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【2025年再投稿版】蒼炎のカチュア  作者: 黒桐涼風
第二章 英雄の力
36/60

2ー8 揉め事に首を突っ込む

【アヴァルの街。ギルド内】


 怒鳴り声がする方を向くと、小さな女の子が大柄の男性に絡まれています。


「はわわ!? 何ですか、今の怒ったような大声は?」

「何か、揉め事が起きたようですね」


(よく見たら、男性のズボンが、何かで濡れています。床には、ガラスらしき破片が散らばっています。破片を見た限り、元の形はお酒を入れるグラスでしょうか? となると、恐らく、女の子とこの男にぶつかって持っていたお酒を零したんですね)


「はうう。助けないとなんだよ!」


(できれば、目立った行動はしたくはないのですが、正直この状況は掘って置けません)


「そうですね。ルナの魔術なら、相手を消し炭にできますので、ここは……あれ? カチュアさんは?」


 さっきまで、ルナの隣にいたはずのカチュアがいなくなっていた。


「え? カチュアさんなら、あそこだよ」

「も~。だめだよ~。そんな、変な顔で圧をかけちゃ~」


 カチュアは大柄の男性の目の前に立っていた。


(ああ!! 何、首突っ込んでいるんですか!!? というか、怒った顔をしているのに、変な顔って言っていますよ、あの人)


「なんだ!? 痛い目に、あいたいのか!?」


 大柄の男性はカチュアに圧を掛ける。


「ん~? どーして、わたしが痛い目に会うのかしら~?」

「あん!? 分からねえのか!? こうゆうことだよ!!」


 大柄の男性は拳を握りしめた。


(あの人、女性相手でも、殴り掛かろうとしてきます! 容赦がなさそうですね。だから、ギルトには入りたくなかったんです! こんな揉め事を態々《わざわざ》起こすような人達が集まる場所なんかに!)


「不味いです! カチュアさんが……」


 大柄の男性は男性に殴り掛かってきた。


 シュ!!


「何!」


 カチュアは、襲い掛かる拳から躱した。


(慌てて避けた感じはしませんね。結構、余裕で躱しているように見えました)


「くそ!!」


 再び、拳で殴り掛かってきた。


 しかし、大柄の男性は連続で拳を振るうが、カチュアは躱していっている。


「え~と~。じゃあ~~、グーには、パーね~」


 カチュアは、握りしめた拳を目の前に手の平をだした。


(カチュアさん。それ、ジャンケンしているわけではありませんよ)


 バッシーーーーーン!!!


 カチュアさんの平手と大柄の男性の握りしめた拳がぶつかった。


 バキバキバキィ!!!


「い! いたぁぁぁぁぁぁーーーーー!!! 手が……手がががががががが!!!」


 大男は絶叫ぜっきょうした。


(男が痛がっている? 対してカチュアさんは痛ぶる素振りを見せていないです。それに、「バキバキバキィ!!!」と音が聴こえたような。そして、男が痛たがっている。もしかして、あの男の拳の骨が折れている?)


「ふざけいやがって!」


(とは言っても、明らかに、自滅したのでは? カチュアさん。手を上げただけですから)


「ちくしょーーー!!!」


 男は、手を痛めているにも関わらず、カチュアに殴り掛かろうとする。


「もう~。信じられないわ~。痛がっているのにもー」


 カチュアは再び、手の平を前に出した。


(このままで、あの男性の腕が壊れてしまいます)


「いやぁぁぁぁぁーーーーー!!!」


 突然、エドナさんの叫び声が聞こえる。


(エドナさんの声ですか? どこから? ……もしかして、上の方へから?)


 顔を見上げてみると、エドナが、回転しながら宙に浮いていました。


(これは、どういう、状況ですか!? 何がどうなったら、そんな状況になっているんですか? ん? あれが?)


 エドナの靴が濡れていた。


(もしかして、エドナさんは溢れた酒の上に踏みつけ、滑ってしまったのでは? だからって、どんだけ飛ぶんですか!? この人は!)


 飛んで行ったエドナが向かった先は、問題を起こしていた、大柄の男性の脳天のうてんだった


 ドーーーーーン!!!


「ぐほぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!?」


 エドナは、空中から大柄の男性の脳天目掛けて、踵落かかとおとしが見事に決まった。


(こんな、偶然、ありますでしょうか?)


「ぐえええーーーーーーん!! 痛いよ~~~ーーー!! ママーーー!! たずけてぇーーーーーー!!!」


 大柄の男性はギルドから出て行った。というより、逃げていった。それも、泣きながら。


(もう、骨が折れた時点で引いて下さいよ)


「うぉおおスゲェーーーー!!!」

「あいつ、態々、事を大きくするから嫌だったんだよ!」

「スカッと、したぜぇーーーー!」


 ギルド内で歓声かんせいが上がった。


(あの人嫌われていたんですね)


「だいじょぶ?」

 

 カチュアは、大柄の男性にからまれていた。女の子に声を掛けた。


「ありがとうございます。お姉ちゃん達、強いんですね」


(達? ん? んん?)


「……エドナさんは、転んだ、だけですよね?」

「もー---!!! それは言わないでなんだよ!!!」

「そうだ! あのね、大きなおっぱいをお姉ちゃん二人にお願いがあるの」

「ちょっと! 何で、『強い』から『おっぱい』に変わっているの!?」

「この二人のお姉ちゃん。『強い』というよりも『おっぱい』のイメージが強いんです。あたちのママよりも大きんです」


(『おっぱい』ではルナがハブられますよ。でも、『強い』でもルナは何もしていないです)


「お願い?」

「うん、とても、急ぎなの」

「どんなお願いなの~?」

「ええとねぇ。ロブ村にいる、病気のお祖母ちゃんのために、薬を届けてほしいの。やっと、お祖母ちゃんの病気に効く薬を手に入ったです」

「ロプ村は、ここから遠いのかしら~?」

「ううん。近いんだけど、最近は凶暴な魔物がでると話があるの。でも、あたちは戦えないから、ここに来たの」

「そっか~。それなら、わたし達が、この薬を代わりに届けるわ~」

「ちょっと、後先考えないで、依頼受けてもいいの?」

「いいのよ~、困っているんだから~。エドナちゃんも、いいかしら?」

「もちろんなんだよ」


元気な返事をする。


「大丈夫でしょうか?」


(お人好しですね、このお二人は。でも、立場がルナに置き換えても、多分、カチュアさん同等に、引き受けるつもりだったと思います。多分)


「ありがとう、お姉ちゃん達。これが、あたちが言っていた薬です」


 女の子からお薬を受け取った。


「そういえば、あなたのお名前は」

「ミカンです」

「ミカンちゃんね。必ず、届けるね~」

「お願いします!」




【ギルドの入り口前】


 女の子の依頼を、引き受けたカチュア達は、ギルドから出ていった。


「じゃあ、行きましょうか」

「その前に、ちょっといいかしら~」


 カチュアが、ルナに話しかけてきた。


「ルナちゃんに聞きたいことがあるの~」

「何ですか?」

「わたし達は、もしかして……試されているのかしら〜?」


 カチュアの笑顔のままだ。しかし。


『何だ? 急に空気が変わった?』


 突然、カチュアの一言で、ルナはしばらく沈黙してしまった。


「どういうことですか? カチュアさんが、何を言いたいのか、ルナには分からないです」

「嘘をついている感じはしないのよ〜。でも、うまく言えないけど、何か隠している感じがするのよ〜。例えば、わたし達の実力を見たいとか」


(ルナのカチュアさん達の戦闘力を把握する目的がバレましたか? 口には出していないはずです。それなに、どうして?)


「もしかして、あなたは人が何を考えているのかが、分かるんですか?」

「分からないわ〜。ただ、人の気持ちは分かるのよ〜」

「気持ち?」

「ん~~……上手く言えなけど、表面では笑っているんだけど、心が泣いているとか?」

「……そうですか。……それで、そんなルナと一緒にいて、いいのですか?」

「何で?」

「こっちが聞いているんですけど」

「でも、ルナちゃんは悪い人ではないわ~」


(断言します。この人の前では、隠し事はできない見たいです。かと言って、会ったばかりのお二人には、全部を放すわけにはいきません。少なくとも、あの話だけでも。そう、ルナが、カチュアさんのことで気になったことを、話しましょう。いいえ、()()()()()()()()()()()


「一つ聞いていいですか?」

「ん?」

「間違っていたら、すいません。もしかして、あなたにしか見えない、もしくは聞こえない生物かなんか、いますでしょうか?」

「どーいうことかしら~?」

「ルナは()()()()()()()()()()なんです。この辺では言えないですけど、それを辿りに、カチュアさんの周りにはルナ達には見えない存在がいるのではと考えたのです」

「……」


 カチュアが黙り込んでしまった。


「ナギちゃん今話せるかしら〜? 」

『いいのか? 私が出て来て』

「 ……え? いいのよ、心配しないでね〜」


(一見、一人芝居をしているようでが。やはり、ルナが思っていた通り、誰かいる見たいですね)


 カチュアは一回、目を閉じた。


「まったく、お人好しすぎるよ」


 目を開くと、カチュアの蒼い瞳が赤い色になっていた。


「目は、赤くなるんですね」


(やっぱり、カチュアさんの誰かいたんですね。恐らく、この人は魔術の一種で、カチュアの中にいる可能性があります。魔術を使っていなければ、魔力は感じられない。道理で、魔道具もないのに魔力を感じられるわけですね。ただ、どんな方法で、カチュアさんの中に入っているまでは、分かりませんでしたが)


「悪いけど、話はゆっくりしたところでしないかな? 正直、これは疲れる」

「そうですか。その前に、一つだけ聞かせて。あなたが、表に出なかったとしても、ルナの声は聞こえていたの?」

「あなたとカチュア達が、出会ってからの、会話は全部聞いていたよ。それと、私は記憶を失っている。自分が誰かはわからない」

「そうですか。わかりました」


(説明する時間は省けそうですね)


「じゃあ、行きましょうか〜」


(正直、彼女達のことを知るために、ギルドの依頼を受けることを勧めて、見ましたが、そんな、周りくどいことをする、必要はなかったかな?)


「ん? あれ?」

「どーしたの~。ルナちゃん?」

「エドナさんがいないです」

「あれ? 本当だ、エドナちゃん、どこだろう~」 

「もしかして、ルナとカチュアさんが話している間に先にいちゃったのですか? とにかく探さないと」

「そーね~。どこにいるのかしら~?」

「……まったく、世話が焼けますね」

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