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感染者の沈黙  作者: 原案・文章:岡田健八郎 キャラクターアイディア:岡田健八郎の兄 
感染
19/84

生徒達の国境

「自衛隊の玄関の鍵を壊されちゃった」

真希はそう皆に言った。

「これからどうします?先生」真人は皮肉っぽく言った。

蛇谷が考え込んだ。

「学校へ行きましょう」信二はそう提案した。

「駄目だ、数が多いと危険も大きくなる」

「ですが、戦力も大きい」

蛇谷は何か言いたかったが、信二の提案を呑んだ。

「分かった。ここよりは少し安全だな」

蛇谷は部屋の隅に置いてあった89式小銃を取った。

「予備の弾倉は?」

「机の上に」

蛇谷は9mm拳銃を信二と真人に渡した。

「まともには使えないと思うが念のためだ」

2人に2つずつ予備の弾倉を渡した。

「真希は無線を持ってくれ」

蛇谷は真希に無線機を渡した。

真希は包丁を持った。

「それじゃ、いくぞ」

蛇谷は先頭に立ち、家から出た。

「大丈夫だ、行こう」

信二は蛇谷の見事なステルス行動に感心した。さすがは元自衛隊なだけある。

蛇谷は小銃を構えながら歩いていた。

無線機から音声が聞こえた。

全狙撃手スナイパーは狙撃地点に着きました。狙撃対象は?』

『赤目の奴らだ。外に出てる赤目は撃て。テレビやラジオで外出禁止令を出した。外出している奴は少ないだろ』

『了解』

蛇谷は壁には張り付いた。

「壁に張り付きながら、姿勢を低くしろ」

蛇谷はほとんど音を立てずに歩いた。信二たちも姿勢を低くしながら歩いた。

「待て!」

蛇谷は4階建ての建物の屋上に指を刺した。

「あそこに狙撃手が居る」

そういいながら、信二たちを誰かの家の塀の入り口に入れさせた。

「そこに隠れてろ」

そう言って、蛇谷も塀の入り口に隠れ、小銃を構えた。

信二は顔を出して様子を見た。

1人の男が歩いていた。

目は普通だ。非感染者だな!

「先生、一般市民です」

「分かってるが、大声を出すとこちらの位置を悟られる」

男が歩いていると、銃声が鳴り響いた。男の頭が撃ち抜かれた。

「くそ!感染者と間違いやがったな!」

また銃声が鳴り響いた。今度は蛇谷たちの隠れている塀に当たった。

「くそ!あいつ感染者と非感染者の見分けが付かないのか?」

蛇谷は白旗を出し、塀から出して振った。

2発の銃声が鳴り響き、塀の当たった。

「どうやら、あいつ見分けなんて始めからしてないようだな。相沢、あいつ今何発撃った?」

「たぶん、4発」

「よし」

蛇谷はまた白旗を出した。銃声が鳴り響いた。

蛇谷はすかさず小銃を構え、狙いを定めて1発撃った。

「双眼鏡あるか?」

信二は双眼鏡を渡した。

蛇谷は双眼鏡で確認した。

「死んだぞ、安全だ」

信二は一安心した。真人は小声で怒鳴った。「殺したんですか!」

「障害になるからだ」

「だからって」

「正当防衛だ。それにあいつだって人を殺した」

真人はそれ以上言わなかった。


 「もうすぐ学校に着くぞ」

信二たちの通う学校が見えてきた。

よく見ると、1階の窓ガラス部分が板で打ち付けられていた。

「窓が木の板で塞がってるな」

「玄関は?」

「玄関の窓部分も板で塞がってる」

信二たちは玄関に近づいた。

「おや?開いてるな」

信二たちは玄関から校内に入った。

すると、バッド、ラケット、包丁などを構えた生徒、職員が信二たちを囲んだ。

「これって、外の方が安全ジャン」真希がさりげなく呟いた。

紀子が来た。

「彼らは大丈夫よ」

全員、武器を下ろした。

真人が近づいた。「お前がリーダーか?」

「まあ、実質的にはね」

蛇谷が聞いた。「ここを要塞にしてるのか?」

「ええ。トイレもあるし、レトルト食品もあるし、非常用食料もあるし、水もあるし」

レトルト食品と非常用食料はまとめて食料って言え。信二はそう思った。

「ここは安全よ」

信二たちは2階の自分たちの教室に入った。

クラスメート全員居た。尾田を除いて……

「尾田君は?」

「…殺された…感染者として…」

信二は同情はしたが、自業自得だと思った。


 真人と紀子は第1校長室に向かった。

ドアをノックした。

「合言葉は?」中から声が聞こえた。

「猫耳最高」

ドアが開いた。

中には狐狩りの幹部メンバーが居た。

「何のようだ?」液田井……ではなく総督が聞いた。

「暇だから来たのよ」

真人はメンバーの装備を見た。

総督は無装備だな。いや、よく見れば棘付きメリケンサックを付けている。

雑賀は大鎌を持っていた。

蛸田は斧を持っている。

須田は弓矢を装備している。

鳥山は巨大な丸太を装備している。

猫野は本物の回転式拳銃だ。

「マジで怖い集団だな」

真人はそう言った。

メリケンサックは分かるが、斧、大鎌、弓矢、拳銃はすごすぎだろ!

「狐狩りの全勢力をここに集結させたから安全だ」総督は断言した。

「変質者など我々の敵ではない」雑賀はガスマスクの呼吸音交じりで言った。

「私の弓の腕はスナイパー並みだよ」須田は自信ありげに言った。

「私たちのところに居れば安全だ」蛸田が言った。

「はっはっは!まさに特殊部隊だ!」鳥山がそう言った。

「くくく・・・私が一番助かるけどね」猫野が言った。

確かに校長室に居れば安全かもな。そういえば、校長室の前で大勢の不良集団が金属バットやメリケンサックやハリセンなどを持って警備してたな。

「友人たちを連れてここに来るといい」総督は言った。

「大事なお客さんだからね」須田は惑わすような声で言った。

「はっはっは!まさに用心棒」鳥山は笑いながら言った。

「くくく・・・どう痛めつけてやろうか?」猫田は論外。

真人は友人たちを連れて行くことにした。

こいつら、案外良い奴らだな。


 信二は立花の隣に座った。立花は血まみれの鎌を持っていた。

「殺したのか?」

「うん」立花は悲しげに言った。

当然だよな。感染者とはいえ、人を殺したからな。しかも前の事件で友人を殺したからな・・・

信二は立花が十字架のネックレスをつけていることを気づいた。

「それ、紘輝のか?」

「・・・ええ・・・」

「唯一の形見か」

「・・・ええ・・・」

紘輝・・・彼を思い出した瞬間、2人は悲しみが込み上げた。

信二の友人たちの中でも感染者と勇敢に戦い、感染者になった男。

そして、立花の手で殺された男。

「あいつの話題はやめよう」

「いいの。彼は私を何度も救ってくれたから」

「でも悲しくなるだろ?」

「・・・うん・・・」

信二は頭を撫でた。

「あいつの唯一の形見は大事にしろ」

「・・・うん・・・」

信二は立ち去った。

すると、2人の中学生の兄と小学5年生くらい妹が階段で話していた。

「兄ちゃんが守ってやるからな」

「でも・・・」

「大丈夫だ」

真希と蛇谷がやって来た。

「どうしたの?」

妹が真希に言った。「兄ちゃんが怪我してるの」

「どんな怪我」

「お父さんに肩を噛まれたの」

信二が驚いた。「お父さんはどうやって噛んだ?」

「わめきながら」

信二はゆっくり座った。言いたくないが、仕方がない。

「お兄さん、残念ですが、あなたは感染してます」

兄が驚いた。「一体何に?」

「人を狂暴化させるウイルスに」

「嘘よ!嘘よ!」妹が兄に抱きついた。

「発症したら、俺は父さんみたいに人を襲うのか」

「残念ですが・・・」

「嘘よ!」

妹は泣き始めた。

兄は眼から涙を流した。「もし俺が死ねば、妹は家族を全員失う」

兄は信二を見た。

「感染は確実か?」

真希は否定した。「確実のはずじゃない」

「いいや、確実だ」

信二は半ば同情していた。

「感染した人は短期間で発症して、親しかった友人や家族を襲う。噛むだけで感染する」

兄は妹の頭を撫でた。

「これが現実です」

兄は信二を見た。

「妹を頼む」

「お兄ちゃんの嘘つき!」

妹はどこかへ走り去った。

真希は妹を追いかけた。

兄は泣き出した。だが、すぐに泣き止んだ。

「人生は・・・死ぬその瞬間まで・・・愛しい」

信二はうなずいた。

「ろくな成果を出せずにこの世に去るのか・・・」

信二はうなずいた。

「生きることは・・・素晴らしい・・・そう思わないか?」

信二は黙ってうなずいた。

「妹を守ってくれ」

そして兄は下を向いた。

蛇谷は信二をどこかへ向かわせた。

「名前は?」

兄は答えなかった。

顔を上げた瞬間、兄の眼は真っ赤に染まっていた。

「許せよ」

蛇谷は小銃を構えた。

兄が奇声を発しながら蛇谷に向かって走った。


1発の銃声が鳴り響いた――――











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