第5-8頁 触れ合う手と手
ハームウルフに囲まれた六花は最大のピンチに見舞われた。
その時、六花に謎の力が発現し、見事ハームウルフ達の撃退に成功。しかし、その反動のせいで六花は気を失い……。
──もう一度会いたい。あの人に。
視界が真っ暗だ。
手の感覚はもちろん、身体中の感覚が消えている。声を出そうと喉を絞るが、喉も消えて、声は出ない。
ただ一つ、脳というか、意識だけ残っており、そこに直接大好きな人の声が届いている。
この大好きとは、友達としての好意ではなく、恋愛対象としてのソレだ。
その人に会いたい。
体がどうなってもいいから…その声を
自分の耳で聞きたい。
自分の目で見たい。
自分の手で触れたい。
自分の肌で感じたい。
そのためには…ここから[戻らないと]。
あれ?でもこういうのってすぐに戻るものじゃないんですか?
うーん、どうやって戻るんでしょうか。
数秒考え込んだが、導き出した答えは簡単だ。
『まっっったく分からん』
うん、分からないものは仕方がないですよね。うん…。
「六花、おい!生きてるよな!お前、脈はあるんだからちゃんと生きてるんだよな!?」
あぁ、これは蜜柑さんの声…ということはみんなここまで来れたんですね。
「ちょっと六花ちゃん!そんな簡単に死んだら許さへんで…。早く…早く戻ってきて!」
これは結芽子さんの声。泣きながらボクのことを…。
「まぁでも、生き物と言うのは意外と呆気ないものだ」「もしかしたら死んでしまったのでは…?」
これはルイスとファールルイスのコンビ。まぁ確かに今すぐボクが死んでもおかしくは無い…か。
「…六花!起きてよ!お願い起きて…お願い…ッ!」
この声はボクの…大好きな静紅さんの声。
ぎゅっと握る静紅の手を六花はそっと包み込むように握る。
感覚は無いのに、それだけは何故か出来た気がした。
パンっ。
六花の手と彼女の手が重なった時、六花を縛り付けていた何かが断ち切られ、意識は回復した。
その手はとても優しく、暖かく、そして…懐かしく感じた。
『六花をいじめるのは…許さないよ!』
いつかの静紅が六花を庇おうといじめっ子へ放った言葉だ。
暗闇に真っ白な光が差し、六花は思わず目をつむった。
・・・・・
強い光が六花の身体を包み込んだと思うと、瞬時に六花の脳にたくさんの情報が流れてきた。
まぶたを通して届くランプの明かり。
肌を撫でるそよ風。
鼻腔を刺激させる夜の匂い。
鼓膜へ届くたくさんの声。
指から感じる誰かの手のひら。
どくんどくんっと今でも動いている生命の鼓動。
腰のベルトが締め付ける痛み。
草のチクチクした感触を受けとっている脚。
──生きてる…生きてるんだ、ボク。
そう思うと、瞳から水滴が溢れて仕方がない。
六花の瞳から溢れた涙。
悲しいわけじゃないのに、泣いている…。
静紅さん、ボクにも感覚が戻ってきたよ。
今…行きます!!
六花は身体に力を込めて、一気に飛び起きた!




