「生徒会長様。お願いです、この女子に正義の裁きを」
真希は、眼鏡をかけ直した。「楽しそうじゃない♪別に、私が制裁する必要ないじゃん♪」
この生徒会長はいつも上機嫌でテキトーすぎる。真人はそう思った。
「武田!お前ならわかってくれるだろ?」
武田松江は不機嫌そうに咳払いする。「大佐と呼べ」
「大佐!頼みます!」真人はそう言った。
「女性に暴力は振るわない。俺のポシリーだ」畜生!真人は心の中で叫んだ。
スライドドアが開き、黒澤真斗が入ってきた。真佐江の席は真人の斜め後ろだった。
「おはよう!」と真人が言うと、「・・・おはよう・・・」と真斗が小声で返した。
相変わらず無口だな。真人はそう思った。
「ああ!もうマジありえねーし!あいつ後でぶっ飛ばす!」
梶尾聖夜が不機嫌そうに真人の後ろに座った。
「どうしましたか?」
「稲葉と坂本が俺のことをバイオレンスパパって言いやがった!」と不機嫌そうに言った。
「私、言ってニャいよ?」と真希が言った。
「お前じゃない。2組の坂本流星だ」と聖夜は答えた。
「それと「ニャー」はやめてくれ。俺猫嫌いなんだ!」
「ニャんて事を言うニャ!猫可愛いのに!」
「俺は猫嫌いなんだ!」
「ニャー♪」
聖夜は指と首を鳴らした。「てめー、マジで殺すぞ」
「望むところよ」真希は眼鏡をかけ直した。
真人は、真希の背後から虎、聖夜の背後から龍が現れたように見えた。「幻覚か?」
スライドドアが開き、石川紀子が入ってきた。
「朗報!朗報!」紀子は大きな声で言った。
「新種ゲーム機が販売するのか?」ジュン・ヤ・トリエンが面白半分で冗談を言った。
紀子はむかっとした。「違うわよ!」
「じゃあ何だ?」聖夜は不機嫌そうに言った。
「転入生が来るのよ」そう言った瞬間、クラスメート全員紀子を見た。
「マジで!」と男子が聞いた。
「男?女?」とトリエンが聞いた。
「男だよ」と紀子が言った。
「男か・・・イケメンかな♪」と真希は言った。
その瞬間、チャイムが鳴った。「皆、席に座りなよ♪」と真希は言った。
真人は、転入生が気になった。今年初めての転入生だな。愛想いいかな?
担任の蛇谷古代が入ってきた。渋い声で真人達に言った。「今日は新しい仲間が来るぞ」
スライドドアが開く。
1人の少年が入ってきて、黒板の前に立った。
「相沢信二です。神奈川から越してきました。これからよろしくお願いします」
真人は転入生を見た。イケメンだな・・・。近くの女子達の囁き声が聞こえた。
「結構イケメンじゃん」
「頭良さそうね~」
「超、私好みじゃん」
「思いっきりアタックしようかな」
「無理無理。あなたじゃ無理」
女子共が騒ぎ出した。だから女は面倒だ・・・ってどっかの男子が言いそうだな。真人はそう思った。
「信二君の席は・・・じゃあ窓側の一番前に座ってもらおう。男子達、下がれ」
窓側の男子達は席を下げた。蛇谷は、新しい席を窓側の一番前に置いた。信二はそこに座った。
それにしても、神奈川から東京まで引っ越すなんて、ご苦労なこった。真人は1個ずれたことで、隣が真斗になり、斜め後ろが紀子になった。真希が信二に話しかけた。
「君、ちょっとテンション低いね」
「そ、そうですか?」信二はそう答えた。
「前の学校で何かあった?」
信二は少し黙った。真希にとってこの沈黙こそが答えだった。
「ごめん・・・答えなくていいよ。私が悪かった」
信二は真希を見た。「別にあなたは悪くない。前の学校でトラウマ級の出来事があってね」
「トラウマか・・・ごめんね。振り返りたくない過去があるんだね」
「・・・はい」
紀子は真人に話しかけた。
「ねえ、あの転校生怪しくない?」紀子は小声でそう言った。
「そうか?」
「絶対怪しい」
真人は呆れた。「怪しいなら、お前の意見を聞かせろ」
「<大羽中学校封鎖事件>を覚えてる?」そう紀子は質問した。
真人は覚えていた。大羽中学校封鎖事件は、警察特殊部隊によって中学校が封鎖され、自衛隊が校内に突入、大勢の生徒を射殺した事件だ。警察や自衛隊からの公表は無く、生存者も数名しか居ない。前代未聞のこの事件で一時期ウイルス流行説までできたが、真実は今だ不明だ。
「でも、事件から半年以上立ったぞ。生存者はとっくに社会復帰してるだろ?」
「でも、あの事件で精神がおかしくなって、精神病院で治療してたかも」
真人はため息をついた。「だったらどうする」
「決まってるじゃない」紀子はウインクした。「取材するのよ。真実を突き止めるの」
再びスライドドアが開いた。
赤い瞳をした生徒が入ってきた。真人はまたかとばかりに呆れ、信二を見た。
真人は信二の反応に驚いた。
信二は赤い瞳をした生徒に恐怖を感じていた。「まさか・・・!」小声で信二はそう言った。
「尾田。コンタクトはずせ」
「へ~い」
尾田句田は赤いコンタクトをはずした。信二はそれを見て安心した。
真人は紀子に話しかけた。
「あの転入生の反応みたか?」
「ええ。絶対何かあるわよ。私たちが知らない秘密が」
紀子は興奮した。
「これは大スクープ間違いなし。謎の転入生の正体は?」