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第5話



何度も鳴っては止むスマホを、仕方なく取り出した。

もう遅い時間だ。きっと親からの電話だろう。


今から帰る

そう言おうと、鳴り出したスマホを表示も見ずに通話ボタンを押した。





「もしもし、今から帰るから」




返ってきた声は、思いもよらない相手だった。


「直哉か?

今どこにいる?

お前の親が探し回って、俺にまで電話が来たんだ」


蒼だった。



「……ちょっとセンチメンタル・ジャーニーだよ。

昭和の曲、知ってるか? 

知らないだろうな」


気まずさを隠すために、軽口で返した。




「直哉、ごめん。

こんなことになるとは思わなかった…。

そんなつもりじゃなかったんだ…」


蒼の声は震えていた。


この素直さが、俺には足りない。




「何に対して謝ってるんだ?

俺が部活の連中に殴られたことか?

あの時、お前は謹慎中で部室にいなかっただろ。

謝ることじゃない。


……もし日向の画像のことならさ、

それは俺じゃなくて、日向に言えよ」


俺は、自分の中の衝動を必死で押さえつけていた。

ここで怒りをぶつけたら、

部室でストレス解消に殴ってきた奴らと同じになる。

それは嫌だった。




「直哉……

日向には、何て言えばいいのか分からない。

転校するって言うし……

でも俺らはここで、まだやっ……」




「馬鹿かよ!」


我慢できずに怒鳴った。




「俺らは、日向が生きてくれてることに感謝するべきなんだよ。

生きてるから、まだ許されてるんだ。

だから次を考えられるんだろ!


あいつに全部押し付けて、

転校すりゃそれで帳消しになると思ってんのかよ!」




言い終えた後、後悔が押し寄せた。

スマホ越しに、蒼の泣き声が聞こえた。

ただ感情をぶつけただけだ。子供の癇癪みたいなものだ。




「……すまん、蒼。


もう遅いし、家に帰るから切るわ。

日向に……謝ろうぜ」




俺もまだ日向に、何も言えていない。

結局、同じようなもんだ。


ため息をつきながら、暗い山道を下っていく。

親には、ふもとに着いてから電話しよう。

そう思いながら歩き出した。


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