序章
彼はわたしを、〈太陽の贈り物〉と名づけた。
「月光にもまばゆく輝く金の髪、光の結晶のような金緑の瞳。おまえはまさしく太陽から生まれた娘だ。美しい子供、わたしの愛しい娘よ」
ささやくように言いながら、細い指先でわたしの頬を撫でる。くすぐったさと心地よさに、わたしはくすくすと笑う。
口癖のような彼の賛辞。甘くやわらかな言葉の余韻を楽しみながら、わたしは少し意地悪く思う。
――太陽なんて、もう何百年も見ていないくせに。
「太陽の輝きを覚えているの、アル?」
知らんふりして訊ねてみる。すると、冷たいくらいに端正な面貌が、かすかに揺らめく――悲しそうに。
「ごめんなさい、アル」
わたしはすぐ後悔する。意図して彼を傷つけた。そうしてしまう自分が嫌いだ。なのに、やめられない。すまなさと腹立たしさとをもてあまし、彼の首に強く抱きつく。
「なにを謝る? おまえが謝ることなどないよ」
優しく答えて、彼はわたしの身体を抱きしめる。小さくて細すぎるわたしが壊れないように、そっと。でも、あふれそうな愛情を込めて。
「あたしを愛している?」
「愛しているよ」
「ずっと一緒ね」
「ずっと一緒だよ。ヘリオドーラ、かけがえのないわたしの宝石」
永遠の夜を旅する青年は言う。それは真摯な愛の告白だった。
アルディラーン。わたしの庇護者。わたしの世界のすべて。あなたが大好き。誰よりもなによりも愛している。
――でも、嘘つきは嫌い。