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感染者の沈黙  作者: 原案・文章:岡田健八郎 キャラクターアイディア:岡田健八郎の兄 
感染
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隔離失敗

 ―避難用バスが出発する数分前―

真斗は目を覚ました。校内の教室だった。

立ち上がろうとしたが、体が動かなかった。ベルトらしいものでベッドの縛り付けられていた。周りを見てみると、他にもベッドに縛り付けられている人たちが、並ばれていた。自分は一番端だった。

何があったか思い出そうとした。

確か、体温検査に引っかかって、そのまま無理やり校内に連れて行かれて、ベッドに寝かされて、防毒服の人たちに人工呼吸器のようなものを口に付けられて……そこで意識が途切れたんだ。

自分の隣を見ると、聖夜が寝かされていた。まだ目を覚ましていない。

「……聖夜君……?」呼んでみても返事がない。当たり前か……

よく見ると、防毒服を着た隊員が、1人ずつ血液採取していた。教室の出入り口には、同じく防毒服を着た隊員が89式小銃を装備して、警備していた。

一体何が起きているのか思い出そうとした。

そういえば、信二君が感染が始まったと言っていたような……思い出せない。

すると、自動車が走っている音が聞こえた。

聞こえたと思ったら、今度は何かが壊れる音がした。フェンスかな?

血液採取していた隊員が警備している隊員を見た。

「何があった?」

「今は関係ありません博士。採取を続けて」

博士は採取を再開した。

今度は銃声が聞こえ始めた。

「一体何が起きてるんだ?」

「今は採取を……」

廊下に居る隊員が騒ぎ出した。

「感染者が襲撃してきた!」

「数は?」

「大勢!」

「退却!総員退却!」

警備していた隊員が博士に怒鳴った。

「感染者が出現した!我々も撤退しよう!」

博士と隊員が廊下に出た。

真斗は首を限界まであげて、窓から外を見た。ここは2階らしいわね。

外では、校庭に止めてある6機ヘリコプターCH-47J/JA愛称チヌークのプロペラが回転し、大勢の自衛隊員がチヌークへ走っていった。

博士が真斗のベッドのそばに無線機を忘れたおかげで、無線機から音声が聞こえた。

『感染者が襲撃。隔離は失敗しました。本隊は撤退を開始します』

『了解、撤退完了後、陸将自らが本作戦の指揮を取る』

『了解』

『全員乗り込みました!』

『了解、離陸する』

チヌークが次々と離陸していった。

『博士が無線機を紛失した、盗聴防止のため周波数を変える』

『了解』

無線機からは雑音しか聞こえなくなった。

真斗は、隊員が居なくなったことでベルトをはずそうともがき始めた。

「……駄目か……」

うなり声が聞こえた。聖夜が目を覚ましたようだ。

「う~ん、目覚めが悪いな」

「…聖夜君…!」

「黒崎か!良かった無事だったか!ここはどこだ?」

「……隔離されたみたい……」

「そうか・・・」

聖夜がもがいた。

「くそ!きつく縛ってるな、誰かの助けが必要だな。そういえば自衛隊は?」

「……さっき撤退した……」

「撤退?なぜ?」

「…感染者がどうのこうのって…」

廊下から、何かが引きずられる音が聞こえた。

「誰か来る!」

1人の教師らしい人物が、教室内に入ってきた。

「数学の工藤先生だ!先生!」

同じくベッドに縛り付けられていた少年が大声で呼んだ。

真斗のクラスメートの1人だ。

長身の工藤がその生徒の近づいた。

「先生?」

工藤が何かを構えた。スキだった。

「先生何を!」

工藤はスキを生徒の腹部に突き刺した。

生徒が絶叫を上げた。

「見るな!」

聖夜がそう叫んで顔を襲われている生徒から逸らした。

生徒の腹部に4つの穴が開き、そこから血が流れ出した。

「先生・・・やめてくれ・・・ごふっ」

生徒は血を吐いた。工藤は再びスキを生徒の腹部に突き刺した。

スキが刺さる鈍い音と生徒の絶叫が何回か聞こえた。

生徒はすでに死んでいた。

工藤は生徒の隣の男性に近寄った。

男性は目を覚ましていない。

工藤は男性を通り過ぎて、男性の隣の女性に近寄った。

「お願いやめて、助けて助けて助けて―――」

工藤はスキを女性の喉に刺した。声帯をやられ、女性が喋れなくなった。

工藤は女性の喉をもう1度スキで刺した。

女性が死ぬまでスキを抜くことはなかった。

工藤は聖夜に近づいた。

「先生辞めてください!マジで先生辞めたほうがいい!」

工藤はスキを構えた。そして突き刺そうとした。

「止めてーーー!」

真斗は無我夢中で叫んだ。

工藤は動きを止め、真斗を睨んだ。工藤の目が赤かった。

工藤は聖夜を殺すのをやめ、今度は真斗を殺そうと近寄った。

「先生!マジで辞めたほうがいい!俺マジで切れますよ!堪忍袋が切れますよ!」

工藤は聖夜の言葉を無視して、真斗の横に立ち、スキを構えた。

真斗は目を閉じた。どうせ命乞いをしても聞くはずがない。これが運命なら受け入れよう・・・

工藤はスキを真斗の腹部めがけて突いた!

だが、突然工藤が悲鳴を上げた。

工藤の背中に鎌が刺さっていた。

立花が刺していた。

立花は鎌を抜き、今度は後頭部を刺した。

工藤は絶叫を上げて倒れこんだ。

立花は真斗と聖夜を縛っているベルトをはずした。

「たくっ何だよこの糞数学先生が!何人も人を殺しやがって!」

立花は工藤の目を確認した。

「彼はもう普通の人間じゃない。感染者になってた」

聖夜が首を傾げた。「感染者?」

「今朝、信二君が話したでしょう?人を狂暴化させるウイルスが発生してるって」

「じゃあ、工藤が感染してたのか?」

「ええ、この真っ赤に染まった瞳が感染した証拠」

「詳しいな」

「前にも同じ状況になったから」

「前にも流行ったのか?」

「大庭中封鎖事件、あれがそうよ」

立花は工藤の後頭部から鎌を抜いた。そして、工藤が所有していたスキを聖夜に渡した。

「これでどうしろってんだ?」

「感染者が現れたら刺して」

「人殺ししろってか?」

「感染者の会ったら。選択肢は2つ。殺すか、殺されるか」

「逃げるって選択肢は?」

「感染者は疲れ知らずなの。体力に自信があっても、感染者から逃げるのは武器がないときにして」

聖夜は他の人を開放しようとした。

「この人の襲われなかった人は解放しないで」

「なぜ?」

「感染者は感染者を襲わない」

聖夜は舌打ちしながら廊下の出た。

真斗は立花にお礼を言おうと思った。

「……あの、ありがとう……」

「あまりお礼は言わないで・・・いくら感染していても、人殺しをすると、心が穢れていく」

「……大羽中学校事件で何かあったの?……」

立花は返答にためらった。「好きな人を殺した・・・」

それだけ言って廊下に出た。



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