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感染者の沈黙  作者: 原案・文章:岡田健八郎 キャラクターアイディア:岡田健八郎の兄 
平和
10/84

動き出す歯車

【追加登場組織】

本州生物科学研究機構

東京都内にある生物科学研究を専門とする機関。活動内容は非公式であり、バイオセーフティーレベル4の施設を持つ。


京子は急ぎ足で研究所内の廊下を走っていた。まったく、この研究所の内部構造は複雑すぎる。最近の空母も内部構造を複雑化していると聞いているが、何もうちの研究所まで複雑化しなくても……

すると、ある立て札が見えた。第1会議室…ここだ!

扉を開け、中に入った。

中では既に十数人の自衛官、研究員代表達が会議をしていた。

「遅いぞ、坂本君」自衛官の1人が注意した。

何なら、内部構造を簡単にしろ!と思ったが、口にはしなかった。京子は謝りながら、大澤の隣に座った。大澤は耳元で、甘い声で言った。「遅いわよ?次遅れたら、あなたの旦那さんを貰っちゃいましょうか?」

京子は鳥肌立った。「やめてください!うちの主人は浮気はしない人なんです」

「うふふ、冗談よ」この人の冗談は本気に見える・・・

若い唯一の女性自衛官がファイルを整えて喋り始めた。女性自衛官は存在感を誇っていた。「正直言って、こんな事態は初めてです」

大澤は首を傾げた。「何のことですか?」

自衛官の1人が言った。「研究所側そちらで研究している新種ウイルスの感染者が都内で現れた」

京子は心配な気持ちで大澤を見た。だが、大澤は余裕そうだ。「ニュースキャスターが語ったように、あれは新種の麻薬か何かを摂取した変質者です」

自衛官が全員笑った。「もっとましな言い訳は出来ないのかね?」

京子はこの言葉に同感だった。言い訳するならもっとうまくできないのかしら?

だが、大澤は自信満々だった。京子は驚いた。一体この自信はどこからくるのかしら?

大澤は口を開いた。「何なら、うちのセキュリティーを確認してください。蟻一匹通しませんよ」

自衛官は質問した。「なら、なぜ警察に拘留されていた変質者の身柄を引き取ったのだね?」

「新種の麻薬に興味がありまして」

1人の自衛官が遂に怒りを露わにした。「ふざけるな!!麻薬何かを研究するために、この研究所があるわけではない!」

大澤は笑いをこらえていた。京子は大澤の精神がどうなっているか気になった。大澤博士は1回精神病院に行ったほうがいい。そう思った。

女性自衛官は再び言った。「私は変質者の正体なんてどうでもいいのです。でも、そちらが研究している新種ウイルスが大流行したら、どう責任を取るのですか?」

大澤はまたしても余裕そうだった。「異種への感染は見られません。ウイルスは霊長類のみに感染します。東京に野生のチンパンジーなんて居ませんし、人が感染しても、感染者を即時隔離すればいい」

女性自衛官は負けまいと喋った。「確かにそうですが、あのウイルスはあまりにも危険です。未知の部分が多く、感染者を狂暴化させるなんて。そして何よりもワクチンや抗ウイルス剤がありません」

確かにワクチンが存在しない。ここはどう言い訳するのだろう?

大澤は微笑みを見せた。「安心してください。空気感染はしません。接触感染のみです。ウイルスは感染者の血液中や唾液中でしか存在しません。つまり、感染者とセックスしない限り、感染しません」

下ネタを言えるくらい余裕がありますね。うん。

「でも・・・」言い終える前に、誰か入ってきた。

「松永3等陸佐。何を恐れている?」相沢信也陸将だった。半そでの迷彩服を着て、まだ力を入れていないのにかなり発達した筋肉が目立った。顔も端整だ。その圧倒的存在感とカリスマ性を誇っていた。

渋い声で女性自衛官に話しかけた。「松永3等陸佐、一体何を恐れている?」

先ほどまで存在感を誇っていた女性自衛官松永3等陸佐も、相沢陸将の前では小さく見える。

松永はしばらく間を空けたが、口をあけた。「大流行パンデミック……いえ再発です」

相沢は松永を見つめた。「再発はありえない」

松永は少しむっとした。「けど再発したら?」

相沢信也はため息をついた。「あの<作戦>を発動するまでだ」

「大羽封鎖事件の二の舞ですよ?」

「大流行を防ぐためだ。政府の承諾済みだ」

京子は一瞬身震いした。あの作戦に政府が承諾したなんて……

信也は大澤を見た。「大澤博士、ワクチン開発はどこまでいった?」

大澤は甘い滑らかな声で言った。「まだ第2段階です」

「完成まではまだか…」

「はっきり言えば、そうですね」


会議は終わった。大澤は京子を連れて、バイオセーフティーレベル4の施設に向かった。

「ワクチン開発、思ったより手惑いますね」京子は皮肉っぽく言った。

大澤はいつもの惑わすような声で答えた。「黒木博士が居ればな…」

黒木博士?聞いたこと無いわね?「誰ですか?」

「黒木大輝」いつもの惑わすような声ではなかった。どうしたのだろう?

「生物学者でとても優秀な学者だった。同世代の人は皆エイズのワクチン開発もできそうな人だって言われたくらい。けど、彼は別のウイルスを研究してた。それが何かは不明だけど」

この博士は人を尊敬しない人物だ。その博士からまさかあの言葉を聞けるなんて……

黒木大輝・・・一体どういう人物なのかしら?



 


 真人は物凄いスピードで数学の宿題を進めていた。今日は数学の宿題の提出日だった!

聖夜が真人を見た。「すごいスピードだな。真人」

「話しかけないでくれ!宿題を終えてなかったんだ!」

本当にやばい!うちの数学の教師って提出日守らないと怒るんだよな。めっちゃやばい!

真斗が真顔で真人の様子を見ていた。真顔で見られると何か怖い。

真人はやっと宿題を終えた。だが真斗が真人に言った。「1番と5番と9番が間違えてるよ......」

真人は指定された問題を計算しなおした。確かに間違っていた。

「サンキュー真斗」

「...サンキュー...?」

こいつ、サンキューの意味も分からないのか?「ありがとうだよ」

「発音間違ってる......」

発音の問題か!確かにアメリカ人はテンキューって言うな。

「ありがとう」

聖夜が不機嫌そうに言った。「何かおなら臭くね?」

「真人、お前か?」真人は首を振った。

「黒崎、お前か?」「違う……」

「武田、お前か?」「大佐って言え。違う」

「トリエン、お前か?」

トリエンは笑いながら言った。「お前のおならじゃね?」

「どういう意味だ?」

トリエンはおならをする真似をした。そして手を尻につけた。「これ、おなら」

そして、腕を股に通らせて自分の顔に近づけた。

「お前は自分でおならをしたんだ。そして、お前のおならは自分の股を通って、お前の鼻まで来たんだ」

全員笑った。「トリエン面白い!」

聖夜はより不機嫌になった。「トリエン、マジ後で殺す!」

真人は忠告した。「殺したら少年院行きですよ」

「真人!お前も殺す!」

真人は「ひ~助けて」と言いながら真斗を見た。真斗が一瞬笑っていた。

今日はついてる。宿題が終わったし、真斗のレアな笑顔も見れたし。





 ―午後9時24分―

サングラスをかけた男が、どこかのお店の裏側で煙草を吸っていた。

若い女性が近づいてきた。しめしめ、お客さんだ!

「いつものお願い」そう言って、2000円を渡してきた。

いつものね。男は粉の薬みたいなものを渡した。

女は早速歩きながら、粉を吸った。

男はまた煙草を一服吸った。これだから、これはやめられね~。

ふと、フードを被った男が、男に首でこっちに来いと合図した。

男は行った。そこは、人気の無い歩道橋の下だった。

男は、フードの男に言った。「俺は野良のら。お前は?」

「岡本だ」

野良は質問した。「夏なのにフード付きトレンチコートにマフラーって暑くないか?」

「暑いね」

おかしな奴だ。野良はそう思った。

岡本は質問した。「何がある?」

「コカイン、アヘン、ヘロイン、何でもあるぜ」

「何でも?」

「ああ。ここだけの話、麻薬販売はやめられないね。1度でも麻薬に手を出すと、そいつは中毒者になってな、麻薬を欲しがる。だから売り上げもあがる。いい利益だよ」

岡本は興味なさそうに言った。「さっきの話は本当か?」

「何が?」

「何でもあるって?」

「ああ本当だ」

「何でも?」

「ああ」

「本当に?」

「ああ」

岡本は微笑した。「じゃあ貰うよ」

よし来た!野良はそう言おうとしたがやめた。「何が欲しい?」

「お前だ!!」

岡本は野良の肩を掴み、近くの違法駐車している車に投げ飛ばした。野良は車のガラスを割って車内に突っ込んだ。岡本はドアを開けて、野良を車内から引きずり出し、無理やり立たせた。

「俺はお前が欲しい。俺の偉大なる計画の為に!」

岡本の周りには、3人フードを被っていた人が居る。

「お前には、俺の駒になってもらう」

岡本は野良の首筋を噛んだ。

そして、自分の唾液を送り込んだ。

野良は、道路に倒れこんだ。全身に激痛が走る。

口から大量に血が吐き出る。頭痛がしたが、数秒で終わった。

車のサイドミラーで自分の顔を見た。

目が赤かった。

その瞬間、意識が途絶えた――



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