等価交換はあり得ない
序章
俺の名前は赤松弘樹。差出人のない白い封筒を開けた瞬間、甘いインクの匂いが立った。中に入っていたのは、妹――赤松茉莉の結婚式の招待状。新郎は半藤正英、商社勤め。式のプロデュースは従姉の大橋恭子が“全面監修”。一枚目をめくるだけで、彼女の手癖が見える。余白まで演出したがる、あの感じだ。
席次表をスマホで拡大すると、違和感が喉にひっかかった。親族席の最前に「永沢綾」の名がすっと差し込まれている。茉莉の旧友――いや、正確には中学時代にこじれた相手。新婦の親友席よりも前。恭子の判断か、半藤の意向か。どちらにせよ、主役の周囲に置く“物語”を誰かが勝手に決めている。
同封のQRコードを読み込むと、オープニングムービーのプレビューが流れた。茉莉の幼い頃の写真、家族旅行の一枚……の合間に、綾が写り込んだ文化祭のスナップが妙に長い。カット尺が、兄の俺でも数えられるくらいに。さらに画面下には「Special Thanks:K.A.O.R.U Project」と小さく入っている。見覚えのない表記。“家族ユニット”的な何かを匂わせるタグだ。誰が付けた?
電話が鳴る。母の日向子だ。「弘樹、出られる? 無理ならいいのよ」声が少し硬い。「行くよ」とだけ答えた。受話器越しの沈黙の中に、父・誠の咳払いが混ざる。二人とも、言葉を選んでいる。俺も同じだ。高校をやめたあの日から、家族は“説明しない”ことで守ろうとしてきた。守り切れたかは別として。
ムービーを見直す。テロップがまた視界に刺さる。「原案協力:K.Ohasi/A.Nagasawa」。原案? 誰の何に協力した? 茉莉の人生は本人が原案でいいはずだ。画面の最後、白地に金箔で「Brand New Family」。ブランニュー、ね。新しくするには、古いものを何か捨てる必要がある。捨てるのは、茉莉の“書く手”か、名前か、それとも過去の傷痕か。
封筒を閉じ、机の引き出しから小さなUSBを取り出す。黒いテープで「MARI_works」と書いたやつ。データ移行を手伝ったときのバックアップ。フォルダの階層も、更新日時の連なりも、俺は覚えている。努力が残す小さな爪痕の列だ。あれは、誰の手癖でもない。茉莉の手の動きそのものだ。
窓の外で、冬の風が看板を鳴らす。行くべきか、行かざるべきか――じゃない。俺は行く。英語スピーチだの余興だの、どう見せ物にされても構わない。大事なのは、正面の明かりにさらされる瞬間ではなく、暗がりで積み重なった指の運動だ。式場のライトの下で、必要なら言葉にする。誰が原案で、誰が編集者で、そして誰が作者なのか。招待状を封筒に戻し、ジャケットの内ポケットに収めた。違和感は、証拠の位置まで手を伸ばせば、ただの配置になる。さて、配置を整えに行こう。
第二章 兄と妹の距離感
俺の名前は赤松弘樹。差出人のない白い封筒を開けた瞬間、甘いインクの匂いが立った。中に入っていたのは、妹――赤松茉莉の結婚式の招待状。新郎は半藤正英、商社勤め。式のプロデュースは従姉の大橋恭子が“全面監修”。一枚目をめくるだけで、彼女の手癖が見える。余白まで演出したがる、あの感じだ。
席次表をスマホで拡大すると、違和感が喉にひっかかった。親族席の最前に「永沢綾」の名がすっと差し込まれている。茉莉の旧友――いや、正確には中学時代にこじれた相手。新婦の親友席よりも前。恭子の判断か、半藤の意向か。どちらにせよ、主役の周囲に置く“物語”を誰かが勝手に決めている。
同封のQRコードを読み込むと、オープニングムービーのプレビューが流れた。茉莉の幼い頃の写真、家族旅行の一枚……の合間に、綾が写り込んだ文化祭のスナップが妙に長い。カット尺が、兄の俺でも数えられるくらいに。さらに画面下には「Special Thanks:K.A.O.R.U Project」と小さく入っている。見覚えのない表記。“家族ユニット”的な何かを匂わせるタグだ。誰が付けた?
電話が鳴る。母の日向子だ。「弘樹、出られる? 無理ならいいのよ」声が少し硬い。「行くよ」とだけ答えた。受話器越しの沈黙の中に、父・誠の咳払いが混ざる。二人とも、言葉を選んでいる。俺も同じだ。高校をやめたあの日から、家族は“説明しない”ことで守ろうとしてきた。守り切れたかは別として。
ムービーを見直す。テロップがまた視界に刺さる。「原案協力:K.Ohasi/A.Nagasawa」。原案? 誰の何に協力した? 茉莉の人生は本人が原案でいいはずだ。画面の最後、白地に金箔で「Brand New Family」。ブランニュー、ね。新しくするには、古いものを何か捨てる必要がある。捨てるのは、茉莉の“書く手”か、名前か、それとも過去の傷痕か。
封筒を閉じ、机の引き出しから小さなUSBを取り出す。黒いテープで「MARI_works」と書いたやつ。データ移行を手伝ったときのバックアップ。フォルダの階層も、更新日時の連なりも、俺は覚えている。努力が残す小さな爪痕の列だ。あれは、誰の手癖でもない。茉莉の手の動きそのものだ。
窓の外で、冬の風が看板を鳴らす。行くべきか、行かざるべきか――じゃない。俺は行く。英語スピーチだの余興だの、どう見せ物にされても構わない。大事なのは、正面の明かりにさらされる瞬間ではなく、暗がりで積み重なった指の運動だ。式場のライトの下で、必要なら言葉にする。誰が原案で、誰が編集者で、そして誰が作者なのか。招待状を封筒に戻し、ジャケットの内ポケットに収めた。違和感は、証拠の位置まで手を伸ばせば、ただの配置になる。さて、配置を整えに行こう。
# 第三章 中学の春:優秀賞と嫉妬
あの春、茉莉は十五で「優秀賞」を取った。大賞じゃない、ただの副賞——そう言いながら、受賞メールを開いた指は少し震えていた。小さな賞金と、編集部の短い講評。「構成と情景の強さ」。俺はただ「おめでとう」と言い、古いノートPCのバックアップを増やした。タイムスタンプがまた一列、細く伸びた。
問題はその翌週だ。放課後の文化講義室、アニメサークルの雑談で、永沢綾がこう言ったらしい。
「私、サムライのサブストーリー考えててさ。名前は“鬼隠城”。影に紛れて誇りを守る感じ」
茉莉は別件で、夜桜をモチーフにした短編を書いていた。題は「鬼桜」。鬼隠と鬼桜——字面の“鬼”だけが共鳴した。綾はそこで“盗られた”と勘違いし、火がついた。柔道部の仲間に「根回し」と称して噂を回し、「あれは私のネタをパクった」と上塗りしていく。取り巻きは皆、格闘系の部活で体格がよく、廊下で囲まれるだけで威圧になる。
裏垢には“証拠”が積まれた。綾のノートの端に書かれた「鬼隠城」の落書き、音声メモの「影の武士」という断片。どれも物語の欠片に過ぎないのに、「一致」を示す証と扱われた。教室の空気は早い。人は“物語の方が真実より飲み込みやすい”とき、そっちへ流れる。
茉莉は反論しなかった。代わりにノートPCを家に持ち帰り、ファイル名を整え、版を分け、日付を刻み続けた。夜更けのキー音は小鳥の足音みたいに軽いのに、折れずに続く。俺は移行の手伝いをしながら、中身は覗かないと決めた。だが容量グラフは嘘をつかない。増えていく下書き、プロット、リライト。努力は数で可視化できる。
綾は“善意の相談”を武器にした。地元同人の大手、大橋恭子に「私のネタを盗まれた」と訴え、恭子は字書きの権威として「それはパクリだ」と太鼓判を押す。証拠はない。ただ、言葉に重りが付いた。そこからは早かった。帰りの昇降口、茉莉の足元にプリントが落ち、「謝りなよ」と低い声。“許される手順”としての謝罪が組み立てられていく。
俺が気づいたのは、叔父から「学校に話しに行く」と連絡があった頃だ。茉莉は明るく振る舞うほど、肩の力が抜けない。夕飯のあと、彼女はPCの前で呟いた。
「私、パクってない。だから、書く」
その言葉に、俺は何も足さなかった。ただ椅子の高さを直し、電源タップを交換し、バックアップ先を増やした。殴り合いの代わりに、証跡を積む。春は、そうして静かに、戦いの準備期間になった。
第四章 屋上11:30――土下座強要
四限のチャイムがほどけた直後、叔父から「職員室に行く」と入っていた連絡が「急用で行けない」に変わった。代わりに俺が向かう。十一時二十五分。昇降口を抜けると、風向きが変わったみたいに校舎がざわついている。メッセージ欄に茉莉のクラスメイト名で「屋上」「和解」とだけある。和解なんて言葉は、だいたい良くない。
非常階段を上がると、屋上扉のチェーンは外され、内側からドアストッパーで固定されていた。風が抜ける。十一時三十分、円を描く影の中心に茉莉。周りを囲むのは永沢綾と、柔道部・他格闘系の女子たち。腕を組む、腰を落とす、カメラを構える。誰かが紙を読み上げる。「本日は謝罪の席を——」。別の誰かが笑ってスマホを突き出した。「土下座でいいよ。読み上げ、録るから」
茉莉は俯いていない。目だけがこちらを見て、いまは動くなと告げてくる。けれど、スマホのレンズが頬に触れるほど近づいた瞬間、身体が先に動いた。反射で手を伸ばし、端末をはね除ける。甲高い音。一拍の静寂。「男が暴力!」と誰かが叫ぶ。過剰防衛——この言葉がのちに使われるのを、俺はまだ知らない。
「記録はそのままでいい。消すな。先生を呼ぶ」
俺は声を低くして言い、茉莉の腕を取り、彼女の背中を自分の胸に寄せる。綾が一歩踏み出す。「逃げるの?」
「避難する。ここは交渉の場じゃない。学校だ。責任者を呼べ」
柔道の受け身みたいに、言葉を地面に落とす。輪の外へ押し広げ、通路を作る。誰かが肩を当ててくる。踏ん張る。茉莉の足元が震えた気がして、握る手に力を足した。
踊り場に出る直前、俺は振り返って言った。「十一時三十二分、屋上、招集・恫喝・録画。俺は赤松弘樹。これから職員室に行く」
綾の目が揺れる。強気に貼った膜が、風で剥がれそうになる。「パクリを認めれば、すぐ終わるのに」
「終わらせるために、事実を確かめる。それだけだ」
階段を下りながら、俺は茉莉に囁く。「大丈夫だ。呼吸、四つ数えて吸って、六つで吐く」
彼女はうなずき、小さく息を整える。手は熱いのに、指先は冷たい。保健室の前で立ち止まり、担任に電話をかけ、来てもらう段取りをつける。俺は短く現状を伝え、屋上のドアストッパー、扉の開き具合、人数、スマホの台数と配置——覚えている限りの“場の情報”を口に出して固定する。言葉で留めれば、あとから検証できる。
職員室に向かう廊下の窓から、春の薄い陽光が差し込む。ここから先は大人の領分だ。だが、この瞬間に線は引かれた。土下座という儀式に、茉莉は参加しない。参加させない。その意思表示として、俺は彼女の肩に上着をかけた。袖が余って、彼女は少し笑った。笑えるうちは、まだ戦える。そう思った。
第五章 退学の真相と“表向き”
保健室で担任と合流し、俺は事実だけを短く並べた。招集の経緯、屋上の配置、録画の有無、時間。十分もしないうちに生活指導と教頭が来て、会議室に移された。丸机の真ん中に、校章入りの書類ばさみ。教頭は咳払いひとつ、言葉を選ぶ顔で切り出した。
「本来、生徒間の“話し合い”に、対外の方が介入するのは望ましくありません。今回は、保護の意図があったことは理解します。しかし——」
しかし、の後ろに本音があった。録画の存在、柔道部を含む複数名の関与、卒業直前の処分リスク。学校は炎上を避けたい。停学も退学も出したくない。だからこそ、俺の“外部者”という立場を梃子に、最小の火消しを図る。
「こちらで穏便に収める案として——」教頭は書類を回す。「赤松君(弘樹)が、進路変更を理由に“自主退学”という形を取る。学校は“行き過ぎた動画撮影の抑止”を指導で完了とし、記録は内部に留める。対外発表は『学業方針の変更』一本化。どうでしょう」
俺は沈黙した。勝ちも負けもない提案に見えて、実際は“交換条件”だ。茉莉の土下座動画を世に出させない代わりに、俺が看板を背負って去る。理不尽だが、守るべき優先順位は明確だった。
「確認ですが」と俺は言う。「当該生徒らへの指導は記録に残す。今後、同様の呼び出しや録画行為は明確に禁止——その文言、書面でください」
生活指導がうなずき、文案を書き起こす。叔父に電話で合意を取り、父の誠と母の日向子にも連絡が回った。両親は到着するなり、茉莉の前でだけは言葉を選んだ。「お前のせいじゃない。弘樹が自分の道を早めに選んだ、それだけだ」
夕刻、退学願に署名した。理由欄には「学業方針の変更」。教頭は万年筆を置き、「進学支援先の紹介もできます」と無難な言葉を添えた。俺は首を振る。「通信制に編入します。英語と情報処理の資格を取る。ここでのことは——必要なときに、必要な形で開示します」
会議室を出る直前、窓越しに西の空が茜色に濁っていた。俺は今日の時刻をメモに刻み、頭の中で線をつないだ。招集、録画、囲み、土下座要求。主導は永沢綾、取り巻きは格闘系。担任の目が届かない時間帯を狙い、出口を塞ぐ段取り——構図は見えた。だが、この日、茉莉の肩にのしかかる罪悪感だけは、俺が引き受けると決めた。
玄関で靴を履き替える茉莉に、俺は笑ってみせた。「なあ、寄り道しよう。データ移行用の外付け、もう一台買う。お前の小説、バックアップ増やしとけ」
彼女は目を潤ませ、こくりとうなずいた。表向きの物語はここで終わる。けれど、真実の側の物語はこれからだ。俺の退学は、妹の作品を守るための最初の書き出しにすぎない。
第六章 PCの時間が語るもの
家に戻ると、俺は真っ先に机の引き出しから新品の外付けHDDを取り出した。銀色のシールに日付と目的を書き込む——「201X-03-○○/茉莉・作品一式アーカイブ」。
「バックアップは三箇所。家、クラウド、持ち出し用。どれか一つ壊れても物語は死なない」
俺が言うと、茉莉は小さく笑って、ノートPCの電源を入れた。
フォルダを開けば、整然と積み上がった階層が現れる。novel/short/、long/、ideas/、trash/。中でも目を引くのは長編フォルダの世代管理だ。onyx_v001.txtから始まり、同名のv002、v003……延々と。更新日時は、受験の隙間、部活の合間、真夜中の十五分を惜しんだ痕跡でびっしりと連なっている。
「ねえ、見ないでね。内容」
「見ないよ。見るのは“時間”だけだ」
俺はコピーの前に、タイムスタンプの一覧をテキストに吐き出した。いつ書き、いつ直し、いつ諦めずに戻ってきたか。数字の行列が、茉莉の生活そのものを語り始める。移行は“更新日時を保持”にチェック。ミラーリングは片方向、削除はしない。念のため、クラウドにも暗号化して上げ、USBには耐衝撃ケースを付けた。
「名前の付け方、決めようか」
「え?」
「大きな節でvを上げる。細かい手直しはrで刻む。例——onyx_v012r03.txt。あと“今日の分”が分かるように、日付タグも付ける」
「……プロみたい」
「プロのやり方を真似るのは悪くない。やり方が先に心を守ることもある」
俺はスクリーンショットで階層と日付を保存し、メモに転記した。中学の優秀賞原稿の原型が、十五の春より以前から連続していること。その後も派生短編や没ネタに枝分かれしつつ、一本の幹に戻ってくること。内容を覗かずとも、時間の“連鎖”だけで、オリジナルの連続性は示せる。
「弘樹、これって、証拠になる?」
「“結果”より“執筆の軌跡”が強い。思いつきで盗れるものには、この密度の時間は残らない」
プリンタが唸ってログの紙束を吐き出す。茉莉はそれを抱え、胸に当てた。
「ありがとう。——でも、私、書くから。証明のためじゃなくて、書きたいから」
「分かってる。これは盾で、刃じゃない」
最後に、俺は外付けのラベルにもう一行、書き足した。Keeper_01。物語の番人は、派手な戦いをしない。ただ、黙って、積み重なった“時間”を落とさないよう抱えて歩く——それが、この夜に俺が選んだ役割だった。
第七章 大学期の大賞と連続する線
春の雨が止んだ夜、茉莉のノートPCに着信音が跳ねた。件名は「最終候補通知」。送り主は大手レーベルの編集部。
「……震える」
小さく笑った茉莉の指先が、しかし確かに次のフォルダを開く。long/onyx_v012r07/。俺が提案した規約どおりの枝番が、大学一年の春から今夜まで揃っている。vは節目、rは微修正。日付タグが点線のように続き、やがて「合評」「推敲」「最終稿」に重なる。
翌週、オンライン面談。編集者は画面越しに言った。「設定の核は揺るぎません。語り口だけ、もう半歩読みやすく」。茉莉はメモを取り、作業窓を二分割。左に本文、右にコメント。履歴には、外部相談の記録も並ぶ。Claude_log/202X-06-14.md——比喩の重なり、語尾の整理、段落の切り方。助言は“方向”であって“答え”ではない。茉莉はそれを受け、自分の語彙で書き直す。
夏、候補通過のメールが来た。俺は静かにバックアップ計画を更新する。クラウドの世代保持数を増やし、外付けはKeeper_02を追加。提出版はonyx_v015_final.txt、ただし“提出用”のコピーで、創作の原本系譜は別に守る。提出時のZIPに同封されたreadme.txtには、参照した資料と自分の着想源を簡潔に記す。曖昧な“影響”を“盗用”にねじ曲げられないための、茉莉なりの前置きだ。
秋、受賞発表。結果は“大賞”。拍手と同時に、編集部とのやり取りがさらに増える。表紙案、販促文、校正シート。メールの件名が階段のように連番で上がっていく。[ONYX-PRJ] 01_帯コピー案、02_サンプル配布OK、03_増刷判断。
その下で、創作フォルダには相変わらず数字が増える。大賞は頂点ではない。ただの通過点として、v016が静かに刻まれる。
「弘樹、私、やっと“スタート地点”に立てたのかな」
「最初からそこに立ってた。ただ、証明の灯りが点いただけだ」
連続する線は、結果の王冠ではなく、執筆の足跡でできている。茉莉は画面を閉じ、机の脇に置いたKeeper_01/02を一度撫でた。守られているのはデータだけじゃない——書き続ける意志そのものだ。
第八章 再接近――物語は一方通行から始まる
地元コミケの準備会議。折り畳み机の上で、搬入表と配置図が重なり、蛍光ペンの矢印がいくつも走っていた。大橋恭子は事務局の腕章を外すと、控えスペースで湯気の立つ紙コップを綾に手渡した。
「永沢さん、例の“パクリ疑惑”、ちゃんと時系列でメモっておきなさい。声は弱者のうちに整えるのよ」
恭子は「字書き」の顔に切り替わる。彼女は地元の同人大手、PRも台本もそつがない。綾はうなずき、スマホのノートを開いた。そこには「あの子は私の“鬼隠”を“鬼桜”に換骨奪胎した」という独白が延々と綴られている。
その夜、恭子は半藤正英に電話を入れた。
「正英くん、永沢さんはね、誤解されやすい子なの。強く見えるけど内側は傷だらけ。茉莉さんの周りに“大人の整理”が必要だわ」
受話器の向こうで、正英は静かに相槌を打つ。商社の広報/IRで数字を磨く彼にとって、「説明可能な物語」を用意することは日常だ。綾の語りは粗いが、弱者/加害の単純図式は、世間に早く馴染む。
「……なるほど。では、事が大きくなる前に“橋”をかける。僕が間に入ろう」
それからの数週間、“善意”の連絡が茉莉へ届いた。正英は柔らかな文面で「わだかまりを解きたい」と持ちかけ、恭子はイベント運営の名目で「場を整える」と申し出る。ふたりの言い回しは巧みに似ていた。責任の主語を曖昧にし、事実認定を棚上げにしたまま、“家族で収める”方向だけを押し広げる。
裏側では、恭子のクラスタで物語が編まれていく。打合せメモには、見出しが並ぶ——〈誤解された天才・永沢綾〉〈寛恕の作家・赤松茉莉〉〈未来志向の婚約者・半藤正英〉。
「ブランドは、まず“善意”から始めるの」
恭子は合評の席でそう言い、綾の肩をそっと叩いた。綾は守られたような錯覚に安堵し、何度も同じ主張を反芻した。彼女が見たい“正しさ”だけが増幅され、他の音は消える。
一方、正英の頭の中で、数字が並ぶ。炎上リスクの最小化、スポンサーの目、姓で束ねた“家族ユニット”の利便性。善意に見える配慮は、同時に最短経路の合理でもあった。
「誤解は丸く。成果は一つに」
彼のメモにはそう書き添えられる。まだこの時点で、彼は自分が“擁護”ではなく“誘導”をしていることに気づかない。気づかないまま、茉莉の創作と人生を“整理可能な資産”として見積もり始めていた。
再接近は、謝罪からではなく、段取りから始まった。片側だけの物語を、社会に通る形式へ。善意の衣を着せ替えながら、計画は静かに歩き出す。
第九章 見えない腹案――“善意”の衣の下で
再接近の裏側で、別の書類が静かに増殖していた。タイトルは柔らかい。「家族協力メモ」「円滑運用のための覚え」「ユニット活動方針」。どれも“善意”の衣をまとい、角を落とした言い換えで満ちている。
〈創作に関わる決裁は“家族名義のユニット”で合議〉
〈収益・印税は一旦ユニット口座に集約し、家計設計上の優先度へ配分〉
〈既存原稿は表現クオリティ向上の観点で“共同リライト”可能〉
文面は求心力をもつが、主語が曖昧だ。誰の作品か、どこまで“共同”なのか、肝心な線だけが霞んでいる。
大橋恭子のPCには、表向きの進行表とは別に、非公開のカンバンがあった。
〔TO DO〕“家族ユニット”命名/ロゴ案/SNS開設
〔NEXT〕 過去作の棚卸し→タグ付け「再編集候補」
〔NOTE〕 「茉莉→執筆に専念」言い換えテンプレ(家事・妊活の“両立支援”を前面に)
列の端には、薄い灰色で「法務チェック」とだけ書かれたカードがぶら下がる。開けば、共有ドライブへのリンク。そこにはプリナップ草案の控えがあり、末尾に付箋が三つ。
「“権利帰属”はユニット運用の規約で別定」「差分原稿は“監修者”表記で調整」「家族全体のブランド毀損行為の禁止」
永沢綾はチャットに断片的な台詞を投げる。
「私の方が“語り”は上手いから、茉莉ちゃんの設定は活かして磨く感じで」
恭子は即座に整える。
「“磨く”→“品質担保”。語彙はやさしく、主旨は強く」
やり取りは、茉莉の創作を誰かが縫い替える前提で、穏やかに前へ進む。
半藤正英は、別のタブでスプレッドシートを眺めている。列見出しは「プロジェクト名/担当/進捗/露出計画」。担当には“綾・恭子(監修)・茉莉(原案)”とある。原案——その単語は便利だ。成果だけを取り出して“ユニット”に並べる時、作者の輪郭を薄くする。
彼は独り言のようにメモする。
「誤解は丸く、成果は一つに。アカウント統合で管理コスト↓」
そのころ、弘樹は式場の裏動線で司会台本を写真に収めていた。差し替え指示の余白に、小さく“姉妹和解のサプライズ”とある。姉妹? 茉莉には姉はいない。いや、ここでの“姉妹”は比喩だ——永沢綾との“和解演出”。
胸の奥で、何かが冷たく沈む。和解という名の合意。その場で“共同”が固定されれば、茉莉の執筆は一挙に“家族ユニットの資産”へ飲み込まれる。善意の衣のまま。
計画の本音は、どの文にも一度も書かれない。書かれない代わりに、言い換えが増える。原案、監修、品質担保、家族運用、合意形成。言葉が柔らかくなるほど、境界は硬くなる。
見えない腹案は、まだ誰にも直言されない。だが、準備は完了している。ロゴ、台本、覚書、そして拍手の段取りまで。次に必要なのは、たった一つ——“うなずき”だけだ。
第十章 家族の“守り”と妹の揺らぎ
茉莉は、いつもより湯飲みを強く握っていた。台所の蛍光灯が白く滲み、湯気が眼鏡の縁を曇らせる。母・日向子は何も聞かない。ただ味噌汁をもう一杯よそい、机の端に置く。父・誠は新聞を広げたまま、肝心な紙面を裏返し、視線を外した。家の中に、言葉にならない“守り”が積もっていく。
その夜、茉莉はぽつりと言った。
「正英さんはね、“綾さんは誤解されやすいだけだ”って。恭子さんも、公に謝らせるんじゃなくて、うまく収める形を考えてるって……」
弘樹は頷く。否定も断罪もしない。
「一次情報、か」
かつて高校の屋上で見た光景、保健室の時計、顧問の曖昧さ――すべてを思い返しながら、彼は箸を置いた。
半藤正英の語りは滑らかだった、と茉莉は続ける。いじめは“子どもの行き違い”で、拡散された動画は“編集の偏り”。綾は“表現が不器用な善意の人”で、和解の場さえ整えば、過去は“事故”として閉じられる。披露宴の演出も、その“第一歩”。
言い換えの階段が、彼女の迷いを少しずつ上へ押し上げる。過去を直視する毎に胸が痛むなら、柔らかい言葉へ身を委ねたい――その誘惑を、弘樹は責められなかった。
夜更け、弘樹は自室で外付けHDDを机に並べた。中学の頃のフォルダ、タイムスタンプが縦にのびる作業履歴、大学期のドラフト、編集部とのメール。結果ではなく、執筆の“過程”が残した微細な足跡。
(結論で人は争う。けど“途中”でなら、嘘はつきにくい)
彼は独りごち、スキャンの進捗バーを見守る。家族が守るのは、沈黙のままの肯定だ。では自分が守るべきは何か――“証拠の順序”だと、もう決めていた。
居間に戻ると、父が短く言った。
「茉莉、お前のせいじゃない」
それだけで、十分だった。茉莉は眼鏡を外し、泣き笑いの顔で頷く。彼女は揺れている。正英の一次情報は、痛みから逃れるための渡し船に見える。だが、渡った先に何が待つかまでは教えない。
弘樹はポケットのICレコーダーを指で撫でた。まだ再生はしない。ただ、必要な時に必要な“順番”で開くと決める。感情で殴り合えば、茉莉がまた傷つく。
家族の守りが沈黙なら、兄の守りは手続きを整えること――そう胸の内で言葉にして、彼はPCの電源を落とした。翌朝、式場で写真に収めるべき“差し替え”のメモが、必ずどこかにあるはずだと確信して。
第十一章 プリナップの影と言い換え
夜九時過ぎ、茉莉のスマホに着信が入った。差出人は大橋恭子。件名は「式前・事務連絡(ご確認のみ)」、添付にWordファイルが一つ。
開くと、婚前契約――いわゆるプリナップの草案だった。穏当な文言が並ぶが、第三章だけが異様に長い。「家計の健全運営」「創作活動の継続支援」と題され、具体に踏み込むほど靄がかかる。
――著作物は婚姻共同体の“家族ブランド”として一元管理する。
――ペンネームおよび派生名義は、混乱回避のため統一する。
――収益口座は“運用効率”を鑑みて代表者(夫)名義で集約する。
――作品制作に関わる連絡・調整は、家族ユニット窓口(恭子)を経由する。
言い換えの層を一枚ずつ剥ぐほど、本心がのぞいた。「管理」「統一」「集約」「窓口」。どれも優しげな衣を着た奪取の語彙だ。
茉莉は言葉を失い、端末を差し出した。弘樹は受け取り、まず「プロパティ」を開く。作成者:kyoko_ohashi。最終保存者:masahide_hando。変更履歴は“単語の置換”が多い。〈管理→支援〉〈共有→一元〉〈独占→混乱回避〉。痕跡は残っていた。
「原本、保存する」
弘樹はUSBを差し込み、ファイルを複製。さらにPDF化、スクリーンショットを要所ごとに撮り、タイムスタンプ付きで保全する。コメント欄には、恭子の吹き出しが生々しく並んだ。〈ここ、柔らかく。家族ユニットで〉〈“代表口座”は断固。隼人くんの税理士が管理〉。隼人の返信もある。〈ブランドは一つ。外向けは美しく〉。
その瞬間、茉莉の画面にSNS通知が弾けた。匿名の文化アカウントが、「鬼桜」へ当てこすりのスレを立てている。〈“元ネタの人”を守るためにも、加害側が大人の対応を〉――投稿時刻は、恭子のメール送信とほぼ同分。根回しは、もう始まっている。
「茉莉」
弘樹は、妹の肩越しに静かに言った。
「これは“支援”じゃない。創作を、執筆の手順から奪う契約だ」
茉莉は震える息を吐き、頷いた。優しい語尾で塗られた条項ほど、刃がよく切れる。だからこそ、言葉の外側――修正履歴、保存者、時刻、通知の連動――を並べる必要がある。
「明日、式場でこれを出す?」
「出す順番と、出し方を考える。まずは“誰が、いつ、どう差し替えたか”。それからだ」
家族の守りが沈黙なら、兄の守りは手続きを光に晒すこと。弘樹は電源を落とし、USBを掌に包んだ。執筆は、茉莉の机で続く。奪えないものを、証明するために。
第十二章 二次会台本と「ブランドは一つ」
式前日の夜、恭子からもう一通、共有フォルダのリンクが届いた。ファイル名は「二次会_台本_ver7.docx」。開くと、司会の進行からゲームの景品名、BGMの頭出しまで緻密に書かれている。だが弘樹の目を止めたのは、途中に差し込まれた「特別企画」のブロックだった。
――〈“新ユニット発表”セレモニー〉
――新郎半藤挨拶:「家族はチーム。ブランドは一つに」
――新婦コメント(※事前に了承済の短文を読了)。
――登壇:大橋恭子(窓口)、永沢綾
――ケーキ入刀ならぬ“ロゴ入刀”演出(横断幕掲出:K.M.Family Writers)
茉莉は凍りつき、次いで小さく息をのむ。「了承済って、誰が?」
台本の余白に、正英の校正コメントが残っている。〈“ブランドは一つ”を二度繰り返し〉〈外向け名称はK.M.で統一、個別PNは括弧書き〉。恭子の返しは〈混乱回避を前面に〉〈税務は代表口座で一括〉。どの語も、昨夜のプリナップと同じリズムで茉莉の執筆を囲い込む。
「合理化の言い換えだな」
弘樹は台本の変更履歴を追い、差し替え時刻を控える。BGM指定「春の夜桜」は恭子。掛け声「新ユニットへエールを」は正英。二人の手つきが、段取りの骨に入り込んでいる。
「二次会で“既成事実”を作るつもりだ。発表、歓声、写真、ハッシュタグ。あとで何を言っても、『皆さんの前で約束しましたよね』に化ける」
茉莉は唇を噛み、そっと端末を伏せた。「私、賛成なんて言ってない」
「だから、残す」
弘樹は台本の該当ページをPDF化し、コメント一覧と修正履歴をエクスポート。さらにスクリーンショットを撮り、保存先を三重に分ける。証拠は、感情ではなく手順で積む――それが兄のやり方だった。
その夜遅く、正英から家族グループにメッセージが入る。〈当日は“家族としての歩み”を示せたら嬉しい。ブランドは一つ。茉莉の負担は僕が軽くする〉
一見、優しい。「軽くする」は「奪う」の婉曲であり、「一つ」は「支配」の輪郭だ。日向子は既読だけをつけ、誠は短く〈当日、話は別室で〉と返した。父の短文には、職場で培った危険察知の硬さがある。
ベッドに横たわりながら、茉莉が囁く。「兄ちゃん、もしあれを大広間でやられたら?」
「やらせない。仮に始まっても、止める。そのための順番を決める」
弘樹は、式→中座→二次会の動線を紙に描き、司会・音響・会場責任者の名前をメモへ移す。止めるべきは言葉ではなく“段取り”だ。マイクに電源が入る前、横断幕が降りる前、ロゴ入刀のナイフが渡る前。
「合図は、俺が出す」
窓の外に、夜更けの風がさっと走った。明日、光の下で掲げられるはずだった“統一のロゴ”は、まだ布の裏側にいる。兄妹は黙って目を閉じ、心の中でナイフの柄から先に外す練習を繰り返した。
第十三章 静かな爆発の種(十秒)
日付が変わる少し前、茉莉のスマホが震えた。発信者は正英。画面には〈明日の段取りを軽く確認〉とだけある。茉莉は深呼吸し、ボイスメモを起動してから受話ボタンを押した。スピーカーはオフ、AirPodsは外す。余計なノイズを入れないのは、弘樹から教わった“記録の作法”だ。
「明日ね、二次会で“家族としての宣言”をする。……それと、結婚したらさ、夢は一回やめよう。うん、出産に専念してほしい。落ち着いたら“みんなで”書けばいい」
十秒ほどの、短くて決定的な文言。茉莉は相づちを打たず、沈黙で針を進めた。相手は沈黙を合意と誤解する。録音には、彼の独り言めいた圧の質感がそのまま残った。通話が切れると同時にファイル名を「2025-12-XX_2259_mari_hando.m4a」に変更し、iCloudと外付けに二重保存。作成日時、機種名、OSバージョン――メタデータは触らない。触れないことが保存だと、兄に叩き込まれている。
リビングの灯りは落ち、弘樹の部屋だけが細く明るい。ノックの音に彼が振り向く。茉莉は端末を無言で差し出した。波形の山が十秒ぶん、くっきり立っている。再生。言葉の刃が静かに机に置かれた。
「十分だ」
弘樹はUSBメモリを二本取り出し、一方を読み取り専用に設定してから書き込む。もう一方には検証用コピーを置き、ハッシュ値を計算して紙に記す。封筒の表には「A-3:強要発言(逐語・十秒)」とだけ走り書きした。
「これだけで全部は動かないよね」茉莉が言う。
「これ“だけ”では、な。けど“他の証拠と噛み合う十秒”だ。台本の『ブランドは一つ』、プリナップの曖昧条項、綾と恭子の発表段取り――どれも同じ方向を指してる。方向が一致してることそのものが、意思だ」
弘樹は録音の逐語をタイムコード付きで書き起こし、発言の主語・述語・要求形を赤でマークする。「“やめよう”“専念してほしい”――柔らかい命令だ。柔らかい分、外面がよく見える。だからこそ録音が要る」
廊下を渡る冬の空気が冷たい。茉莉は自分の掌を見下ろし、握ったり開いたりした。「明日、私が怖くなっても、兄ちゃんは止めてくれる?」
「止める。止める前に、段取りを崩す。司会に“別室で”と言わせ、支配人に“事実確認のみ”を宣言させる。マイクより先に、ルートを切る」
机に並んだのは三つの封筒。A-1「PCタイムスタンプ連鎖」、A-2「いじめ構図の証跡」、そしてA-3「強要発言(十秒)」。短い十秒は、長い数年と結びつくためにそこへ置かれた。
「爆発は派手じゃなくていい」弘樹が微笑む。「点火すれば、あとは重ねてきた紙が燃える」
時計の針が零時を過ぎる。二人は灯りを落とし、それぞれの部屋へ戻った。闇の中で、茉莉の胸の奥に小さな火が残る。十秒の火だ。消えないうちに、明日を迎える。
第十四章 式当日:兆しと配置
ホテルの自動ドアが開くと、花の匂いとPAの微かなハム音が胸に触れた。受付脇のモニターにはOPムービーのテスト再生。画面に出るのは新郎新婦のはずが、妙に長い尺で映るのは永沢綾の近影、同人即売会の戦利品紹介、柔道の表彰写真――茉莉の素材は、やわらかな笑顔が数秒、すぐにフェードアウトする。
弘樹は立ち止まり、スマホで連番の写真を切った。画面端にバーコードのリハ札、タイムコード、ファイル名。証拠は華やかな場所ほど落ちている。
席次表を受け取る。前列中央には「永沢綾」、その隣に「大橋恭子」。新婦側親族席の最前列に、なぜか“来賓扱い”の肩書きまで添えてある。茉莉の旧友は後列に散らされ、両親の誠と日向子の名も一段落ちる。
司会台本は台車の上で付箋だらけに膨らみ、端には「家族ブランドは一つ」「サプライズ英語スピーチ:兄」と蛍光ペン。弘樹は係の目を遮らず、斜めから一枚だけ撮る。焦らない。撮れた断片同士が後で噛み合えばいい。
控えめに笑顔を貼った大橋恭子が現れ、スタッフに指示を飛ばす。「綾ちゃんトークは三分延長で。“創作の原点はみんなで”ってフレーズ、二度入れて」
“みんなで”。柔らかい支配の合言葉。茉莉の肩が小さく強張る。弘樹は視線で「大丈夫」と告げるだけにした。ここで感情を上げると、向こうの段取りに乗る。
控室。茉莉のブーケが置かれたテーブルに、薄い封筒が二通。差出人は「式場プランナー」と「新郎側親族会」。前者は進行修正の同意書、後者は“挨拶文言の統一”という名の口止めテンプレートだ。文末に〈不当に名誉を損なう発言、創作活動を示唆する行為はご遠慮ください〉。
弘樹は目だけで読み、写真は撮らない。これは後で支配人に正式コピーを求める類だ。先にやるのは、ルートの確保。
支配人を呼ぶ。「本番中に進行停止の判断をお願いする場合があります。理由の提示は別室でします」
支配人は一瞬目を瞬かせ、式次第に小さく鉛筆で印をつけた。「中断は司会から私に。別室は桜の間を空けます」
再びホールへ。OPムービーの色調が決まり、スタッフが拍手する。画面に“家族ユニットK.A.O.R.U.”のロゴが一瞬だけ走る。昨日はなかったもの。恭子の癖が露骨に出た。
弘樹は深く息を吸い、茉莉に囁く。「順風でも向かい風でも、帆の角度はこっちで決める。合図は俺から」
茉莉は小さく頷いた。スポットの熱、絨毯の弾み、笑い声の粒。それらすべてが、これから訪れる静かな中断の予告編に見えた。
第十五章 中断の鐘――大広間から別室へ
開宴のファンファーレが鳴り、司会の声が天井のシャンデリアに跳ねた。正英が白いグローブ越しにマイクを受け取り、笑顔を貼り付ける。その横で恭子が台本を指で叩いた。合図だ。
「ここで、新婦のご兄弟・赤松弘樹さまより、英語でスピーチを――」
予定通り。俺は席を立つ。正英が小声で囁く。「兄貴、英文はゆっくりで。みんな、わからないから」
礼を装った侮辱。それでいい。合図になる。
ステージ中央、マイクに息が触れた瞬間、俺は最初の一文だけ英語で述べた。
“Before I speak, I have one request for fairness and safety.”
ざわつき。続けて日本語に戻す。「進行の前に、式場支配人の確認をお願いします。新婦と両家の合意に関わる“文言の統一書面”が、直前に差し入れられました。内容上、個別の場での確認が必要です」
司会が硬直し、支配人が最前列でわずかに頷く。恭子が慌てて立ち上がる。「段取りにない、中傷は――」
「中傷はしません。事実確認です。ここは祝いの場ですから」
俺は深く頭を下げ、茉莉にも会釈した。彼女の唇が「ありがとう」と形を作る。
支配人が即座にマイクを受け取り、声を落とす。「一旦、進行を調整いたします。皆さま、着席のままお待ちください。新郎新婦とご両家代表、ならびに関係者の皆さまは“桜の間”へ」
ハープの伴奏が音量を上げ、照明が一段柔らぐ。中断の鐘は、拍手に似せて鳴らすのが礼儀だ。
移動の列で、正英が横に並んだ。「大げさだよ、弘樹さん。式が壊れる」
「壊れるものは、最初から荷重オーバーだ」
恭子が割って入る。「ブランドは一つで行くって、事前に話したはず」
「“行く”前に、誰のものか決めないと」
俺は支配人に目配せし、先を急いだ。
背後で布擦れとヒール音が強まる。綾が列に割り込もうとしてスタッフに止められていた。「私も関係者です!」
支配人が首を振る。「失礼ですが、こちらはご両家の確認席です。のちほど」
綾の視線が茉莉を射貫き、恭子が“あとで必ず”と目で合図する。二人の連携は固い。だが、場所は分けた。ここからは言葉に証拠を貼る番だ。
桜の間の扉が閉まる直前、俺はステージに残したマイクを一瞥した。祝福のための道具だ。ならばこそ、脅し文句ではなく、整った手順で進める。
深呼吸。封筒は三つ。入っているのは、誰かの肩書きより重い、時間の層そのものだ。ここから先は、祝宴を守るための最短距離で、丁寧に斬る。
第十六章 三点パッケージ――証明は「執筆」で
桜の間。扉が閉まる音が、議場の鐘みたいに短く響いた。支配人が最初に口火を切る。「本件は祝宴保全のための事実確認と合意形成に限ります。録音は式場で行い、外部拡散は禁じます」
親族代表として、父・誠と母・日向子、半藤家の両親、正英、恭子、そして茉莉と俺。椅子の脚が絨毯を撫でる音だけが静かに重なる。
俺は鞄から三つの封筒を出し、テーブルに横一列で置いた。
「順に開けます。結論より過程、噂より手触り。――“結果ではなく、執筆で”証明できます」
一つ目。クリアファイルから、フォルダ一覧のプリントを差し出す。
「茉莉の原稿ツリー。中学三年の“短編_鬼桜.txt”から、大学期の長編プロット、受賞作の稿段階、最新版のv025まで。PC本体と外付けHDD、買い替え時の移行ログで時系列が繋がります。AIアシスタント『Claude』への相談履歴と編集部メールのヘッダ情報も一致。――“盗れる”構造ではなく、“積む”構造です」
支配人が黙って写しを受け取り、控えに回す。
二つ目。俺は屋上見取り図と部活動名簿の写しを重ねた。
「卒業直前の“謝罪”集合。柔道部を中心にした招集の痕跡、録画役の端末ID、裏垢の投稿時刻。十一時三十分、体育館側階段の出入り記録と一致します。叔父が職員室に行く予定だった時間と重なったため、俺が代理で校内にいた。介入は過剰ではなく、危険の除去。ここに当日の保健室記録」
誠が小さく頷く。日向子はハンカチを握りしめた。
三つ目。小型レコーダーから、十秒だけ流す。
『結婚したら夢はやめて、出産に専念してよ』
声は正英のものだ。彼は姿勢を崩さず、ただ目だけを細めた。
「――文脈がある」と正英。
「文脈ごと保存してます。必要なら全編を」俺は淡々と返す。
恭子が台本を叩く。「誤解です。“家族ユニット”でブランドを一つにする話を――」
「その“ユニット”が、茉莉の名義と収益と判断権を奪う仕組みになっている。プリナップ草案の修正履歴に、“創作活動は家計管理下”という文言が差し込まれていた。編集者でもない人間が、いつ、なぜ入れた?」
恭子の視線が泳ぐ。「善意よ。守るため」
「守るために、まず奪わないことだ」
正英が両掌を見せ、調停者を演じる。「世間は複雑を嫌う。シンプルに収めよう、ね?」
「シンプルに。“執筆した人が持つ”。それが原則」俺は言い切った。
支配人が議事を整理する。「確認事項は四点。①著作の帰属は新婦個人、②婚姻に伴う創作の強制停止を求めない、③虚偽の発信を禁じる、④本日の費用は新郎側負担――以上で合意できるか」
俺は最後の封筒を押しやり、赤い線の引かれた一文を示す。「これが抜けるなら、この場では決められない」
沈黙の中で、茉莉が顔を上げた。
「私は書きます。結婚しても書くし、しなくても書きます」
“執筆”という単語が、部屋の温度を一度下げ、そして上げた。正英の微笑は動かない。だが、頬の筋肉だけが遅れて強張る。恭子は視線をテーブルに落とした。
証明は終わった。あとは、署名という“行為”が、どちらの物語に線を引くかだ。
第十七章 言い換えと火消し――「家族ブランド」の罠
沈黙の幕を、半藤正英が最初に押し下げた。椅子の背にもたれ、笑みだけを残したまま声色を変える。
「誤解が積み重なっている。ここは“対立”ではなく“調整”でいきませんか。創作は続けていい。ただ、運用を“家族ブランド”に一本化するだけだ。収益や法務の窓口を家に……いや、ユニットに寄せる。安全のためです」
言い換え――所有を“運用”に、拘束を“安全”に。
大橋恭子がすかさず台本を繰る。「炎上は作品を焼きます。発信は一本化、メッセージは私が監修する。芳名は“家族の顔”として守る。だから、プリナップの文言は誤解よ、“家計管理下”は税務の整理に過ぎないわ」
俺は封筒の複写を恭子の前へ滑らせる。該当箇所には赤線。
「その行は三日前、あなたのアカウントから挿入されてる。編集履歴のタイムスタンプ、式場打合せの直後。さらに“ブランド一本化”の草案、半藤側のフォルダに“KAORU_asset”って名前で保存されてた。資産は資産で、著作は著作。混ぜるのは管理じゃなく、吸収だ」
正英が指を鳴らす仕草で空気を整える。「世間は複雑を嫌う。――だからこそ、シンプルに。“揉めてない”ことにしよう。控えめな一文で出す。『体調不良のため本日の挙式は延期』。費用はこちらが全負担、どう?」
茉莉が小さく首を振る。「延期じゃなくて、判断が要る」
恭子が表情を柔らげて近づく。「茉莉ちゃん、和解ってね、勇気なの。綾ちゃんも勘違いに気づくはず。今は“家のため”に落ち着こう?」
「和解は、私の作品を書き換えない人とするよ」茉莉の声は震えず、低い。
俺は続ける。「証拠は“途中”――いや、執筆の連なりで立ってる。Claudeの相談ログ、編集部往復メール、PCと外付けHDDの時刻、三地点が一致。恭子さんの差し込みや、ユニット化の台本とも噛み合って“誰が何をしたか”が見える。火消しより、線引きだ」
正英は微笑を崩さず、視線だけを鋭くする。「線の話をするなら、こちらにも線がある。招待客、スポンサー、取引先。情報は統制しないと皆が傷つく。――ねえ支配人?」
支配人は首を横に振った。「本室の方針は変えません。事実確認と合意形成のみ。虚偽の公表はお控えください」
恭子が最後の矢を射る。「ならば覚書に“家族ユニットの広報監修”を一行――」
「要らない」茉莉がはっきり遮った。「書くのは私。話すのも私。家族は、私を“代表”にしないで」
正英の頬が一瞬だけ引きつる。言い換えは、もはや効かない。
火消しの水は、紙に染み、赤線だけをより鮮明にした。
第十八章 合意破談――覚書の線
支配人が静かに机を入れ替え、白紙のフォームと黒い万年筆を置いた。「本件は“延期”ではなく“合意による中止”として処理可能です。双方で確認された項目を覚書に落とし込みます」
半藤正英は口角だけで笑い、頷いた。「いいだろう。条件を聞こう」
俺は三点に絞って読み上げる。
「一、費用は新郎側全額負担――会場費、演出、印刷物、ゲスト返礼まで。
二、対外広報は式場定型の一文に限定し、虚偽・名誉毀損の発信を双方禁ずる。
三、茉莉の創作・著作・データ・アカウントへの一切の関与を断ち、預けている素材・原稿・媒体は“原状回復”で即時返却、私的コピーの削除を誓約」
大橋恭子が眉を上げる。「その“原状回復”に、私の加筆分のクレジット放棄まで含むと?」
「加筆は無断だ。放棄じゃない、無効だよ」俺は淡々と言う。「編集履歴も添付する」
正英がペンを転がしながら口を挟む。「第ニ項の“虚偽”の線引きは?」
「事実に基づく一次資料で裏付けられない断言はしない、でいい。こちらは証拠を持っている。そちらは“沈黙”を守れば済む話だ」
父の誠が咳払いした。油の染みた指先で眼鏡を押し上げ、短く頭を下げる。「娘を、商品にしないでくれ。それだけだ」
母の日向子は隣で手を重ね、「茉莉は、茉莉の名前で生きます」と結ぶ。茉莉は頷き、まっすぐ正英を見る。「私の執筆は、誰の条件にもならない」
支配人が条文を清書し、サイン欄を示す。正英はわずかに息を呑み、先にペンを取った。躊躇は数秒、インクの線が紙を走る。恭子も続く。
俺と茉莉、父母が順に署名し、最後に支配人が受領印を捺す。乾いた音が、終わりの印だった。
「大広間にはどう伝えますか」支配人が尋ねる。
「『双方協議の結果、本日の挙式は取りやめ。お詫びと御礼を以て散会』でお願いします」俺は答える。「撮影自粛と返礼の導線も」
戸口の向こうで、恭子が小声で電話に火消しの指示を出し、正英は結び目の緩んだネクタイを握り直した。こちらは封筒を整え、USBを内ポケットに戻す。
終わった――ではなく、切り分けた。茉莉の作品も、名も、ここから先はもう誰の“家族ブランド”にも入らない。俺たちは控室を出る。廊下の空調はひんやりと均一で、紙のインクが乾く匂いだけが、確かな自由の証拠だった。
第十九章 大広間の収拾と、それぞれの帰路
控室の扉が開くと、ホテルマンが歩調を合わせて先導した。大広間のざわめきはまだ浅く波立っている。司会者が台本を胸に抱え直し、支配人と目配せすると、マイクに口を寄せた。
「本日はご臨席まことにありがとうございます。先ほど、両家協議の結果、本日の挙式は“中止”とさせていただく運びとなりました。今後の予定につきましては、式場係員の案内にお従いください。恐れ入りますが、写真・動画の撮影、SNS等での発信はお控えください」
空調の音が一瞬だけ大きく聞こえた。誰かが小さく息を呑み、別の誰かがナフキンをたたむ。拍手は起きない。けれど怒号も起きない。スタッフが段取りよく動き、祝電台の前にパーティションが立つ。受付卓ではご香典と引き出物の精算振替が淡々と進み、ゲストは誘導票の色で順に待機室へ流れていった。
俺――赤松弘樹は、茉莉、父の誠、母の日向子と並んで一礼した。言葉は足さない。沈黙は逃げではなく、合意した「境界線」の履行だ。最前列の親族席で、伯母が目だけで「あとで電話ね」と合図を送る。うなずき返すと、ホテルマンが小声で説明を添えた。「返礼品はそのままお持ち帰りいただきます。ご移動はこちらへ」
半藤正英は遠巻きの親族に囲まれ、うつむきがちにネクタイをいじっていた。大橋恭子はスマートフォンを耳に当て、舞台袖でPRの火消しを続けている。永沢綾の姿は見えない。さっき、控室前の角で一度だけ視線が交わり、彼女は唇を噛んで俯いた。追わない。追わせない。それが今日の結論だった。
廊下に出ると、支配人が封筒を差し出した。「覚書の控えと、費用清算の受領証です」
「ありがとうございます」母が受け取り、父が短く頭を下げる。油で荒れた指先が、紙の角をそっと撫でた。
「……腹、減ったな」父の照れた一言に、茉莉がふっと笑う。「お昼、まだだもん。近くで何か食べて帰ろう」
「そうだな。温かいものを」と母。俺は頷き、内ポケットのUSBの重みを確かめる。それは剣ではない。ただ、茉莉の明日を守る鍵だ。
エレベーターを待つ間、社交辞令のような慰めがいくつか通り過ぎ、俺たちは丁寧に受けて流した。ドラマは舞台の上で終わらせ、客席にこぼさない――式場が最後まで守ってくれた作法に、静かに礼を言いたくなる。
自動扉が開き、冬の光が差し込む。風は冷たいが、肺の奥まで澄む感じがした。タクシー乗り場に向かいながら、茉莉が小声で言う。「弘樹。ありがとう」
「礼は原稿でくれ」
「うん。書くよ」
茉莉はマフラーをきゅっと結び直し、まっすぐ前を見た。その横顔に、もう“誰かのブランド”は映っていない。家族は肩を並べ、同じ向きに歩き出す。
さあ、帰ろう。温かい昼飯と、各自の机のある場所へ。そこから先は、それぞれの手で続きを書く。
第二十章 執筆は続いていく(エピローグ)
昼下がり、家に戻ると台所には湯気が立っていた。父・誠が鍋のふたを開け、母・日向子が茶碗を温める。式場の白い照明の下では言えなかった言葉たちが、味噌汁の香りにほどけていく。黙って食べ、食器を重ね、深呼吸。そこでようやく、家の空気が家の温度に戻った。
食後、俺――赤松弘樹は書斎の机にUSBを並べた。黒い樹脂の小片が三本。一本は茉莉の原稿フォルダのミラー、一本は資料、一本は通信履歴と受信メール。ノートPCを開き、NASと外付けに同じ階層を作る。差分バックアップを流し、ログを保存。画面の右下で、緑のチェックが一つ、また一つ点る。
扉のところで足音が止まった。「入っていい?」茉莉が顔をのぞかせる。
「どうぞ。座れ」
彼女は椅子に腰を下ろし、膝の上で指を結んだ。少し赤い目で笑う。
「……怖かった。けど、言えてよかった」
「ああ。言葉は道具だ。正しく研いで、正しく使えば、誰も傷つけずに鎖だけ切れる」
俺はモニタを示す。「ファイル名の規約、もう一度統一しよう。oni_sakura_long_vの後ろは三桁。作業日は頭に2025-12-26_。改変はブランチで分ける」
「了解、編集履歴は脚注じゃなく別紙にする」
「そう。それからクラウドの共有権限。閲覧のみ。書き換え権限は君の端末だけ」
「うん」茉莉は頷き、マウスを握った。キーが鳴る。v025がv026になる。日付が刻まれ、時刻が走る。それは“証明”ではない。ただ、ここから先を生きるための足跡だ。
スマホが震えた。画面には式場支配人からの簡潔な文面――覚書のPDF、費用負担の明細、情報発信自粛の確認。続いて、弁護士から“何かあれば連絡を”の定型句。俺は「受領」とだけ返し、通知を切った。
窓の外では、雲の切れ間から夕日が差す。光がフローリングを斜めに渡り、茉莉のキーボードに金色の帯を落とす。
「弘樹」
「ん?」
「ありがとう。……私、書くね」
「書け。食べて、寝て、また書け。締め切りは敵じゃない。味方にするんだ」
彼女は小さく笑い、画面に戻る。句読点が進み、段落が生まれ、削除線が走る。迷って、戻して、また進む。執筆はいつも、その繰り返しだ。
玄関の方から父の咳払い、母の笑い声。生活は平音で続く。ドラマは舞台で終わり、家には日常が戻る。それでいい。いや、それがいい。
俺は最後のUSBにラベルを貼った。《BACKUP_IS_LOVE》。冗談だ。けれど、半分は本気だ。守るとは、派手に戦うことじゃない。手順を決め、積み重ね、何度でも復旧できるようにしておくことだ。
茉莉がエンターキーを叩く。保存音は鳴らない。ただ、タイムスタンプが一行、静かに伸びた。
「行こうか、晩飯の買い出し」
「うん。帰ったら、もう一段落書く」
「いいね」
ドアを開けると、冬の空気が頬を刺した。薄く白い息が、すぐに空へ溶ける。俺たちは肩を並べて歩き出す。明日のページは白紙だ。だからこそ、好きな言葉から始めればいい。
執筆は続いていく。ここから先は、俺たちの速度で。




