三が日が終わったら、江戸の長屋にいた
あぁ~。
何?終わった?
何が?
……あ、三が日ね?
誰が三日まで正月って決めたのかねぇ。
あたしゃ、年中正月だけどね。
そんな声に、目を覚ました。
……天井が、低い。
いや、低いというより、近い。
起き上がろうとして、思いきり頭をぶつけた。
「いってぇ……」
板が鳴る。
畳がきしむ。
どこかで鍋の蓋が、からんと音を立てた。
外が、やけにうるさい。
「おい、起きな!
正月気分は昨日までだよ!」
がらり、と障子が開く。
そこに立っていたのは、着物に前掛け姿のおかみさんだった。
腕を組み、いかにも言い切った顔をしている。
「……江戸?」
思わずそう呟くと、おかみさんは眉をひそめた。
「何寝ぼけたこと言ってんだい。
ここは長屋だよ。
三日も過ぎりゃ、ただの日さ」
三日。
やっぱり、三日。
「だから言っただろ」
どこかで、さっきの声がした。
「誰が三日までって決めたんだって」
振り向くと、隣の部屋の敷居に、
酒瓶を抱えた老人が座っていた。
「正月が終わったことにされると、
こういうとこに落ちてくるんだよ」
「……どこだよ、ここ」
「“終わった側”の溜まり場さ」
老人は、にやりと笑う。
「小正月も、七草も、鏡開きも、
みんな“まだだ”って言いながら、
いつの間にか片づけられる」
外では、
凧が落ち、
門松が引きずられ、
正月が音を立てて解体されていく。
「まぁ、安心しな」
老人は酒をあおった。
「ここじゃあ、
終わったかどうかなんて、誰も気にしちゃいない」
そう言って、布団を指さす。
「さ、もう一回寝な。
目が覚めたら――
次は、小正月だ」
……なんでえ~。
そう思いながら、
俺はまた、
低い天井の下で目を閉じた。
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また違うホラーコメディでお会いしましょう☆




