3ー8 亜種
【コルネリア帝国とセシル王国との国境】
セシル国境兵が口を滑らせたことによって、セシル王国内では魔物の襲撃にあったことを知ったカチュア達。
「大変だわ〜。今すぐにセシルの人達を助けましょ~」
『決断が早過ぎだろ!』
「そうなんだよ! セシルの人達を助けに行かないとなんだよ!」
(はぁ~。言うと思った。このお人好し共が。ルナを見てよ。カチュア達がお人好しの余り、ため息を付いているよ)
「あの~~これは我々の国の問題で……」
「だいじょぶよ~。わたしは、そーいうの気にしないから~。それに困っていたらお互い様よ~」
「そうですよ! 大変なことになっているんだから、助けないとなんだよ」
「おお! なんて、慈悲深きお方達! まるで女神様!」
「女神じゃなくって、カチュアよ~」
「同じく、エドナなんだよ!」
「……しかし、やはり、あなた方を行かせる訳には行きません」
「え~~。どーして~?」
「とても、ありがたいのですが、国王から君達を魔物騒動に関わらせるなと命令されたのです。ですから……」
「ふ~ん。国境を跨ぐだけなのに、随分とルナ達を大事に扱うんですね」
ルナは猫の様な目で睨みつけながら、先端に火が付いた、杖を国境兵に向けた
「と、飛んでもない! アルヴス殿に頼まれて……しまったぁぁぁぁぁ!」
(また、口を滑らしたみたいだな。会話の意図は読めないが)
「やはり、兄様の差し金でしたか。……それで、どっちが目的ですか? ルナですか? それとも、あの二人ですか?」
「それは……」
「……まあいいです」
杖の先端に付いていた火が消え、ルナは杖を下ろした。
「言っときますが、この二人はただの旅人ではありません。こちらのルナよりも小さい方はエドナさんで……」
「ルナちゃん! 小さいは余計なんだよ!」
「治癒術を扱える方です。魔物の襲撃で、怪我を負った者を治癒は必要ではないですか?」
「あの希少な治癒術を!? 確かに心強いです」
「後は……」
「まだ、隠し玉があるんですか?」
「小柄ですが、お胸はデカいです」
(そこは関係ないだろ。エドナのおっぱいが大きいのは事実だけど)
「確かに、大きいですな。うちの姫様も大きい方ではありますが、それ以上です。世界は広いですな」
(おい! 鼻を伸ばしながら、頷くな!)
「それと、こちらはカチュアさん。マントを付けていますが」
ルナは、カチュアの体を羽織っていたマントを豪快に取った。カチュアがマントを取ったことで、顔と髪だけでなく、隠させていた豊満な胸も見えてしまった。
「おお! おおおおおお! ミノタロス・ボイン! まるで、ミノタロスを美人化した姿!」
(連続で実ったおっぱいを見たせいか、国境兵達が限界突破しやがっている)
「あら? 良かったの? マントを取って~?」
「ルナはセシルに行ったことがありますが、コルネリア程、欲深い者は、セシルにはいませんでした。それに、どの道、魔物と戦うには、マントが邪魔だと思いますから」
「分かったわ~」
「よく見たら、その方の髪と瞳の色が蒼色ではないですか! それも、この世のものとは思えない程、綺麗な色合いです。まるで、伝説の女将軍のようだ」
「その伝説の女将軍の見た目通り、戦闘力は高いのです。ルナはこの目で見ましたから、保証します。そんな頼れる方々が助太刀します。だから、ルナ達を通してくれませんですか?」
「はうう。頼れるって、照れるんだよ」
(こうでも言わないと、納得しないですよ)
「ふむ。確かに、それが本当なら頼もしい助っ人だ。しかし、セシルは森林の中。道を知っている者ではないと迷ってしまう……」
『地図を見ながらでも、迷う二人がここにいるけど』
「それなら~国境兵さんに案内して貰っていいかしら~」
「うう……民を守るためには、少しでも戦力が欲しいです……分かりました。とはいえ、我々は他国からの侵略を防ぐのが任務で、持ち場を離れられません。他の国境兵と話し合うので少々お待ちください」
(しかし、どうして、兄様はカチュアさんとエドナさんをセシル王の元へ保護させようとしたのでしょうか? ルナは確か、カチュアさんとエドナさんのあのことを言っていなかったはずです)
【セシル王国内の森林の道中】
「この先にはアレル村があります。まずは、そこへ向かいましょう」
「分かりました」
国境で出会った、口の軽いセシル国境兵が空を飛びながら、カチュア達を案内していた。
周りは樹木で埋めつかされている森林。涼しい風が吹いたり、小鳥の鳴き声が聴こえるなど、自然豊かな土地だ。
「はうう……迷子になりそうなんだよ」
「頼みますから、迷子にならないでくださいね」
『……ところでカチュア』
「どーしたの~? ナギちゃん」
『ずっと気になっていたが、セシルの人達の背中には、翼みたいのが付いていなかった?』
「……」
カチュアは、黙り込んでしまった。
「そー言えば~……。付いていたよーな~……」
『もう、いいよ』
「カチュアさん、どうしたんですか?」
エドナが尋ねた。
「ナギちゃんと話していたの~」
「なんの話をしていたんですか?」
「あの人達に、翼が付いていなかったかって」
「はう? ……そう言えば。あれ、本物なんですか? てっきり、翼を飾りにした鎧だと思ったんだよ」
『祭りとかの、衣装かよ』
「カチュアさんとエドナさんは、鳥人族って見たことないんですか?」
「ないわ~」「ないんだよ」
「……そうですか。話はわかりましたので、歩きながら説明します。鳥人族含める、亜種に関して」
(亜種? また、聞き慣れないような、聞き慣れた単語が出て来た。……どっちなんだよ?)
「亜種は大昔に、人間から異なる姿へ変えた者達です。獣のような耳と尻尾持つ者。魚の様な鱗を持つ者。人間と比べて体が大きい者。その反対に人間と比べて小さい者。その種類は様々です。このセシル王国は、翼を持ち、鳥のように空を自在に飛ぶことか出来る、鳥人族と呼ばれる達の国なんですよ」
「そうだんだね」
「エドナさんは国の名前は知っていたのに、どういった人達が住んでいるのか、分からなかったんですね」
「はうう。確かに、村長さんから聞いた覚えはあったんだけど、頭に入ってこなかったんだよ。村長さん、話が長いから、いつも、途中で寝ちゃうんだよ、あたし」
(亜種か。様々な姿に変わったって言ったけ、他にもいるってことか)
「なあ、カチュア。ルナに他にも亜種がいるか聞いて欲しい。私はあまり表に出すと疲れるんだ。でも、話は聞こえるから安心してくれ」
「分かった~。ねぇ、ルナちゃん~。他にも亜種って、いるの~? って、ナギちゃんが知りたがっていたわ~」
「あれ? 表に出ないんですね?」
「最近、疲れ気味になっているらしいの~。でも、わたし達の会話を聞いているから、だいじょぶよだって~」
「あ~そうですか。え~と~ですね。ルナ達は一般的には、人間って言われていています。鳥人族の翼のように人間とは違った外見を持っているのが特徴です。他には……獣人族、竜人族、小人族、巨人族、妖精族、魔人族、人魚族、鬼人族、まだまだ色々いますよ。中には、一般的には知られていないのもいます」
「結構いるんだね。他の亜人にも、会ってみたいかも。そういった人達には、まだ、見たことがなかったんだよ」
「え? そんなはずはないですよ。だって、エドナさんは……あ! でも、それはエドナさんの目線での、話かですか。それなら仕方がないですね……」
(あれ? ぼっそと、何か言っていたような……気のせいか?)
「何か言ったんですか?」
「ううん。何でもないです。ただの独り言です。気にしないでください!」
「はう?」
「……ん!?」
「カチュアさん!? どうしたんですか!?」
「……国境兵さ~ん。ちょっと、いいかしら~」
カチュアは、真上で空を飛んでいた、セシル国境兵に尋ねた。
「この先に、村って、あるかしら~?」
「え? はっ、はい! 確かに、村があります。その村こそ、アレル村です。でも、それが、どうなされましたか?」
「そっか~じゃあ、急いで向かった方がいいかもよ~」
「のんびり屋さんの、カチュアさんが『急ぐ』なんて使うぐらいだから、本当にアレル村で何かあったんですね」
ルナが尋ねると、カチュアは、ゆっくりと、頷いたん。
「やっぱり何か起きているんだね」
「ルナちゃんは、わたしと一緒に」
「え!? ちょっと!? ルナは後から……」
カチュアはルナを自身の背中の上に乗せた。
「遠慮しないで~」
「それでは、あたしは先に行くんだよ」
「気を付けてね~。わたしも、後から追いかけるね~」
エドナはカチュアより先に走り出した。
「それじゃ~、わたしも行くよ~」
カチュアも、続けて走り出した。
「いやぁぁぁぁぁーーーーー!!! もう、嫌ぁぁぁぁぁぁーー-ーー!!!」
ルナの苦痛な叫び声が森林全体に響き渡った。
「あ! 見えなくなってしまいました。あんなに速く走れるものなんですね」




