1ー9 出会ったばかりの二人で
【ユグルの森。河原】
「ふはぁ~~。お腹一杯だわ~。おいしかったわ~。ありがとね〜。こんなに食べたの久しぶりだわ~」
カチュアは、エドナが作った三人分はあるだろう猪の丸焼きとシチューを一人で丸ごと食べた。
この料理に使われているお肉は、カチュアがエドナを助ける際に、カチュアによって斬りつけられたデブボアの肉を使っている。
「よかったんだよ! 急に倒れた時はビックリしたんだよ!」
「ごめんね。驚かしちゃった見たいね~。わたし、もう三日も食べてなかったから、お腹が空いちゃって……」
「三日もですか? それはお腹が減るんだよ。あ! そうだ、自己紹介がまだだったんだよ! あたしの名前はエドナって言うんだよ。この近くにある村、ライム村に住んでいるんだよ。あのー、さっきは、ありがとうございます。お陰で助かったんだよ」
「いいのよ~。こうして、三日ぶりのご飯を頂いたんだから~。あっ! そーだわ〜! わたしは、まだ名乗っていなかったわ〜。わたしは~……カチュアっていうのよ~。よろしくね~」
「カチュアさんって言うんだね。なんだか、カチュアさんの、蒼い髪と瞳を見ると、あの伝説の女将軍に似ているんだよ!」
『蒼い髪と瞳を持った伝説の女将軍? どこかで……』
突然、カチュアでも、エドナでもない、声が聞こえた。
「あれ〜? どこからか、声が聞こえたわ~。この声、どこかできいたことがあるような……。ねぇ~、どこにいるの〜?」
カチュアは首を左右に動き出した。声の主を探すかのように辺りを見渡している。
『誰かを探している見たいだけど、誰を探しているんだ?』
「また、聞こえたわ~。……あ~思い出したわ~。夢の中で出て来た人ね~。……ねぇ~どこにいるの~? いたら、返事して~」
『もしかして、私の声が聞こえるのか?』
「あ~。聞こえたわ~。でも、人の気配がないわ~」
「どうしたんですか?」
エドナが不思議そうに尋ねた。
「あれ~? エドナちゃんは聞こえないかしら〜? 女の子のような声が?」
「え!? ううん~……何も聞こえないんだよ! カチュアさんには聞こえるんですか?」
「うん、そーよ~。それにしても、おかしいわね~。近くにいるみたいなのに~。どこにいるのかしら~?」
『探しても、無駄だよ。私はカチュアの中に入るから』
カチュアの中から、声を出すナギ。しかし。
「ねぇ~。どこにいるの~?」
構わず、声の元を探すカチュア。
『いや、私はカチュアの中にいるんだよ。だから、その辺を探しても……』
「ねぇ~。どこにいるの~」
ナギが教えているにも関わらず、ナギを探し出すカチュア。
『話聞けぇよ! わ・た・し・は・あ・ん・た・の・な・か・に・い・る・ん・だ・よ! 分かった!?』
「……あら? そーなの~? わたしの中にいるの~? いつの間にか、わたし、お家になったのかしら~?」
『ちげぇよ! でもまあ、混乱するよなね。大丈夫よ。私は魂だけのような存在で、別に、私の実態があんたの体の中に入っているわけではないよ』
(てか、魂だけの存在って、何で、そう断言できるんだ? 私は)
「そーなのね~」
「はうう? カチュアさんは、誰と話しているんですか?」
カチュアとナギは普通? に会話をしているが、エドナにはカチュアが一人で話しているようにしか見えなかった。
『私の声は、あんたには聞こえるけど、エドナという子には届いていないようだ。……もしかして、私の声は、あんたにしか聞こえないみたいだね。私はしばらく黙っているわ。あなたが変な人に思われるといけないから』
(まあ、私から見れば、カチュアはかなーり変わった子なんだけどね)
『取り敢えず、周りに人がいるところでは、私に話しかけないほうかがいいわ』
ナギはカチュアに釘を刺したつもりでいただろう。しかし。
「あの〜、カチュアさん。大丈夫ですか?」
「あ! うん! なんだか、よくわかないけど~、わたし以外にしか、聞こえない見たいだわ~。うまく言えないんだけど……うーん……そっか! わたしの中に幽霊みたいな人が居るみたいなのよ~」
すぐに口を滑らしてしまった。
『て、おい! コラっ!! 何、即刻、バラしているんだよ!!?』
「あら? 何だか、怒っているみたいだけど、どーしたの~?」
『そんな、別精神が宿っているって、普通は信じないから! だから、私のことは、言わない方がいいて、たった今、釘刺しといたんですよ! それに幽霊みたいな人って何よ!? 背後霊か何かですか私は!? もっと、いい言い方はなかったんですか!?』
「そーなの~。ごめんなさい」
『はぁ~。あんた、隠す気、さらさらないだな。本当に何やっているのよ?』
「そうなんだ! 不思議なことも、あるみたいなんだね!」
純粋な目で納得するエドナ。
『納得するんかい! もう少し疑わんかい!』
(まあ、いいけど。これ以上のツッコミするのも、疲れるし)
「たしか〜……。ナギちゃん、だったよね? 名前は?」
『あ〜。確か、そんな名で名乗っていったような? 自分の名前すら覚えていなかったから適当に名乗ったものよ。取り敢えず、本当の名前を思い出すまで、ナギって名乗らせてもらうよ』
「……ナギちゃんで、いいみたい~」
直接エドナに話ができないため、カチュアを通して伝えることが出来ない。
(カチュアは喋り方は、かなりスローペースだから。全然、会話が進まん。私が直接はなせればいいのに)
「そうなんだ。あたしには、聞こえないですけど、よろしくなんだよ!」
(天然なのかな? と思ってしまうほど、いい子過ぎないかな? 普通信じないでしょ。はたから見ると一人芝居している変人にでしょ? カチュアが変人なのは否定しないけど)
『話戻させて』
「ねぇ〜。ナギちゃんが話を戻してといから、話を戻そう〜。…………何の話だっけ?」
『女将軍!』
「女将軍? ……あ~そーだったわ~」
カチュアは両手を合わせながら頷いた。
(全然、話進まないな)
「わたしが知っている、その女将軍は~『蒼炎戦記』に出てくる女将軍しか知らないわ~。その女将軍のことで合っているかしら~?」
「そうです。『蒼炎戦記』は約七百年前に、本当に起きた大きな戦いを記されたものなんです。強大な力を得たメリオダスと、その妹の女将軍との戦いが記されているんだよ」
『ちょっと待って! 兄妹で殺し合いをしていたの!?』
「悲しいわね。兄妹で争うなんて」
「何で、二人は戦うことになったのかは分からないんだよ。英雄譚にも載っていなかったんだよ
『穏やかな話ではないのは確かだね』
「最後は女将軍が勝利したんだよ。その伝説の女将軍がカチュアさんのような、蒼い髪と瞳持っていたんだって。とはいえ、その容姿は英雄譚の挿絵に載っていたでけどね」
「そーなんだ〜」
『なんだか、興味が無さそうな返事の仕方だな、これ』
(それにしても、蒼炎戦記に、伝説の女将軍シェリアか。機会が、あったら、それに関係の書物を読みたいわね。どこかで、聞いたことあるし自分探しの手がかりになりそうだし。根拠はないけど)
「それで、カチュアさんはどうして河原付近で倒れていたんですか?」
「え? ええ、とお~、わたしは……」
「わたしは……」といいながらも、三分くらい口を動かしていない。
「わたしは、長い間、一人で各地に周っていたのよ~。もう七年も~」
(そういえば、夢ではカチュアのことは何も聞けなかったけど、この子は一人旅していたんだ。あれ?)
「七年も? カチュアさんって、歳いくつですか?」
「うーん……十八歳ね~」
「ということは……」
エドナは指を動かし始めた。
(数えているようだけど、考えるのが長い)
「十一歳の時からですか!?」
(あ~、よかった。時間掛ける計算して、正解に導くなんて~。時間掛け過ぎるけど)
「でも、どうして十一歳から旅をしていたんですか?」
(それは気になるね。一人で旅に出るにしては、幼い過ぎる)
「ちょっと、待っていてね〜。今思い出すから……」
『いや、忘れてたんか!!』
(でも、普通じゃないことは確かだ。十一歳で一人旅なんて。よく今まで無事だったな)
「う~ん……。自分探しの旅? かな~」
『適当だな。しかも、聞きたいのは、こっちなんだけど、何で疑問形?』
(仮に自分探しの旅だとして、何があった? 十一歳って、将来の進路を真剣に、悩む年頃でもないでしょ……多分。何を言っているんだ、私は?)
「そうなんですか?」
『いや! そんなんで、納得するところかよ!?』
「ところで、何で、河辺に寝てたんですか?」
(それが一番気になる。あの夢って、言うべきかはわからないけれど。あれ以前には、私はいなかったらしいし。もしかしたら、あの夢を見る前にカチュアが何をしていたかが知れば、私がカチュアの中に宿った、きっかけがわかるかもしれない。まあ、カチュアが覚えていたらの話だけど)
「旅の途中で、どっかの山にいたんだけど……。河辺のところを歩いていたら、足を滑らせて川に落ちちゃったの~」
『ちょっと待って! あんた、流されていたの?』
(目を開けた時は、河原にいたから、その辺で寝てただけだと思っていたけど。違ったか、あんな猪がいるところで、呑気に寝るアホはいないか)
「山って、デク山のことかな? 確か、村長さんが言うには、ここから歩いて四日掛かるところにあるって言っていたんだよ。……ということは、そんな長く流されてたいのですか?」
「あらあら~そんなに流されちゃったのね~」
『いや待って。あんた、流されているのに呑気に寝てたの? どういう真剣しているんだよ!?』
(もしかして、私もその川で溺れていたかな!? 死ぬところにカチュアを器にした。それで私の体事態は失った、それなら辻褄は合うのか? じゃあ、何で体がなくなっているんだよって、話だよな! ……まあ、断言はできないし、この件はもう置いておこう。てか、今は忘れておこう)
「エドナちゃんは、一人で何していたの~?」
(狩りじゃないのか? 弓を持っていたし。他に弓を持つ理由って、密猟か? それか、戦場へ向かおうとする兵士か? それか、狙撃手か?)
「狩りをしていたんだよ」
(ですよね~)
「まだ、何にも、狩れていないんだよ。調理したデブボアはカチュアさんが狩ったんです」
「そーだったのね~。狩りをしていたところ申し訳ないんだけど、わたしをエドナちゃんの村まで、案内してもらっていいかな~? 泊まるところがほしいの~」
「それでしたら、私の家に泊まってもいいですよ。あたし、今は一人暮らしであたし以外誰もいませんから」
「いいの? ありがと~。……あ! そーだわ〜。わたしも狩り手伝うわね〜」
「えっ!? いいんですか?」
「お礼よ~。せっかく獲ったお肉は、わたしが全部食べちゃたわ~。その分、調達しないとだわ~」
「そっか! 分かったんだよ! そうと決まれば、さっそく行くんだよ!」
エドナは、森の方へ走っていってしまった。
『行っちゃった……。何か……、あんたに似てるね』
「え~? そーかな~」
うん、独特な世界観を持っているところが。……それよりも。
『……行かなくっていいの? エドナって子、もう見えないよ』
「……あ~! 本当だわ~、まって~、エドナちゃ~ん」
遅れたカチュアはエドナを追いかける。
(全く、世話が焼けるわ。にしても、あの二人は、なんで初対面なのに、あんなに仲が良くなっているんだ? お互い、お人好しなのか? 悪い人に騙されなければ、いいのだか。それでも、そういった勘がいいのか? いずれにしても、あの二人は、かなり危なっかしいのは確かだな。こういうとき、精神体で助かった。体があったら、あの二人に振り回されて身体的が疲れそう。……なんか、複雑)




