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【2025年再投稿版】蒼炎のカチュア  作者: 黒桐涼風
第二章 英雄の力
42/60

2-14 道連れなんて許せない

【ロプ村周辺の森林】


  カチュアとルナは、ルナの兄であるアルヴスを探して森の中に入っていく。


「カチュアさん。本当にこちらでよろしいですか?」


 カチュアを先頭に立って進んでいく。


「うん。こっちの方から、鉄同士がぶつかる音が聞こえるわ~。それに」

「それに? 何ですか?」

「焦げた匂いがするわ~」

「焦げた匂い? ですか?」

「うん、急いだ方がいいわ~」

『あんたが「急ぐ」って、言葉を使うのは、違和感しかないよ』

「え~? 何でかしら~」

『いや、違和感しかないでしょ! 普段のマイペースな、あんたを見ていれば!』

「も~。酷いわ~」

『いや、急いだ方がいいのは事実だからね。確か、手配者の相手にしているんだっけ? 話を聞いていた限り、その手配人は、強力な能力を扱う、極悪人ごくあくにん、見たいだし』

「見てみないと悪人か、どーかは、分からないわ〜」

『いや! 悪人だろ! 実際に、村を襲っているし!』

「でも、それは、()()()()()()()()()()()()()()()()()

『何? その意味深な言葉は?』


 カチュアとルナは目的地まで走っていく。しかし……。


「はあ、はあ、はあ、はあ……」


 ルナの息が荒くなっているうえ、走るペースが遅くなっていく。


「ルナちゃん、だいじょぶ?」

「ええ……。はあ、はあ……エドナさんは走るのが速いですが、カチュアさんも結構速い方ですね……」


(カチュアさんには、前後に大きくって重たい物があるにも関わらず、なぜ、そんなに速く走しれるでしょか? それに、速く走っているのに息切れはしないんでしょうか? どうなっているんでしょうか、この人の体は?)


「すみません。ルナは足手纏あしでまといの様で」

「わたしはだいじょぶよ~。無理しないでね」

「すみません」


(どうやら、ルナは魔術の研究員のことだけあって、体力はないようだ。研究員は、研究に没頭ぼっとうして、体を動かす機会がないイメージだけど、ルナもそのたぐいなのか? それとも、魔術の腕に、力を注ぎ過ぎた代償に、体力がなくなったのか?)


「カチュアさん、先に行っていてください……。こうしている間にも、兄様が危ないです」

「だめよ~。危険種に襲われる可能性もあるのよ~。それに、わたしはルナちゃんのお兄さんの顔を知らないのよ~」

『知らないも何も。アヴァルに着いた日に、見ただろ?』

「あら? そーなの~? わたし、顔は覚えられる程、見ていなかったのよ~」

『そんなことだと思ったよ』

「こーなったら~」


 カチュアはルナを持ち上げて、自分の左肩に乗せた。


「え! ちょ、ちょっと! カチュアさん! いきなり何しているんですか?」

「全速でいくよ~」


 カチュアはルナを乗せた状態で、全速で走り出す。


 カチュアが走った道には風が吹き出ていた。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!! 降ろしてくださいぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーー!!!」


 ルナは絶叫ぜっきょうする。


(カチュアが相手を絶叫させる乗り物と化してしまった)




 それから、カチュアは走り続けていき、目的地らしい場所に到着した。


 しかし。


「うぅえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! ぎ、も、じ、悪いです!!」


 ルナは口に手を抑えながら、うずくまる。今にでも、口から食べた物を吐きそうな、勢いだった。


「しー。静かにしてね~」

『ルナをこんな状態にした、張本人が、何を言っているんだ?』

「二人の男の人が戦っているわ~」


 茂みの中から様子をうかがう、カチュアとエドナ。


 目の前には、左足を押さえながら蹲る男と、カチュアが持っている大剣ほどではないが、大きめの剣を持った男がいた。


『どっちらが、ルナの兄のようだけど、私がアヴァルの街で見かけたのは、左足を押さえながら蹲る男の方の気がする』

「あの左足を押さている人が、ルナちゃんのお兄さんかしら~?」

「そうです!」

『やはり、左足を押さえながら蹲る男となると、もう一人の大きめの剣を持った男の方が……』

「あの、大きい剣を持った男の人が、ガイザックかしら~?」

「ルナも手配書の似顔絵にがおえしか見たことないですが、特徴が一致しています」

「そうと決まれば~」


 カチュアは背中に背負っている鞘から大剣を抜き取った。


「そ~~れ~~~」


 シューーーーーーーン!!!


 突然、カチュアは、ルナの兄アルヴスとガイザックのいる方向へ、大剣を投げつけた。


「わぁわぁわぁ! 何をするんですか!?」


 それを真横から見て、驚くルナ。




「あっははは!!! さすがは悪帝を倒した英雄の一人シグマの右腕だな。怪我を負っていながら、勇能力を持つ俺様を、ここまで手こずらさせるなんて」


(実際、殺されたかけたし、容赦ねぇな、こいつ)


「それは、どうも」


 アルヴスは、ガイザックに負わされた傷があるにも関わらず必死に抵抗していた。


(何とか、脹脛ふくらはぎに怪我を負っていながらも、抵抗したが、障壁を壊していない。ここは、詠唱の時間稼ぎをするか)


「……お前の持つ力は、英雄の力と呼ばれているものだろ? 帝国兵に所属も出来たんじゃないの? トラブルさえ、起こさなければ」

「ああ!? それは、俺よりも、先に生まれてきた奴が、そう呼んでいたんだことだけだ。こんな力があるのに、俺の好きなことをするのに使いてぇのさ。そう女遊びにな。それを邪魔する奴は殺すまでだ」

「くっ、まぁ、『先に生まれてきた奴が呼んでた』っていうのは否定しないが、悪用するなら放置するわけにはいかない」

「よく、しゃべるな。まだ、戦えられるか。だが」


 ガイザックの左手から火の玉が出現した。


「これで終りにしようぜ!」


(てか、終わりにさせなきゃ、こっちが殺されるてしまう。障壁はまだ破壊されていないが、こいつ、怖すぎるんだよ。本当に、帝国に仕える兵かよ)


 火の玉が段々と大きくなってきた。


(くぅ! この至近距離しきんきょりで、確実に奴を道連れにできるが、障壁を壊していない。このまま、対抗しても、俺だけ死んでしまう。何とかやり過ごさないと……)


 しかし、大きくなった火の玉が急に消えてしまった。


「何?」


 ガイザックはその場から離れた。 


 ガイザックにいた場所には大剣が地面に突き刺さっていた。


「危ねえ!? これは……大剣!? 何でこんなのが!?」


 さらにガイザックに目掛けて、火の玉が襲い掛かる。その火の玉はルナが放ったものだ。


 しかし、ガイザックは軽々と躱していった。


「誰だ?」


(誰って? この能天気娘です)


「ふぅ~~。何とか間に合ったわ~」


 地面に突き刺さった剣の横側に、カチュアが立っていた。マントは邪魔だから脱いでいるよ。


「おー!!! これはまた、オッパイのデカい、べっぴんさんだ!! 世の中、こんなにデケェオッパイ存在するのか?」


(もう、この顔を見慣れたというか見飽きたわ。その発情した猿の様な顔を)


「だいじょぶですか?」

「蒼い髪と瞳……女将軍シェリア? いや、君は?」

「カチュアよ~。よろしくね~」

「あ! ああ……」

「お兄様! ご無事ですか?」


 ルナは兄の元に駆け付け。


「ルナ!? どうしてここに!?」

「説明は後です! それよりも、その怪我は?」

「ああ、しくじった」

「今、応急措置しますね」


 ルナは怪我を負った脹脛の周りを包帯で巻いた。


「ありがとう。ところで、カチュアだっけ? 彼女は味方でいいなのか?」

「はい! 頼もしい方です!」


(まあ、()()()()()()()()、頼もしいな)


「そーだわ~。あなたに言いたいことがあるのよ~」


 カチュアは左足脹脛を押さえるアルヴスに視線に合うように、姿勢を低くした。


「命を大事にしないとだめよ~」

「それは、難しい話だ。国に仕える者としては、死と隣り合わせだ」

「そーじゃないわ~。あなた、ガイザックと共に死ぬ気だったでしょ?」

「え! 兄様! どういうことですか?」

「……奴は勇能力の持ち主だ。勝ち目は薄かった。もう、奴を止めるには、道連れにするしかなかった」

「酷い! 酷い! 酷いですよ! 兄様! ルナを置いて死を選ぶなんて」


 ルナは泣きながら、左右の拳でアルヴスの懐に「ポコポコ」と殴り始めた。


「すまない、ルナ。だけど、これ以上、被害を出さないためには、こうするしかなかった」

「何で、兄様がこんな仕打ちを受けないといけないんですか!? いつも、いつも、暴言を吐かれて! う、う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 ルナはアルヴスの懐へ頭を突っ込ませ、泣き喚いた。


「命はいつかは、なくなるわ~。でも、命を削る前提なのはよくないわ~。生きるために、足掻あがいて、足掻いて、それでも、死ぬ時はあるわ~。でも、それが生きるってことだと思うわ~。だから、初めから諦めないで~。死は一人だけの問題じゃないわ~。ルナちゃん、泣いているでしょ?」

「……嬢ちゃんは大人だな」

「それよりも、あの人を何とかしないとだわ~」

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