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感染者の沈黙  作者: 原案・文章:岡田健八郎 キャラクターアイディア:岡田健八郎の兄 
感染
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真紅作戦

信二は目を覚ました。

ベッドの上だ。

「良かった~目を覚まして」

真希がそばに居た。

「っ何があったんだ?」

「トラックがバスに突っ込んできて、バスが倒れたんだよ!皆パニックを起こして、君は気絶してたんだニャ」

頭が痛い。強打したんだな。

信二は部屋を見渡した。真希の家だ。部屋の隅には、自衛隊の89式小銃1丁と9mm拳銃が2丁、それに携帯無線機があった。

「あれは?」

「事故が起きた時に自衛隊員2人は死んだんだよ。必要になると思って2人から剥ぎ取った」

信二は不思議に思った。

「よく1人で運べたな」

「1人じゃないよ」

真希の部屋の扉が開いた。

「信二君、目を覚ましたか」

真人だった。

「君があれを運んだのか?」

「俺だけじゃないよ」

担任の蛇谷も居た。

真希が説明した。

「聞いてみれば元自衛隊だって聞くから、きっと銃の扱いにも慣れてると思って」

なるほど、元自衛隊か。これは強力な戦力になるな。

「しかし驚いたな。自衛隊もあんなに大胆なことをして」蛇谷は渋い声でそう言った。

「感染拡大防止のためでしょうね、きっと」

蛇谷はしわを寄せた。「感染拡大?」

DEMONYOデモーニョウイルスが漏れたんでしょう」

「DEMONYO?タガログ語で悪霊って意味だな。一体どんなウイルスだ?」

「感染者を狂暴化させるウイルス。感染者は殺人衝動が抑えられなくなって、他者を襲う」

「空気感染は?」

「接触感染のみです」

蛇谷は安心した。

「だが、よく知ってるね」

真人が信二の代わりに答えた。「大羽中学校封鎖事件もデモーニョウイルスのせいだったそうです」

蛇谷はうなずいた。「やはりな、SATと自衛隊が出動したんだ。とんでもない事だとは思ったが」

真希は間違えてリモコンを踏みテレビをつけた。

『前代未聞です!見てください!東京が、巨大な壁に覆われています!』

全員、テレビに釘付けになった。

『壁の入り口には自衛隊が検問をしています!全員ガスマスクをしていて都内で良からぬ事態が起きたと暗示させます!』

チャンネルを次々と変えてみた。

『自衛隊は全員小銃を装備していて、装甲車のようなものも出動しています―――』

『東京は完全に隔離されました!一体何が―――』

『ヘリコプターの立ち入りも許可されず、もしヘリコプターで都内に入れば撃墜すると―――』

『東京から出るには、埼玉県、千葉県、神奈川県と繋ぐ検問を通るしかなく―――』

『あの壁がどうやって現れたか―――』

『目撃者によると、壁は地面から生えるように現れたと―――』

信二は蛇谷に聞いた。

「<元>自衛隊に聞きたいです。一体なんですか?あの壁は?」

蛇谷は首を振った。「分からない、俺が辞めたのはずいぶん前だから・・・そうだ!」

蛇谷は無線機を取った。

「連中の周波数を割り出して、情報を聞こう」

蛇谷は交信している周波数を探した。

真希は信二の容態を確認した。

「大丈夫そうね」

「ああ、あの程度でくたばらないよ」

真人は信二に聞いた。

「なあ、感染した奴が元に戻ることはあるか?」

信二はため息ついた。元に戻るなら、東京は封鎖されないよ……

「ないね、たぶんワクチンも出来てない。出来てたら隔離や封鎖はしないよ」

「そうだな」

「よし、連中の周波数が分かった!」

無線から音声が聞こえてきた。

『…バス…1台…来て…い…』

蛇谷は周波数を直した。

真紅計画コードレッド第1段階が実行された。第2段階実行も時間の問題だ』

『感染者の隔離は?』

『中止だ。東京そのものを隔離した。都内の隊員は全員撤退した』

『都内のマンホールは?』

『時間が掛かったが、全て溶接した』

『実弾使用は?』

『射殺許可が出てる』

真希は首を傾げた。

「コードレッド?」

『指揮権は誰に?総理か?』

『相沢信也陸将だ』

「父さん!?」信二は思わず呟いてしまった。

蛇谷が驚いた。「相沢陸将の息子だったのか?」

『でもマジで真紅計画コードレッドが発動するのか?』

『その言葉、そっくりそのまま返す』

『そろそろ私語を慎もう』

『そうだな、じゃあ周波数を元に戻そう』

『じゃあ、また後で』

雑音しか聞こえなくなった。

「くそ!私語のための周波数だったか!」

蛇谷は再び自衛隊員が使っている周波数を探した。

信二は真希に聞いた。

「戸締りは?」

「玄関の鍵は閉めたし、1階の窓のシャッターは閉めた」

信二は外を見た。

外は驚くほど静かだ。

真希の携帯電話がなった。

「もしもし?」

『もしもし真希ちゃん?』

紀子からだ。

「紀子、今どこ?」

『学校、。皆学校に逃げ込んだの。今は要塞化してるわよ。あなたは?』

「自宅」

『自宅は危険よ!今すぐ学校に着なさい。学校は安全よ。他に誰がいるの?』

「信二君と真人君と蛇谷先生」

『とにかく、学校に着なさい』

電話が切れた。

「紀子が学校に着なさいって」

蛇谷は首を振った。「行動は少人数がいい。多人数では危険が大きくなる」

「どんな危険?」

「感染者に見つかる危険だ。よし、今度こそ」

無線から音声が聞こえた。

『司令部より全部隊へ、司令部より全部隊へ。真紅計画コードレッド第2段階に入る。狙撃手を感染地に派遣する。狙撃手スナイパーは狙撃ポイントを確保せよ』

『了解、しかし狙撃対象は?』

『目が赤い人だ』

『了解』

信二は蛇谷に聞いた。

「コードレッドって何ですか?」

「分からん」

信二はため息ついた。これではコードレッドがどんな作戦か分からないな。

すると、1人の小学4年生くらいの少女が入ってきた。

「彼女は?」

「隣の少女。親と喧嘩して家に帰りたくないってうちに来たの」

「ふ~ん」

その時、外から物音が聞こえた。

信二は隣の家を見ていた。

数人の自衛隊員が隣の家の人を家から出した。

「やめて!なにするの!」

「奥さん落ち着いてください。検査をするだけです」

自衛隊員は体温計のような装置を隣の主婦の頭につけた。

「奥さん、隣の家は住んでいますか?」

「住んでるけど、両親はめったに帰宅しないし、1人娘は今学校に居ると思う」

「なぜ学校に?」

「学生たちは皆学校に逃げてるって聞いたけど」

装置から警告音が聞こえた。

「平常値より高いです!」

自衛隊員が主婦をどこかに連れて行こうとした。

「やめて!検査だけって言ったじゃない!」

少女はその状況を見ていた。

「お母さん!」

信二は少女を抑えた。

「よせ!今言ったら殺されるかもしれない!」

すると、隣の家から太った中学生くらいの少年が奇声を発しながら自衛隊員に突っ込んできた。

「感染者だ!」

自衛隊員の1人が89式小銃で頭を撃ち抜いた。

孝太こうた!」

主婦が少年の死体に駆け寄った。

自衛隊員は主婦を撃った。

少女は叫ぼうとしたが、信二が口をふさいだ。

自衛隊員がM2火炎放射器で2人の死体を燃やした。

「よし、この地区を終わらせよう。散開!」

自衛隊員が散らばった。

自衛隊員の1人が真希の家に近寄った。

鍵が壊れ玄関が開く音が聞こえた。

「丁度いい。1人捕まえれコードレッドについて聞こう」

蛇谷が真希の部屋から出た。

そして、自衛隊員を引きずって入ってきた。

「真希、鍵閉めろ」

真希は部屋の鍵を閉めた。

蛇谷は自衛隊員のマスクとヘルメットをはずさせた。

スポーツ刈りの髪型をした隊員が目を覚ました。

すかさず蛇谷は隊員の首をつかんだ。

「あなたは?」

「お前の運命を決める男だ。妙な真似をしてみろ?この喉笛を潰すからな」

信二は自衛隊員の89式小銃を持った。かなり重かったが信二は辛うじて構えられた。

少女は自衛隊員に寄っが真人が止めた。

「よくも兄さんと母さんを!」

「感染者だと思ったんです」

「兄さんは障害者で興奮すると奇声を上げる癖があるのよ!」

蛇谷は聞いた。「なぜ体温を測定する?」

「感染者は非感染者よりも体温が高いと聞いて」

「なぜ射殺した?」

「現状ではワクチンがなく、感染者は治療不可能のため、殺すしかないって上から聞いたんです」

「誰の命令だ?」

「分かりません」

「なぜだ!」

「我々の指揮官が誰なのかわかりません。我々は別の命令を受けてますから」

「別の命令?」

「コードレッド第2段階が実行される前に保菌者を探せと」

信二は言った。「保菌者ならもう捕まえただろ?」

「保菌者は2人居るんです。もう1人がどこにいるか検討もつかない。それに保菌者を乗せたヘリがまだ帰ってきてないし通信が出来ない」

信二は驚いた。蛇谷は質問を続けた。

「コードレッドって何だ?」

「暗号名:真紅計画の英語呼称。感染地となった東京を封じ込める作戦です」

「具体的な内容は?」

「分かりません。詳しい内容を聞かされません。ただ発令される命令を実行しろと。具体的な内容を知るのは政府関係者と幹部レベルの自衛官のみです」

すると、真希が蛇谷に言った。「また1人入ってきた」

「くそ!」

「なあ、頼める義理はないが、俺を見逃してくれたらあなた達の事は言いません」

真人が抑えながら言った。「先生、こいつはちくります!」

「絶対言いません」

「信じられるか、殺りましょう」

蛇谷は考え込んだ。「いや、開放しよう」

「正気ですか?こいつを解放したらちくられる!」

「このままじゃ発見される。こいつは喋らない」

自衛隊員は小声で言った。「マスクはずしたら死ぬのかな?」

「そう言われたのか?」

「付けとけとしか」

蛇谷は隊員にマスクとヘルメットを渡した。

自衛隊員はそれをつけた。

「銃を返せ」

信二は銃を隊員に渡した。

「かたじけない」

隊員は立ち上がった。「すまないと思ってます」

そして部屋から出た。

「誰だ!」

「撃つな!俺だ!」

「感染者は居たか?」

信二たちは緊張した。

「どうだ?」

「影1つありません」

「よし、本隊は撤退を開始している」

2人は去った。


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