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【2025年再投稿版】蒼炎のカチュア  作者: 黒桐涼風
第二章 英雄の力
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2-9 誰が持つんだ、その大剣を! 持てる人はいます

 ミカンという女の子からの、依頼を引き受け、早速、依頼先のロプ村という、ところに向かうことになったカチュア達。


 現在は、まだ、アヴァルの街中にいます。


「さて、行きましょうか~」

「行こう、行こう!」

「は~」


 ため息を付くルナ。


「ルナちゃん、どうしたんですか? 息を大きく吐いて……」

「何事もないように、言っているよ。この人」


 ルナは、目を細くさせながら、エドナを見つめていた。


「え? どーしたの~? ルナちゃん? エドナちゃんを見つめて?」

「先に行っていた。というか、迷子になっていたエドナさんを見つけた時は、ものの見事にやられましたよ」

「はうう……。それはもう、忘れてよー!」


 それは、ほんの少しの前の話。


 エドナは、カチュアとルナからはぐれてしまった。エドナは二人を探していったが、その途中で、転んでしまい、その拍子で道歩く人にぶつかっていった。しかし、それだけでは済まなかった。エドナが、ぶつかった人が更に、道歩く人にぶつかっていった。それから、次々と、街の人たちを巻き込んで、ドミノ倒しのように倒していってしまった。


 エドナは巻き込んでしまった街の人達に謝罪をして周っていたら、彼女を探していたカチュア達と合流することができた。


「あーそうですね~。じゃあ、行きましょう。……その前に、聞きますが、あなた方は、ロプ村がどこにあるか、わかりますか?」

「あ! そういえば……カチュアさんは、ロプ村がどこにあるか知っています?」

「う~ん……分からないわ~。エドナちゃんは~?」

「あたしは、つい此間こないだまで、他の村へ行ったことすらなかったから、分からないんだよ」

「そんなことだと、思いました」


 ルナは大きくため息を付いた。


「ルナが場所わかりますから案内しますよ」

「え? でも、外は危険種がたくさんいるわよ~。ルナちゃん連れて行くのは危険だわ~」

「エドナさんも行くんでしょ? ルナとエドナさんは、そんなに年は離れていないです。それに、ルナには魔術があります。いざとなれば、魔術で蹴散らしますから、連れてって下さい!」

「そーなのね~。分かったわ。ありがと~」


(自分で言ったのも、なんですが、そんな簡単に納得しちゃっていいのですか?)


「……その前に、カチュアさん」


 ルナは、カチュアの身体を上から下まで見渡す。


「エドナさんは弓を持っています。ですが、カチュアさんは武器を所持していないですね。素手で戦うつもりですか? 見た感じ、魔道具も装備していないようですし」

「カチュアさん、確か、剣を扱うんだけど、この街に着までに全部壊しちゃたんだよ。だから、今のカチュアさんは武器を一つも持っていないんだよ。でも、カチュアさんなら素手でも戦えますよ」

「素手って、確かに可能ですね。……ちなみに、カチュアさんは勇能力でも、持っているんですか? あのバカ力は尋常じんじょうではないですよ」

「勇能力って、確か、よく英雄譚に載っている、英雄の持つ力だよね? あたしは詳しく知らないんだよ。カチュアさんがそれなのかな?」


 肝心のカチュアはというと。


「勇能力って何~?」

「……知らないようですね」


(分かっていました。勇能力の力は魔力を使用しますから。カチュアさん自身には魔力を感じられませんでしたから)


「それじゃあ、カチュアさんは、魔術は使えますか?」

「ん~? 使ったことはないわ~」

「そうですか。魔術は便利ですよ。魔物を相手にするには、物理で攻めるよりも、その魔物に弱い属性魔術をぶつける方が効率がいいです。もしよかったら、予備の魔道具と力は弱めの魔石はありますので貸してあげますよ。ちなみに七属性全部の魔石をそろっていますので、ご自身の合った属性を使えます。やり方も教えますよ」


(魔術をそんなに使っていない人には、弱めの魔力を秘めた魔石を使わないと危険です。以前、強い魔力を秘めた魔石を使って、自爆した人がいましたから)


「ん~~それはありがたいんだけど、魔道具を持っていても、わたしは魔術が使えないのよ~」

「ん? そんなことは、ないはずですよ。魔道具を持っていていれば、魔術の火力に違いはありますが、誰だって扱えますよ」


(まあ、扱う属性の相性もありますけど。ルナは風の魔術以外の属性魔術は扱えます。しかし、それ以外に魔術が、使えないとなると)

 

「もしかして、カチュアさんは勉強が苦手な方ですか?」

「実は、そーなのよ~」

「やっぱりですか。魔道具を持っていていれば誰だって使えます。ですが、それは、魔術に関する勉強をしていればの話です」

「わたし、とても、勉強は苦手なのよ~」

『それ、誇っていいのか?』

「うん、まあいいです。これは……想像以上に手が掛かるわ」


 ルナはカチュア達が見えない方向へ顔を向け、また大きなため息を吐いた。


「おや、君は確か、アルヴスくんの妹さんではないか」


 突然、この街の住人らしき男性から声をかけられる。


「あなたは確か……」

「はっはっはっは!」


  腕を腰を当てながら、急に笑い出した。


「『はっはっはっは』さんって言うんですね?」

「違いますよ。ただの笑い声ですよ。エドナさん」

「おっと失礼した。『あなたが確か』と言われたところで、名乗るべきところに急に笑い出してしまったからな」


(普通は「はっはっはっは」が名前なんて思わないんだけどね。それに、世の中には、()()()()、何て言うものがあるから。名称合っているよね?)


「申し遅れた」


 尋ねた男性は、右手をこめかみ辺りに当てた。


「わたしはベレクト。ガロン様の配下のものだ」

「はう? ガロン? 人の名前かな? 何処で聞いたことがあるんだよ。どこだっけ?」

「八騎将って聞いたことないですか? この帝国の八人の将軍のことです」

「あ! 何処で聞いたことがあると思ったら、村長さんから聞いたことがあるんだよ。『ガ』が付く人がいるのは、覚えている。後は『ゲ』が付く人と。『ネ』が付く人。『マ』が付く人もいたはずなんだよ」


(それは、覚えているって言うのか? ルナも呆れ顔しているよ)


「……ところで」


(ほら、呆れて、スルーしているよ)


「そのガロン……様の隊の人が、なんでここに?」


(気のせいかな? ルナは『様』付けにすることを躊躇ちゅうちょしたように感じた)


 ベレクトと名乗る、男はポーズを取った。


『何で、ポーズの決めるの? この人』

「ふむ、アウルの街にいたんだが、急遽、ガロン様に呼び出されてしまったんだ」


(何で、別のポーズに変えているんだ? この人)


「その途中でこの街の近くで陣地を作って、そこで兵達を休ませているんだ。さすがに大軍を街に入れさせるわけにはいかないからな」

「ガロン……様の配下とは思えない配慮はいりょですね」

「ガロン様は戦うことしか頭に入っていませんから」


 ベレクトはまた別のポーズを決めた。

 

(この人、ポーズを決めないと喋れないのか?)


「その急遽というのは、今回の()()()()()()()()()()()?」

「お察しの通りだ。今は退いているとはいえ、また仕掛ける可能性がある。だがら、呼び出されたのです。救援を行わないとならないというのに。幸い、シグマ様の部隊が駆けつけてくれたものの言いのもの、持ち場を任された我々が離れるのも無責任ですね」


(また、別のポーズに変えている。忙しい人だな。ポーズ決めるのに)


「本当にガロン……様の配下とは思えない責任感の持ち主ですね」

「口だけならなんとも言えますよ。……おっと、そろそろ、出発しないとだ。一秒で遅れたら大変なことに。では、わたしはこれで失礼する」


 そういって、ポーズ決めながら、この場を去っていった。


(この国の軍に所属する者は、ポーズを決めるのが作法なのか?)


「あの大声で話す人。帝国に仕える人なんだよね?」

「あの人は特殊な方ですよ。八騎将の一人である、ガロンの配下なのよ」


(さっきまで帝国のお偉いぽい人に対して『様』付けしていたのに、ベレクトとかいう者がいなくなったら、急に呼び捨てし出したよ)


「八騎将って、コルネリア帝国を守る八人の将軍だよね。村長さんに何千回も聞いたことがあるんだよ」


(その同じ内容を何千回を聞いていたはずなのに、所属する者名前を正確には覚えていなかったけどね)


「そう、その八騎将の一人シグマ様の配下がルナの兄です」

「そうなんだ!」

「ガロンは、冷血な性格で、『力』を絶対的正義だと思っている脳筋のうきんで有名な方なんです。べレクトさんは、そんなガロンの下に就いているとは、思えないほど陽気ようきな方なんです。噂では、凄い実力の持ち主らしいですよ」

「う~ん」


 カチュアが頭を抱えているんだよ。


「どうしたんですか? カチュアさん?」


 エドナがカチュアに声を掛けた。


「あの人~」

「ベレクトさんがどうしたんですか?」

「なんか不思議な感じがするのよ~。表に出している姿と、内に秘めた心が不自然に感じるのよ~」

「頭がこんがらがってきた。つまり……どういうことですか?」

「うまく言えないけど、表に出している姿を作っているのではないですか? ガロンの元に就いているから激務でしょうね。空元気でご自身を保っているでしょうね」

「うーん……ルナちゃんの説明でも、よくわからないんだよ」

「ルナも上手く説明できません。それよりも、べレクトさんのことはいいから、早く行きましょう」


(言われてみれば、ガロンの下に付くにしては、陽気過ぎますね。空元気でもあそこまで陽気ではいられません。他のガロンの配下の者は心を失ったのではないかって思う程、覇気が感じられませんのに。あの陽気さが不気味に見えます)




 しばらく、ルナの案内で、街を歩いくカチュアとエドナ。


「着きましたよ。ここです」


 案内された先には、剣みたいな模様が入った大きな看板を飾った店だった。


「ここは?」

「武器屋です。あなた方……特にカチュアさんは、ちょっと装備を整えた方がいいですよ。入りますよ」


 ルナが、店のドアを開けると。


「いらっしゃい!」


 店の中に入ると、()()()()()()()()()()()の店主が出迎えてきた。


「あれ?」

 

 店主はエドナの顔をじーと見つめた。


「嬢ちゃんじゃないか! どうしてここに?」

「エドナさんの知り合いですか?」

「はうう? 確かに見たことあるようだけど、どこで会ったかな?」

「おい、おい、何忘れているんだよ! ハルトだよ。ハルト! 何忘れているんだよ」

「……あーーー! ハルトさん! ハルトさんだ!」


 ハルトは以前、ライム村に住んでいて、現在はどこかの街で、武器屋を営んでいる。


「武器屋をしている話は聞いていたんだけど、この街にいらっしゃったのですね」

「そういえば、言っていなかった」

「ハルトさんのことだから、街の名前を忘れていたんだよ。きっと」

「確かに、街の名前忘れていたな」


(大丈夫なのかこの人?)


「そちらのちっこい嬢ちゃんと、マントの……微かに見える顔からすれば姉ちゃんか? この二人は?」

「こっちはルナちゃんで、こっちはカチュアさんなんだよ」

「で、なんで、ちっこい嬢ちゃんがここに?」

「そっか! ハルトさんは、ライム村で起きたことを知らないんだ! 実は……」


 エドナはハルトに、ライム村で起きた惨劇のことを話した。


「そんなことが……辛かったな。……大丈夫なんか? こんな時に?」

「あたしは大丈夫なんだよ!」

「……そっか、無理はするなよ。それよりも、マントの嬢ちゃん」


 ハルトは、フードを被ったカチュアに向かって、お辞儀をした。


「ありがとうな。ちっこい嬢ちゃんを守ってくれて」

「ううん。わたしもエドナちゃんに助けられたわ~」

「お礼と言ってはなんだけど、ただで武器を提供するよ」

「ありがとうなんだよ。ハルトさん」

「ところで、なんで一人だけ、マントなんて着ているんだ?」

「うーん~。わたしは目立つらしいのよ~」

「そっか、なんか、事情があるなら仕方がないか。で、マントの嬢ちゃんは、どんな武器を扱うんだ?」

「主に剣よ~。なかったら、槍でも、斧でも、鎌でも、ハンマーでも、いいわ~」

「色々使えるんだな。取り敢えず剣だな。剣となると、このショートソードか?」

「カチュアさんは、壊れにくい剣の方がいいかな? そこの大きな剣とか、いいかもしれないんだよ」


 エドナが指先には、大きな剣があった。


 しかし、その大剣の大きさは、カチュアの身長を軽く超えていた。ハルトよりかはちょっと小さめだ。


「ええと……これはさすがに手慣れた剣士でも持つだけでさえ、難しいぞ」


 カチュアは、その大剣の持ち手を、掴んだ。


「え?」


 カチュアは片手で大剣を軽々と持ち上げてしまった。


「うそだろ……」

「怪力なのは分かっていましたが、まさか、片手で……」


 ハルトとルナは、とても驚いた表情をしていた。


「マントの嬢ちゃんは、もしかして勇能力の持ち主か?」

「勇能力? そーなんですか? エドナちゃん?」

「うーん、わからないんだよ。ハルトさん、勇能力って、なんですか?」

「そう言えば、ちっこい嬢ちゃんは、勇能力とは無縁だったから触れることはなかったんだな。英雄と呼ばれるような者が持つ特殊能力だ」

「魔術とは違うの?」

「まあな」

「そんなことよりも、行かないと~」

「じゃあ、行こう~」

「ちょっと待って」


 店から、出ようとする、カチュアとエドナを止め、ルナはハルトの方へ振り向いた。


「ハルトさんでしたっけ? あなた、どこかで会ったことが、ある気がするのです」

「俺はピンク髪の嬢ちゃんには、会ったことないが」

「ハルトさんは、忘れているだけなんだよ! 現に、もうルナちゃんの名前も忘れているんだよ!」

「失礼な! 忘れっぽいのは、名前だけだ! 顔は見たら覚えられるぜ」

「名前を忘れるのも失礼だと思うんですか……まあいいです。失礼します」

「気をつけな」


 お店から出るんだよ。


(やっぱり、気のせいでしょうか? ハルトさんとかいう方の顔。どこかでみたことがあるんです。どこでしたっけ?)




【武器屋前】


「じゃあ、行きましょ」

「あ! はーいなんだよ」


 カチュアとエドナとルナは歩き出した。


「って、カチュアさん! 剣引きずっていますよ」

「え?」


 カチュアの貰ったばかりの大剣が、カチュアの身長を超しているため、背中に背負った鞘に納めた大剣の先が、地面に付いて引きづっていた。

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