2-2 街に到着。しかし、ピンチに陥る
【コルネリア国内。道中】
エドナは遠くの景色に指を刺した。
「どーしたの~エドナちゃん? 何か見えたの~?」
「う~ん……。見たことがない建物が見えてきたんだよ! それも沢山の! 何の建物かな? 家かな? 家にしては大きんだよ!」
「わたしも見て見るわ~……。あの方角ね~。え~と……どれどれ……う~ん……」
エドナが指で刺した方角を、カチュアは目を細くして眺める。
「ん〜……」
かなりの長い時間、眺め続ける。
「どうですか? もしかして、建物が見えたのは、あたしの気のせいだったのかな?」
「……あ~ごめんね。この位置からじゃ、ぼやけて見えにくいから、判断が難しいわ~。……でも、見る限り、あれは街かな~? 何件か建物が建っているから。……多分、きっと、そーだわ~」
「え!? あの先に見えるのが、街なんですか!? やっと着いたってことですか? やったんだよ!! そうと決まれば、早く行くんだよ!」
エドナは、街らしい場所へ向かって走り出した。
「あ~! 待って~! そこは~……」
カチュアは制止を呼びかけた。しかし。
「あれ? なんだか、どんどんと、走るのが速くなっていくんだよ。それに、足のブレーキが効かなくなって、止まらなくなったいるんだよ!」
エドナは走り続けている。
「エドナちゃ~ん。そこは坂道だから走ったら危ないわよ~」
エドナがいるところは坂道だった。
「はわわ!! はう! そうだったんだよ! 走り出したら、止まりたくっても、止まらないんだよーーー!!!」
コケッ!!!
「あ!」
勢いよく走っているため、足のバランスを崩して転んでしまった。しかし、転んだだけでは、済まなかった。エドナが足に着いていた場所は坂道だから。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロォォォォォォォ!!!
「はわわわわわわわわわわわわわわわわ!!!」
エドナの転んだ場所が下り坂だったため、転んだら、そのまま転がっていってしまった。
「エドナちゃ~~~ん。待って~~~~~~」
カチュアは、転がっていったエドナを走って追いかけていった。
「エドナちゃ~~~ん。速すぎるわ~~~。止まって、ちょーだい~~~」
ゆったりとした掛け声に反して、速く走るカチュア。
しかし、カチュアの足では、転がったエドナに追いつくことができなかった。カチュアとの間が、どんどん遠ざかって行っていっている。
転がり続けて、ようやく坂の終了地まで、転がっていった。しかし、転がる勢いがありすぎて、平地でも転がり続けていった。
「はわわわわわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! もぉぉぉぉぉ~~~~~~!!! 止めて、欲しいんだよぉぉぉぉぉーーーーーー!!!」
【???。入り口前】
しばらく転がっていったエドナは、ようやく止まった。
「はううぅぅぅぅ~~~!!! ぎ~もぢ、わるい~んだよ~~~」
目が回って気分を悪くしていた。
辺りを見渡して見ると、カチュアの姿はなかった。
「頭がくらくらするんだよ~~」
エドナは腰を下ろして、一息ついた。
「あ~。いたわ~。やっと、追いついたわ~」
カチュアが、ようやくエドナに追いついた。
「あら~? エドナちゃん、だいじょぶ?」
「はうう……うん、なんとか~。でも、まだ、目が回るんだよ……」
「ほんとに、だいじょぶ? 無理はしないでね~」
「ちょっと、休んだから大丈夫なんだよ。……それよりも、ここは?」
「ん? ん~~~と~~~……。街の入り口だよ、エドナちゃん」
「え?」
エドナが顔を見上げると、そこには、街だった。
「すごーーーいんだよ!! やっぱり、近くで見ると大きいんだよ!! あたしの村にあった家よりも大きんだよ! やっと、たどり着いたんだよ!!」
再び、下の方を見ると、街の入り口前に板が刺さっていた。
「あれ? なんだろ~? この板は?」
「看板ね~。何か書いて、あるわ~。えぇ~と~……」
「なんて、書いて、あるんですか?」
「……」
カチュアは看板に書いてある文字を読み始めた。しかし、そのままの体制で止まってしまった。
しばらくして。
「……多分、『アヴァルへようこそ』って書いて、あるわね~」
「アヴァルって、街の名前だよね? ……あれ? あたし達の目的地はそんな名前だっけ? あたし達って、目的地はアウルだったはずなんよ」
エドナは地図を取り出し、地図を広げて見て見ると。
「あれ? あれれれれ? 地図にはアウルは載っていたんだけど、アヴァルって言う街は、載っていなかったんだよ。もしかして、あたしは地図を見ながら歩いていたにも関わらず、実は、迷っていたってことかな?」
「あら~? そーなの~? ……でも、これで、いいじゃないかな~? 結果的には、街に着いたんだし~」
「……そうですね。……そうなんだよ! うん! 七日間も掛けて、ようやく街に着いたんだから、これでいいんだよね? 多分。あ! そう言えば! ……ん~~~」
「エドナちゃん? どーしたの?」
「これから、どうしようかなぁって、考えていたんだよ。村に出る時は、とにかく人がいる街に、たどり着くことだけ考えていたんだよ。でも、街には、着いたんだし、その後、どうしようかなぁと思ったんだよ」
「あら? それも、そーよね~。……うーん〜、どーしましょ~?」
「どうしようかなぁ?」
二人揃って悩んでいると。
「どうしようって! 何も考えていないんかい!?」
カチュアが、怒ったような、大きな声を出したんだよ。
「カチュアさん!? どうしたんですか!? いきなり怒ったような喋り方をして! 驚いたんだよ!」
カチュアの特徴とも言える蒼色だった瞳の色が、赤色になっていた。
「え~? 今、喋ったのは、わたしじゃないわよ~」
カチュアは顔を横に振った。
「あれ? 元の瞳の色に戻ったんだよ」
カチュアの瞳の色が赤から蒼色へ戻っていた。
「え? そう言えば、さっきのカチュアさんの喋り方は、カチュアさんではなかった気がしたんだよ。じゃあ、さっきのは、誰なんだろう?」
「それよりも……」
カチュアは、両耳を両手で、抑えていた。
「うーん……何だか、耳が『キーン』とするよ~」
「そうなんですか? でも、耳が『キーン』するような音なんて、聞こえなかったんだよ」
「う~ん~~……ナギちゃんが、いきなり喋ってきたのよ~。それで、耳が『キーン』としたのよ~」
カチュアが、瞬きをした後に、カチュアの瞳の色が、また蒼色から赤色になっていた。
「あー。え~と~……喋ったのは私だ」
「え? カチュアさんですよね? 目に色どうしたんですか? それに、喋り方も変わっているんだよ。さっきのカチュアさんの喋り方になっているんだよ」
「え? 目の色が、変わっているの?」
「うん! 赤色になっているんだよ」
「はぁ~~。……一応、私とカチュアで、見分けが付けられるみたいね。下手したら、あんたは一生気づかなかったかもしれないから」
「あたしは、カチュアさんの瞳の色が赤になったのが心配になったんだよ。大丈夫なんですか? こういう時は、目にいい薬、目薬っていうんだよね? それを目に付けるんだよ。でも、どうしよう! その肝心な、目薬がないんだよ!」
「いや! 自分じゃ、見えないんだけど。これ、充血しているんじゃないから! ……多分」
(というか、充血で赤くなるのは瞳だっけ?)
「あんたは、エドナだったよね? ナギという名に聞き覚えないかしら?」
「ナギ? 聞き覚えがあるんだよ。ナギさんって、確か……カチュアさんの中にいる人でしたっけ?」
「まあ、そういう認識でいいよ」
「そうなんですね。直接話すのは初めましてなんだよ」
(全く疑わないんだね。……まあ、いいわ)
「話したいことはあるけど、話はゆっくりした、ところでしたい。そうだね……街の中だと、宿屋とかがいいかな?」
「宿屋? 村長さんから聞いたことがあるんだよ。宿屋って、確か……寝泊りする、ところですか?」
「まあ、確か……そういうところね」
(記憶は曖昧だけど、多分合っている。合っていると、信じたい)
「じゃあ、そこへ行くんだよ! 出発なんだよ!」
エドナは走って、街の中に入っていく。
「ちょっと、待ってよ! この街に始めて訪れたんでしょ? その宿屋が、どこにあるか、わかるの?」
「え?」
エドナは、後ろを振り向いた。次の瞬間。
「はわわわわわわわわわわわ!!!」
ドッテェェェ!!!
エドナは足を躓かせたわけでもないのに、転んでしまった。
「いたたた……痛いんだよ!」
「だいじょじょじょじょじょじょじょじょじょ!!!」
「はうう? ナギさんがおかしくなっているんだよ。どうしたのかな?」
「……」
「ナギさん?」
「あれ~? ナギちゃんの声が聞こえなくなっちゃった~」
「いつもの、カチュアさんの、のんびりした喋り方に戻っているんだよ。それに……カチュアさん目の色が戻っています」
カチュアの瞳の色が蒼色に戻っていた。
「おかしかったかしら~?」
「充血したかと思ったんだよ」
「ん~~~……。だいじょぶだよ。特に目は痛くないから~」
「それなら良かったんだよ」
「それよりも、街の中へ入りましょ~」
「分かったんだよ! でも、ナギさんが急にいなくなって、ナギさんは、大丈夫なのかな?」
(はぁ、疲れた。やっと、エドナと直接話せると思ったら、表に出て話すと体力の消耗が激しいなんて)
【アヴァルに街中】
カチュアとエドナは、街の中に入っていった。
しばらく、歩いている二人だが、未だに宿屋らしき建物を見つけられていなかった。
「そう言えば、宿屋って、どんな建物なんだろう?」
「どれも一緒ね~。見分けがつかないわ~」
『どういうのか知らないで探していたのかよ!』
「……そー言えば、気のせいかしら~」
「どうしたんですか、カチュアさん?」
「視線が気になるのよ~」
「そう言えば、あたし達、さっきから周りの人達から見られている気がするんだよ」
それは、通りすがった街の人達が、カチュアとエドナのことを熱い視線で見てきていた。主に斜め下の方を見ていた。
「あたし達に視線を向けてくる人の中には……主に男の人かな? その人達が、笑っている顔しているんだけど、何だか怖いんだよ。それに、なんだか、息が荒くしているんだよ。あたし達が、見慣れないから街の皆さんは、あたし達を見ているのかな?」
「ん~~。……きっと、そーね~」
(見慣れないからって、息を荒らすしながら見る奴がどこにいる? あれを見ているからだよ。あれを)
「……あ~。そーいえば~」
カチュアが急に止まった。
「カチュアさん。どうしたんです……」
コケッ!!
「はわわわわわわわわわ!!!」
ドーーーーーーン!!!
若干前に歩いていたエドナが、カチュアがいる方へ顔を向けたら、転んでしまった。
「エドナちゃん、だいじょぶ~?」
「はうう~。頭をぶつかったんだけど大丈夫なんだよ」
『頭にぶつかったって、それ大丈夫って言い切っていいのか?』
「そう言えば、どうしたんですか? 急に止まって」
エドナは立ち上がった。
「……」
「カチュアさん?」
「あれ? 何だったかしら~。ちょっと、待ててね……」
『忘れるなよ! 聞きたいのがこっちなんだから!』
五分ぐらい経った頃に。
「あ! 思い出したわ~」
急にカチュアさんが声を上げたんだよ。
「思い出したんですか? それで、何ですか?」
「エドナちゃんはお金持っているかしら〜?」
「お金って、確か、街で物とか交換する時に使うのですよね? それっぽいものは、あたしは持っていないんだよ」
「わたしも持っていないのよ~。困ったわね~」
「どうしてですか?」
「これでは、宿に泊まれないわ~。宿に泊まるには、お金がないといけないのよ~」
「そう言えば、村長さんから聞いたことがあるんだよ。街では、欲しい物があったら、そのお金というのが必要だって、何千回も聞かせれたんだよ」
『いや、話過ぎだろ!』
「あれ? だとしたら……どういうことなんですか?」
(いや! ここまで、話して事態が分かっていないのかよ! 千回も同じことを聞かされていたのに!)
「そのお金がないから、宿についても、泊まれないわ~」
(珍しく、カチュアが常識的なことを言っているよ)
「そんなー! どうしたらいいんですか?」
「ん〜……。こうなったら〜。野宿しかないわ~」
「えぇぇーーー!! はうう……せっかく、街にいるのに!! これが街の厳しさなんだね」
これからのことを考えているカチュアとエドナ。すると。
「兄様! やはりルナも付いて行きます! ルナの知識なら役に立つかもしれないですよ」
「危険だから、ルナは留守番だ。これは、ただ街へ行くだけのものではない」
男女二人の、大きな声が聞こえて来た。




