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【2025年再投稿版】蒼炎のカチュア  作者: 黒桐涼風
第一章 蒼髪の少女
8/60

1ー4 狩りをする。そして、ピンチになる。さらに出会いがある

【ユグルの森】


 エドナは、ライム村の近隣にある森、ユグルの森へ入っていった。


「ん〜、いい天気なんだよ。絶好の狩り日和なんだよ。一人で狩りをするようになってからは、何度かは道に迷っていたんだよ。だけど、十四歳になってからは、道に迷わずに、村へ帰ることができるようになったんだよ」


 このユグルの森は、他の地方よりも比較して危険種や魔物が少ない。しかし、少ないって言うだけで、実際は熊型や狼型の危険種がいる。


 危険種とは、人が危険認定した危ない生物のこと。


 この世界には、危険種とは呼ばれる存在よりも、危険な存在である魔物と呼ばれる生物も存在する。


 魔物と危険種の違いは、魔物は魔術が使える点だ。それに加え、魔物には『魔』の力のよって手にした、高い生命力と強靭きょうじんな体を誇る。そのため、倒すのが難しい。


 だが、肝心のエドナ自身は。


「はうう。魔物が出たらどうしようかな? まだ、魔物は見たことはないんだよ。魔物ってどういうのかな? 危険種よりも、危なそうな動物でいいのかな?」


 エドナは以前、村長に「魔物には気を付けるよう」と何時間も掛けて忠告ちゅうこくをしてくれたらしい。しかし、村長の話が長すぎて、エドナは魔物に関する特徴をほとんど聞いていなかった。


 エドナが獲物を探していると。


「あっ! デブボア発見なんだよ!」


 エドナの目の先にいたのは、太った猪型の危険種デブボアだ。


 デブボアは名前通り、太った猪で体は3メートル程の大きさだ。人を見かければ物凄い速さで突進とっしんしてくる危険な生物だ。だが、肉は一頭だけでも一週間分の食料として確保できるうえ、味は美味びみ。そのため、人間だけでなく他の生物も含め、狩りの対象にされてしまう。


「これは、大物なんだよ! デブボアのお肉は凄い美味しいんだよ。でも、狩るのは大変なんだよ。あの、まん丸な体は、矢が通りにくいんだよ」


 デブボアの有り余った脂肪は、刃が通りにくい。ただし、通りにくいだけで、痛いものは痛い。


 当然、矢を命中さしたところで、体の脂肪で受け止められてしまう。それどころか、矢で体を刺してしまったら、ブチ切れて返り討ちにされてしまう可能性がある。


 ちなみに、デブボアは対処たいしょは、初心者向けの危険種ではない。


「……大丈夫かな? ……うん、大丈夫なんだよ! あたしだって、デブボアを狩ったことはあるんだから」


 エドナは腰に付けていた筒の中から矢を取り出した。


「よーし。始めるんだよ。確か、額に当てるのがよかったんだよ? まずは、そこに狙いを定めて……」


 デブボアに気づかれないよう、弓の弦を引き、いつでも、矢を、放てる体制を取った。


 右足を一歩、後ろへ下がった。


 バッキ!


 エドナの足元から音がした。


「はう? 何の音かな? ……あ!」


 足元を見て見ると、エドナの足の下には枝を踏んでいた。「バッキ!」という音は、エドナが枝を踏み潰ぶして折った音だった。


「気づかれちゃったかな?」


 折れた音はかなり響いていたようだが、デブボアを見て見ると、デブボアはエドナがいる方へ向いていなかった。


「はうう。気づかれなかったようなんだよ。セーフなんだよ。よかったんだよ」


 エドナは、改めて弓を構えて狙いを定めだ。


 しかし。


「ハッ……ハッ……」


 四ノ月とは言え、まだ寒いのか、クシャミが出そうだ。


「ハッ! チューーーン!!!」


 思わずクシャミをしてしまったエドナ。右手で口を押えて、クシャミの音を押さえた。


「はうう。多分、クシャミの音を押さえたつもりだから、このくらいなら、きっとデブボアには気づかれないんだよ」


 デブボアは、クシャミをしたエドナがいる方へ向いていなかった。


 音を押さえたとはいえ、気づいた様子が全くない。デブボアは鈍感なのか、 本当に聞こえていないご様子。


「はうう。さっきから、音を出し過ぎているんだよ。もう、音出さないんだよ。改めて矢を……」


 そう、エドナはクシャミをする際、手で口を押えていた。()()()()()()()()()()()()()


「あれ? あたし、矢を持っていなかったけ?」


 エドナが、さっきまで右手で持っていた矢がなくなっていた。


 エドナは、ふっとデブボアの方へ視線を向けると。


「はわわわわわ!!! やっちゃったんだよ!!!」


 矢がデブボア目掛けて飛んで行っていた。


 その矢は、エドナがクシャミをする際に手を押さえたために手元にあった矢を離してしまった。矢を弦で引いていたため、手を離したことによって矢が飛んで行ってしまった。


 これで、額に当たればよかったんだが。


 スゥゥゥーーーーーー!!!


 飛んで行った矢は、デブボアの目の前に飛んでっただけで当たりはしなかった。


「ブィィィィィィ!!!」

 

 鈍感なデブボアでも、ようやくエドナに気づいたようで、エドナのいる方へ振り向いた。


「はうう~~。ちょっと、まずいのかな?」


 自身を狙っていたことを悟られたためか、デブボアは怒っているようだ。


「ブィィィィィィ!!!」


 デブボアは、エドナ目掛けて物凄い勢いで突進して来た。


 あの巨体で突進されたら、一溜りもない。


「はうう!!! 来たんだよ!!!」


 エドナは、慌ててデブボアの突進から避けた。避けた勢いで転んでしまった。


 転んで隙が出てしまったが、デブボアは猪同様、走り出したら真っ直ぐにしか進めなかった。そのため、避けられたとはいえ、止まるまで方向を変えることができなかった。


 エドナは、その隙に体制たいせいを整え、デブボアの視界に入らない樹木の上まで登っていった。


 登る際に、エドナの実った果実が上下に揺れていた。


「ふぅ。危なかったんだよ……。なんとか登れたけど、昔よりかはテンポよく登るのが難くなっちゃたんだよ。なんでだろう?」


 エドナは、身軽の方であっという間に樹木の高いところまで登っていった。あんな重い物をぶら下げているにも関わらず。


「よし! ここから、狙うんだよ」


 エドナは、樹木の上から筒から矢を取り出し、弦を引いて狩りの対象であるデブボアを樹木の上から狙いを定めた。


 しかし。


「あれ? デブボアは? いつの間にか、いなくなったんだよ。どこに行っちゃったのかな?」


 どうやら、デブボアを見失ってしまったようだ。エドナはデブボアを探すが見つからない。


 実はデブボアは、エドナが立っている、樹木から生えている枝の真下にいる。少し、下を見れば見つかるはずだった。しかし、デブボアのいる位置は、丁度エドナの大きいな胸で視界を塞いでしまっていたのだ。


「う~ん~。当たり見渡しても、見つからないんだよ。……あれ? 胸で、下の方が見えないんだよ。もしかして、この下にいるのかな?」


 エドナはようやく自身の大きな胸で視界がさいぎられていることに気が付く。


 エドナは軽く下の方へ姿勢を低くして見下ろして見た。


「はわわわわわ!!!」


 エドナは、バランスを崩し、落ちそうになった。落ちないように体制を整えようとする。これは、姿勢を低くなる際に、エドナに付いている二つの実りの重さでバランスを崩してしまったようだ。


 体をバタバタと動かしていたら、やはり大きな胸が激しく揺れてしまった。


 メシメシメシ!


 何かが、折れそうな音がエドナの足元から聞こえてきた。


 バキィーーーーーン!!!


「はわわわわわわわわわわ!!」


 エドナが足場にしていた枝が折れてしまった。そして、エドナは、そのまま落ちていってしまった。


 ドーーーーーン!!!


「いたたたた……お尻が痛いんだよ……。でも、思っていたよりも怪我はしていないんだよ」


 かなりの高さで落ちたのに関わらず怪我はしていなかった。


 怪我をしなかったのは、お尻には布団の代わりがあったからだ。しかし、布団は布団でも。


「ところで、こんなところに何で布団が……はう!? はわわわわわわわわ!?」


 そう、その布団は毛皮。つまり、エドナを追いかけていたデブボアの脳天目掛のうてんめがけてエドナが落ちてきたため、デブボアは下敷したじきになったようだ。


「あれ? 起き上がらないんだよ。寝ているのかな?」


 どうやらデブボアは、脳天に直撃したため、ショックで気絶きぜつしているみたいだ。


「結果オーライかなぁ? あ! そうだ! お肉、お肉~~」

 

 エドナは持ち入れていたナイフを取り出した。解体してお肉を持ち帰るようだ。大人な男性でも、この大きな猪を運んで村に戻るのは難しいな話だ。


「そうだ! 解体するには見渡しのいいところで、やらないとなんだよ。草陰くさかげから、危険種が隠れている可能性があって隙を見て襲ってくるかもしれないって、村長さんに何万回も話を聞かされたんだよ。……どこがいいかな? そう言えば、確か、この辺に川があったはずなんだよ。……ああ! あったんだよ!」


 エドナの目に入ったのは河原だった。


「取り敢えず、あそこに運ぶんだよ。でも、どうしよう。引きずって運ぶ訳には……あれ? あれは……」


 河原の傍に、人が倒れていた。


「うんうん。あれは、人っぽいんだよ。あれ? もしかして、倒れている!」 


 エドナは、すぐに、倒れている人の元へ駆けつけていった。


「大丈夫ですか!?」


 返事はなかった。


「体全体がれているんだよ! 流されてきたのかなぁ!? しっかりしてください!」


 倒れていたのは、蒼い長髪をした女性だった。しかし、蒼い長髪をした女性の着ているシャツはぶかぶかだ。袖は女性の腕を隠すほど長くすそが、スカートの役割になっている。明らかに、女性が着ていたシャツは、大柄な人が着るようなシャツだった。


「息はあるけど、体が濡れていて冷たいんだよ。どうしよう……取り敢えず、この人の体を温めるため、火を起こさないとなんだよ」


 エドナが火を起こす準備をしようとした。しかし。


 ズシン!


 エドナの背後から音がした気がした。エドナが後ろを振り向くと。


「はわわ! 忘れていたんだよ!」


 気絶していた、デブボアが立っていた。


 デブボアは気絶していただけで、まだ生きていた。さっきまで気絶したデブボアが起き上がってしまった。


「はううう!!! こ、これって! もしかして、大ピンチって言うのかな!? ど、ど、ど、どうしよう!? この人を連れて行かないと!」


 エドナは蒼い長髪の女性を運ぼうとしたが。


「はわわわ!」


 ドーーーーーン!!!


 運ぼうとしたが、蒼い髪の女性抱えたまま、転んでしまった。


 エドナだけなら逃げられたかもしれないが、小柄なエドナの力では自分よりも背の高い蒼い髪の女性を運んでは逃げられない。


「ブヒィィィィィィ!!!」


 デブボアがエドナ目掛けて、突っ込んできた。


「こうなったら、弓で対抗するんだよ!」


 エドナは立ち上がった。


「至近距離だけど、弓でも行けるんだよ! 早速、弓を……」


 エドナは左腰に掛けてあった、筒の中に手を突っ込んだ。しかし。


「あれ? ……ない! ない!! なーーーいんだよ!!! 矢が全部なくなっているんだよ!!!」


 筒の中に入っていたはずの矢がなくなっていた。エドナは、まだ一本しか使っていなく出かける前は十数本は入っていた。


 エドナは気づいていなかったようだが、さっき程エドナが樹木から落ちた際に、筒の中に入っていた矢が全て飛び出してしまった。


「どうしよう? ナイフでは太刀打ちできないんだよ!」


 思わず目をつぶってしまったエドナ。

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