2/3
月日は過ぎて・・・
深い深い森の中、危険度の高い魔物ばかりが生息しており、森に足を踏み入れれば生きては帰れない。
巷では「帰らずの森」と恐れられる森の奥。
そんな危険な場所で、場違いにも焚き火を囲む影が一つ。
「やっぱり肉は焼くに限るよなぁ。これを知ってると生肉には戻れんよ。」
声の主は言いながら、焚き火から下ろした肉に喰らい付く。
その姿はまさに獣そのもの。
肉は皿にこそ乗っているが、手で持ち上げることはなく、直接口を付けている。
そもそも手は無く、あるのは前脚である。
伏せた状態で食事をするその姿は、人間ならば行儀が悪いと注意されるべきだが、彼に対しては誰もそんなことは言わないだろう。
犬の様に鼻と口が突き出た頭部、巨大な体躯、それを支える強靭な四本の脚、食事をして機嫌が良いのかゆらゆらと振られる尻尾。
どれを取っても人間ではない。
そう彼は狼、それも只の狼ではない。
この世界に於いて地上最強と恐れられる伝説の魔物「魔狼フェンリル」なのである。
「あ、塩無くなった。」
少し、変わり者ではあるが、、、。