表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/22

序章

 彼はわたしを、〈太陽の贈り物〉と名づけた。


「月光にもまばゆく輝く金の髪、光の結晶のような金緑の瞳。おまえはまさしく太陽から生まれた娘だ。美しい子供、わたしの愛しい娘よ」


 ささやくように言いながら、細い指先でわたしの頬を撫でる。くすぐったさと心地よさに、わたしはくすくすと笑う。

 口癖のような彼の賛辞。甘くやわらかな言葉の余韻を楽しみながら、わたしは少し意地悪く思う。


 ――太陽なんて、もう何百年も見ていないくせに。


「太陽の輝きを覚えているの、アル?」


 知らんふりして訊ねてみる。すると、冷たいくらいに端正な面貌が、かすかに揺らめく――悲しそうに。


「ごめんなさい、アル」


 わたしはすぐ後悔する。意図して彼を傷つけた。そうしてしまう自分が嫌いだ。なのに、やめられない。すまなさと腹立たしさとをもてあまし、彼の首に強く抱きつく。


「なにを謝る? おまえが謝ることなどないよ」


 優しく答えて、彼はわたしの身体を抱きしめる。小さくて細すぎるわたしが壊れないように、そっと。でも、あふれそうな愛情を込めて。


「あたしを愛している?」

「愛しているよ」

「ずっと一緒ね」

「ずっと一緒だよ。ヘリオドーラ、かけがえのないわたしの宝石」


 永遠の夜を旅する青年は言う。それは真摯な愛の告白だった。

 アルディラーン。わたしの庇護者。わたしの世界のすべて。あなたが大好き。誰よりもなによりも愛している。


 ――でも、嘘つきは嫌い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ