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【2025年再投稿版】蒼炎のカチュア  作者: 黒桐涼風
第一章 蒼髪の少女
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1ー2 小さな村の爆に……少女

 ユグドラ歴二千二十一年。四ノ月。




【コルネリア帝国。ライム村】


「今日も、狩りをしにユグルの森へ出かけるんだよ! 早速、準備するんだよ!」


 この子はライム村に住む女の子、エドナ。


 ライム村の住人の中では最年少。だが、ライム村にはエドナに近い年齢の子はいなく、エドナの次に年齢が低い者でもエドナよりか十歳以上は離れていた。


 身長は幼い子供に間違えやすい程低く、たれ目が特徴の童顔だが、これでも彼女は十五歳だ。


 髪の色は自然が似合、薄目うすめの緑色で、その後ろには先程束ねた三つ編みをしている。さらに、頭の上にはスカーフを耳に被せるように巻かれている。


「次は、身だしなみのチェックするんだよ。村長さんから、女の子はどんな時でも身だしなみは大事って言われているんだよ。だから、狩りに行く前に、ちゃんとチェックしないとなんだよ」


 この時期のライム村の付近は気候がまだ低い。しかし、エドナの服装は動きやすくはあるが短めのスカートと薄めのシャツと今時期の気候には合っていない服装だった。


 しかも。


「う~ん……問題はシャツのボタンなんだよ。せっかく、一週間前に村長さんの奥さんのドアさんに貰ったばかりなのに、ボタンが取れちゃったんだよ。はうう〜」


 エドナの着ているシャツの第二ボタンが外れている。隙間すきまからは、エドナの年齢と背丈には似合わない程、豊満ほうまんなたわわが見えていた。


 さらに、シャツの第三、第四ボタンも取れかかっていた。

 

「えーっと……。弓よーし。矢よーし。解体用かいたいようのナイフよーし。腕輪型うでわがた魔道具まどうぐ装着そうちゃくよーし、なんだよ」


 狩りの準備をするエドナは、弓を持ち出し、宝石のような石二つが埋め込まれている腕輪を右腕に装着した。


「これで、狩りの準備はできたんだよ! 気を改めて、いざ! 出発なんだよ!」


 狩りに出かける準備ができたエドナは、外へ出るために家のドアを開けようとした。


 その時だった。


「はわわわわわわわわわわわわわわわ!!!」


 ドアの手前で、エドナは足をつまずきバランスを崩した。しかも、エドナの足元には何もなかった。


 そして、エドナは前方へ倒れていった。


 ドォォォーーーーーン!!!


 エドナは転んだ拍子ひょうしで、目の前のドアを突き破りながら家の外へ出てしまった。さらに、顔から先に落下して、地面に思いきり顔をぶつかってしまった。


「はうう〜〜! 顔が痛いんだよ! もう~!」

「おおぉ!? エドナかぁ! 大丈夫か!?」


 エドナが上の方を見上げて見ると、そこには老人の姿があった。老人って言っても背はかなり高めで老化が進んでいるように見えないぐらい姿勢しせいがいい。


 この村には、エドナを除いて、男女問わず巨人と思ってしまう程、背丈が高く体格もいい者が多く暮らしている。ただでさら、背の低いエドナが、さらに小さく見えてしまう。


「あ! 村長さんだ! はうう~外へ出ようとしたら転んでドアを壊しちゃったんだよ」 


 この老人こそ、ライム村の村長だ。


「お主も相変わらずだの~。どんな、転び方をすれば、こんな綺麗きれいな形に穴が開くんだか……。お主は芸術作品でも作っているのか? ある意味才能じゃがな」


 村長は指で、エドナの家のドアにある方角へ刺した。


 その方角を見て見ると、ドアにはエドナの開けた穴が猫の顔の形をしていた。

 

「後で、大工のハックに頼んで直してもらうか?」

「はうう~〜。ハックさんには申し訳ないんだよ。毎回、毎回、家が壊れるたびに直してもらっているんだよ」

「お主は、今週だけで家の一部分を八回くらい壊してしまったよじゃの。酷い時は、家一軒を壊しまったことがあったな。ハックが、翌朝までには元の状態まで直してくれているな。全く、仕事が早すぎる」

「うう……本当に申し訳ないんだよ」


(まあ、ハックはハックで、滅多に大工仕事をする機会がないから、エドナが家を壊すたびに、喜んで、家を直しているがな)


「まあ、まあ、めげるでない。それよりも、エドナは今から狩りに行くのか?」

「あっ! はい、何だよ! 今日も、大物を狩るんだよ!」

「ほ、ほ、ほ。期待しておるぞ。……と言いたいところじゃが、出かける前に、ちゃんと持ち物の確認はしたか? 此間こないだみたいなことがあったからの」

「はうう~〜。もう、村長さん! それは言わないでなんだよ! あれは、偶々(たまたま)何だよ! 偶々忘れたんだよ! 本当なんだよ! それに、出かける前に、ちゃんと確認したんだよ!」


 村長が言う「此間みたい」というのは、エドナは弓を使って狩りを行うけど、その狩りに向かう際に、肝心かんじんの矢を持ってくるのを忘れてしまったことだ。その前には、弦を直していない弓を持ってきたこともあった。


(全く、いくつになってもドジは治っていないようじゃの。というより、日に日に、酷くなっていっているようなのは気のせいか?)


「そうは言っても、心配じゃよ。お主、やっと一人で、その長い緑色の髪を三つ編みにし結べるようになったようじゃの。しかし、初めて一人で挑戦した時は、間違って髪の毛を二十本も抜いてしまったことがあったの」

「 はうう~~。正直、あれは痛かったんだよ……」

「おまけに、抜けたところから出血して、それを見た、わしはショックで、しばらく寝込んでしまったぞ」

「はわわ! それは心配かけてごめんなんだよ!」

「それと、エドナや。こんなことを言うと、セクハラと思われるかもしれないが服のボタンはちゃんと閉めんかい! そなたの豊満なボディが丸見えじゃよ。ただでさえ、村の中でも圧倒的に実っているんじゃから」


(わしが、ばーさんに内緒で買った大人の本に写っている女性よりか実っておるではないか? その女性は、帝都一、ほこるって記載きさいされているのに)


「はわわ! こ、これは、今日着ようとしたら、ボタンが飛んじゃったんだよ!」

「そのシャツは、一週間前に、ばーさんが、あげたばかりじゃろ? もう入らないのか?」

「その時は着れたんですけど、もう、きつくなっちゃったんだよ」

「凄まじい成長速度じゃの。……ボタン? そうか。今朝の盗賊騒ぎは、それか?」

「そうなんだよ! 飛んだボタンの先にあった。窓ガラスが割れちゃたんだよ」


 それは、今朝のことだ。エドナの家の、窓ガラスが割れた音で、偶々通り掛かったエドナの家のお隣さんがエドナの家に訪ねて来てた。お隣さんは、盗賊が窓ガラスを割って入ってきたと思ったらしい。その後、ハックに窓ガラスを新たに張り替えてもらったということだ。


「まったく! これでは、旅にでたら魔物や盗賊ではだけでなく、下心丸出しの男共が寄ってきてしまうではないか」

「はうう。また、始まってしまったんだよ。村長さんの過保護過かほごすぎるための、説教が、また始まったんだよ」


 この村の村長は、どうやら心配性で、エドナが一人で狩りを始めた頃から、いつも外の危険性を一日で長くても十時間以上も語り出すらしい。


「その辺にしときなよ、じいさんや」


 そこに現れたのは、村長の奥さんである、ドアという人だ。


「あっ! ドアさんだ! こんにちは、なんだよ!」

「おっと! すまん、すまん、つい」

「じいさんや。心配するのはわかりますが、余り過保護過ぎるとエドナが独り立ちだきなくなってしまいます。私らが、一生エドナの面倒を見ることなんて、できないから」

「それは……その通りじゃの」


 ドアが、話に入ってくれたことで、エドナは村長の長い説教を聞かないで済んだようだ。エドナにとってドアは救世主きゅうせいしゅだった。


「エドナや。これを持っていきなさい」


 ドアの手には、焼いてくれるコッペパンを使った、具材たっぷりのサンドイッチだった。


「ありがとうなんだよ! ドアさん。ドアさんの作ってくれるパンは、とても、おいしいんだよ! 勿論、パンに挟んでいる具材もなんだよ」

「そうじゃ、エドナよ。今夜は、わしの家で夕食を食べんか? 今夜の食事は確か……」

「シチューですよ、じいさんや」

「いいのですか? ありがとうなんだよ! これは大物を取らないとなんだよ! ……あ! そろそろいかないと、なんだよ。では行ってくるんだよ!」

「気を付けるんじゃよ。ボタンは飛ばしても、スカーフは外すんじゃないよ」

「わかったんだよ!」


 エドナは、村長さんとドアさんに挨拶した後、村入り口まで走って行った。その間に三回ほど転んでしまったが。


 エドナが、村から出ようとしたところで。


「おっ! ちっこい嬢ちゃんじゃないか。相変わらず、元気そうだな!」


 エドナは、声がする方へ振り向くと。


「あ! ハルトさん、何だよだ!」


 この人は、ハルト。頭の天辺てっぺんが、()()()()()()()()()()()になっているが、その()()()()()()()()()()()を除けば、村の中では若い方で、代々三十代くらい見える。


 ハルトという男は、元々ライム村に住んでいた。エドナが、十歳頃、辺りから、どこの街で武器屋を経営している。時々、ライム村に来て武器を支給してくれている。エドナの弓も、ハルトの店で仕入れ品だ。


「それよりも、ハルトさん! あたしのことを、まだ『ちっこい嬢ちゃん』って呼ぶんですか!? あたしの名前はエドナだよ! エ・ド・ナなんだよ! もう、そろそろ、覚えてなんだよ!」


 ハルトは、一度もエドナを、名前で呼ばれたことがないそうだ。昔からエドナはハルトに「ちっこい嬢ちゃん」って呼ばれ続けられている。


「十五歳になった、あたしに『ちっこい』は失礼なんだよ! 確かに、あたしは背が低いんだよ。村にいる女性の方々よりも、ずぅーーと背が低いんだよ。あたし、もう、十三歳から背が一センチも伸びていないんだよ。それなのに年々体が重くなっているんだよ。もう! 何でなんだよ!?」

「あ~~。すまん、すまん。昔から名前を覚えるのは苦手で……それ以外は覚えられるんだが」

「もうーー!! きっと、ハルトさんが、ずっーーと『ちっこい嬢ちゃん』と呼んでいたから背が伸びなくなっちゃったんだよ! もしかて、ハルトさんは呪い術者だと、あたしはそう考えているんだよ! きっと、そうなんだよ!」


(あ~。怒っているつもりでいるが、頬を膨らませて、可愛いな)


「そんな、力ねぇよ。……悪かった。今度、村に戻る際に、お土産に美味しいって評判の店のお菓子を持っていくから機嫌を直してくれ」

「ホント? やったんだよーー! あたし、お菓子大好きなんだよ!」


(単純な子でよっかたな)


「あれ? ところで、何でお菓子貰えることになったのかな? ……忘れちゃったんだよ」


(本当に、単純な子だな。もう、自分が怒っていた理由を忘れているよ)


「ハルトさんは、もうお店のある街へ帰るんですか?」

「ああ、そうだな。店を経営しているのは俺だけだからな」

「いいな~。街に行けて」

「いつか、嬢ちゃんが旅に出た時には立ち寄ってくれ。いいところだぜ」


(まあ、その街は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「うん。必ず、ハルトさんのお店のある街に寄るんだよ」

是非ぜひそうしてくれ。そうだ! いい弓を手に入れたから、いつものところに置いてあるぜ。嬢ちゃんが来たら渡すよう言ったから」

「本当ですか!? ありがとうございます! 狩りが終わったら取りに行きます! 楽しみにしています」


 ハルトの言う、「いつものところ」と言うのは、村の食料や狩道具といった生活に必要な品物を管理しているマスティの家のことだ。


「そっか。じゃあ元気でな。俺はこれで。狩りを頑張りな、嬢ちゃん」

「ハルトさんもお元気で!」


 エドナが、村から出て森の方へ走って向かっていった。


 しかし。


「はわわわわわわわわわわわわわわわ!!!」


 ドーーーーーン!!!


 また、エドナは転んでしまった。派手に顔から地面にぶつかってしまった。


「おい! 嬢ちゃん! 大丈夫か?」


 ハルトが、遠くから声を掛けた。


「はうう……。大丈夫なんだよ……。いたた……」


(全然大丈夫には見えないんだが)


 エドナは、すぐに立ち上がり、何事もなかったかのように森の方へ走って向かっていった。


「気を取り直して、いざ、狩りへ出発なんだよ」

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