1-16 竜に立ち向かう、蒼髪の少女
「はうう! そんな……! 人が……、人が……」
『状況が追いつかない! 何で、こんなことに!?』
ヴァタと呼ばれていた、大きな大男は、人としての原型が全くない、動物? になってしまった。
その姿は二本足で立つ蜥蜴の様な姿だった。さらに鋭い牙と爪を生やしていた。
「もしかして、あれって、ドラゴンですか? よく英雄譚に登場する、魔物の一種と言われている、あのドラゴンに」
『ドラゴン? あれが? ドラゴンというよりかは、人と竜が合わさった竜人では?』
「でも、挿絵に描かれているドラゴンよりも、とても怖そうなんだよ」
(この世界では、人がドラゴンの姿になるのが、一般的なのか?)
「そんな! ヴァタ様が……ヴァタ様が……」
「なんてことだ」
「これが、あの試作品の副作用ですか? こんなの聞いていないですよ!」
ヴァルダン兵達が腰を抜かしている。
(あの怯え方は、この事態を誰も予想をしていなかった見たいだ)
『カチュア! 何だか、不味くないか? これ』
ドラゴンが、カチュアの胸打ちによって倒れていったヴァルダン兵達に近づいていく。しかも、大きな口を開けながら。
「あ! うう……けほっ!」
カチュアが、足を一歩前に出した瞬間、少し咳をするのと同時に、体がふらついてしまった。
「何で、さっきのように体が思い通りに動かないの……」
「カチュアさん! 大丈夫ですか?」
「間に合わないわ~! エドナちゃん! 見ちゃダメよ~!」
「え!?」
カチュアが、急に腕を伸ばして、その腕でエドナの目を隠した。
「カチュアさん!? もしかして……」
「……わたしが悪いのかしら〜? 彼らを動けなくしちゃったから?」
ガッシ!
二足歩行のドラゴンは、生き残っているヴァルダン兵全員を両手を使って、ヴァルダン兵全員を鷲掴みして捉えた。
「放せ! 放せ!!」
「ダメだ!! 力が強すぎて!」
二足歩行のドラゴンは、口を大きく広げた。
「おい! まさか!」
「ひぃいい!! 助けて、助けてぇええええええ!!!」
そして。
「ぐわわわわわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「やめて……やめて……ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
クチャ、クチャ! クチャ、クチャ! クチャ、クチャ! クチャ、クチャ!
「はうう!!!」
エドナの体が震えている。
エドナは目を隠されているから、何が起きているかは見えない。しかし、見えないだけで、声や音は聞こえてしまう。その音だけでも、状況が把握できていた。そのため、体を震わせている。
『な! な! な! なんてことなの!』
(あのドラゴンは、元は人間だった。それが、ドラゴンになったことで、人を喰べるようになったのか? 人が人を食べている。何で、こんなことに!?)
「ごめんない!! ごめんない!!」
カチュアの目から、涙が流れていた。
二足歩行のドラゴンの口から、血が垂れていき、二足歩行のドラゴンのいる場所が、土の色から血の色へと染まっていった。
喰べている際、人の片腕が口から落としたが、それすら残さずに拾って喰べた。
生き残っていたヴァルダン兵を全員食べ尽くした二足歩行のドラゴンは、カチュア達のいる方へ振り向いた。
『どうやら、満腹になっていないようね。こっち見ているよ、カチュア』
「見逃してくれないのね〜。エドナちゃんは後ろに下がっていて~。少なくっても、背後にはヴァルダンの人達も、あのトカゲ見たいな生き物はいないから、だいじょぶだと思うわ〜。でも、一応、警戒はしておいてね~」
「でも! あんなのを、お一人で! それに、体がふらついています!」
カチュアの体はフラフラで息切れをしている。とても、戦える状況ではない。
「心配だったら、エドナちゃんの、風の矢で援護してね〜」
「でも」
「わたしなら、心配ないわ~。だから……」
「うう……分かったんだよ。……でも、気を付けてくださいね」
「分かったわ~」
エドナは、家の瓦礫で隠れられところで身を隠した。
「あたしは、弓で援護することしか、できないのかな? でも! あたしは、あたしで、出来ることをするんだよ。この弓で、カチュアさんを援護するんだよ」
カチュアは二足歩行のドラゴンの元へ向かって行った。
「ごめんない。トカゲさんになる前の、あなたの気配は感じないわ~。せめて、解放してあげるわ~」
「グォオオオオオオオ!!!」
二足歩行のドラゴンはカチュア目掛けて、殴り掛かってきた。カチュアは、咄嗟にヴァルダンの人が使っていた剣を拾い、その剣で二足歩行のドラゴンの拳を受け止めた。受け止めた後、すぐに後方へ下がっていった。カチュアは無事だったけど、剣の方は二足歩行のドラゴンの攻撃に耐えきれず、折れてしまった。
再び、二足歩行のドラゴンは、カチュア目掛けて殴り掛かってきた。それに対して、カチュアは素手でドラゴンの腕を受け止めた。
「いくわよ~」
ドーーーーーン!!
その状態から、カチュアは二足歩行のドラゴンの顔面に蹴りを入れた。カチュアよりも遥かに大きい体を持つ、二足歩行のドラゴンを蹴りで吹き飛ばした。
さらに、カチュアは吹き飛んだ二足歩行のドラゴンの元へ向かって走って行った。
ドーーーーーン!!
カチュアは吹き飛ばした二足歩行のドラゴンに追いつて、二足歩行のドラゴンの腹部を殴りつけた。殴られた、二足歩行のドラゴンは、さらに吹き飛んだんだよ。
ドッカーーーーーン!!!
吹き飛ばされた二足歩行のドラゴンは、地面に思い切り叩きつけられた。
『倒したのか?』
「……いいえ」
「グゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
二足歩行のドラゴンが起き上がった。
『わぁ! しぶといな。あれで、生きているなんて』
(腹部を見たら、ドラゴンになる前のヴァタと違って傷一つ付いていな)
『……ん?』
カチュアが殴った部分から、煙が出ていた。
(あれ? なんで、煙が出ているんだ? 特に、火なんて使ってもないのに、なんでかな?)
起き上がったばかりの二足歩行のドラゴンが、またカチュアを襲いに掛かってきた。
カチュアは、二足歩行のドラゴンの攻撃を軽く躱していく。カチュアは主に殴る、蹴るで、反撃するものの、二足歩行のドラゴンには傷一つも付けられない。
(あの、やはり、ドラゴンの体は硬すぎるな。どうすんだ?)
「はうう! カチュアさんの攻撃が通っていないんだよ。こうなったら、あたしが! 多分、普通の矢じゃ、効かないと思うから」
エドナは魔術で風の矢を作り、タイミングを見計らって風の弓を放った。
シューーーーーン!!!
命中して、ドラゴンは吹き飛ばすことはできた。しかし、二足歩行のドラゴンは起き上がった。矢が命中したところには傷一つ付いていなかった。
「そんな……肝心の体には、傷を負わせられていないんだよ。本当に、どうしたら……。」
「エドナちゃん! いつでも、魔術で作った矢を、放てるよう構えて~」
「え!? でも……」
「だいじょぶよ~。わたし達は負けないから~」
「分かったんだよ!」
エドナは、カチュアの指示通り、風の矢を作った。
体制を整えた二足歩行のドラゴンは、カチュア目掛けて自身の持つ爪で切りつけようとしてきた。
カチュアは、その攻撃を、しゃがんで躱わした。
「そこよ~~」
ドーーーーン!!!
カチュアは、真上に通った二足歩行のドラゴンの腕を、その真下から蹴りを入れた。
グサッリ!!!
「グオオオオオオオオ!!!」
二足歩行のドラゴンの腕は、カチュアの蹴りによる衝撃で、軌道が変わった。そのまま、自身の腹部へ向かっていった。そして、二足歩行のドラゴンは、自身の爪で、自身のお腹を突き刺さしてしまった。
(ようやく、傷を負わせることが出来たみたいだね。まさか、自分の体の一部が弱点だったなんて)
『やったのか?』
「……いいえ」
「グググ……」
二足歩行のドラゴンは、まだ生きていた!
(腹に刺さっているのに、なんで生きているんだよ? しぶとすぎるだろ!?)
二足歩行のドラゴンは、すぐに自身の腹部を刺している自身の腕を引っこ抜こうとしていた。
「はうう……ダメなの? どうしたら?」
「エドナちゃん、今よ! さらに押して!」
「え!? え……」
急にカチュアがエドナに指示を出した。エドナもすぐに指示の意図が読めなかった。
「ん!? ん!? ん!? ……そっか! そういうことなんだよ!」
やっと、カチュアの意図が分かったエドナ。
シューーーーーン!!!
エドナは、二足歩行のドラゴンの腹部に突き刺さしている腕の肘辺りに、風の矢を放った。
グサッリ!!!
風の矢は二足歩行のドラゴンの腹部に刺している腕の肘に命中した。
風の矢が当り、その衝撃で押すように爪が、お腹を、さらに突き刺さっていった。そして、二足歩行のドラゴンの背中から、自身の爪が貫いて出てきた。
「グオオオオオオオオ!!!」
二足歩行のドラゴンは倒れていった。
(ようやくか。ようやく、倒すことが出来た)
「やりましたね。カチュアさん」
「もう、敵の気配はないわ~。一先ず安心だわ~」
(とは言ったが、辺りを見渡しても生存している人はいない。カチュアが殺さずに生かしたヴァルダンの兵達も、ヴァタによって全員殺されてしまった。今、生きている者は、カチュアとエドナだけになってしまった)
「終わったんですね……」
エドナは安心したか、膝を曲げ、地面へ座り込んでしまった。
「ええ……なんとか……」
バタリ!
「カチュアさん!」
カチュアは倒れてしまった。
「大丈夫ですか!? カチュアさん!」
「ぐぅうう……」
「はう? ……もしかして寝ているんですか? そうですよね。ゆっくり休んでください。……ありがとうございますカチュアさん」




