総集編 101頁〜200頁までの軌跡 その3
第10章[アングリフ・ボレロ] 導入
第153頁〜160頁
ルリの一件から数日。静紅たちは日常を取り戻し、穏やかな日々を過ごしていた。
その日々はこの国の王であり、静紅の友人である[紗友里]の来客きによって崩れることになる。
「とある国へ行くのでついてきて欲しい」
できることは何でもするとは言った手前、断ることは出来なかった。
メンヘラ気質の六花とフレデリカを眺め、3日後に静紅は船に乗る。
メンバーは紗友里とルナと静紅の3人だ。
やってきたのは大陸の海側にある[アーベント・デンメルング]という国。
他国とのありとあらゆる干渉を認めず、貿易港はたった一つのみ稼働といったいわゆる[鎖国]した国だった。
静紅はまず貿易港に船をとめ、この国に降り立った。
その貿易港に何処と無く違和感を感じながらも、中央都[オスベルン]へ向かう。
・・・・・
かちゃり、かちゃりという金属音が燃やし尽くされてボロボロになった街に響く。
全身に大怪我を負ったまま、少女は荒野を足を引きずりながら歩く。たった一人、街を壊した忌まわしき人物を打ち倒すため。
「私はまだ…こんなところで死ねない…!必ず、必ずあの残忍姫を殺す…、その時まで私は死ねないッ!!」
金髪少女が持つ旗槍は、寂しい風に吹かれ揺れていた。
・・・・・
「ふわあ、ねむ」
緊張感の欠片も持たないまま静紅は中央都へ に到着。少しは気を引き締めろと紗友里に注意を受けるが、生理現象なのだから仕方ない。
昼過ぎなのに人っ子一人いない中央都。中央都というくらいだから国で一番活気のある街のはず。
その異変の理由はすぐに分かる。
「[残忍姫クリュエル]! いつまで俺たちの自由を奪う気だ、どれだけの生命を奪えば気が済む!」
静紅たちはこの国の王クリュエルとそれに反逆する集団と遭遇する。
どうやらこの国は独裁政治で国民のことを何も考えない政治をしてきたらしい。
竜車に乗った女性と、その護衛の銃士は言う。
「貴様らに政治に対する不満を言う権利は無い。ましてやそんな奴らに生きる価値も無い」
銃士は反逆集団の心臓を一人残らず撃ち抜くと、冷徹な瞳で死体を見下ろした。
隠れていた静紅は、この国の現実と自分の住む国がどれだけ平和なのかを痛感する。
「待て、クリュエルッ!!」
再び王を呼び止める者がいた。その少女は大怪我を負っていて、今にでも倒れそうな程だ。
荒んだ金髪に、気持ち程度の鎧、そして槍に立派な旗が結ばれた旗槍を持った少女。
名前はジャンヌ・ダルクと言った。
「私の名は、ジャンヌ・ダルク!お前を殺す…勇敢な英雄だ!」
「そうは言うが死にかけではありませんか。……行きましょう、そう長くない者を殺しても体力の無駄です」
そう言って王とその使いはどこかへ行ってしまう。
「は、はああ……怖かった……」
大怪我を負ったまま、地面に座り込むジャンヌに静紅は駆け寄る。
「あの───────」
「どわあああえええっ!?」
先程の勇ましい雰囲気はどこへ行ったのか、ジャンヌは涙目でおどおどとした雰囲気の少女になってしまった。
話を聞くに、ジャンヌは[多重人格]らしい。
一人は槍旗を勇ましく掲げる[クールジャンヌ]。
もう一人は気弱で優しい[おどおどジャンヌ]だ。
その日の晩はジャンヌの隠れ家に泊めてもらい、朝を迎えた。
新たな朝、静紅たちはジャンヌに連れられてとある場所へ向かう。
「ジャンヌお姉ちゃん! ジャンヌお姉ちゃんが帰ってきた!」
そこは[反乱軍の本拠地]だった。見た目は教会でカモフラージュしているが、中身は王への反乱を企む住民たちの基地だ。
住民たち、といってもほとんどの大人は殺されたか行方不明で教会で生活しているのは大体が子供たちだった。
反乱軍の基地は各地に点在しているが、中央都に近いほど大人の数が減っていく。
全反乱軍のリーダーに立つジャンヌも齢14歳のまだまだ幼い子供である。
「私が留守の間、何か異変はありましたか?」
「ううん、ジャンヌお姉ちゃんに言われてた通り怪しい人が来たら地下にみんなで隠れてたから大丈夫だよ!」
先ほどから話しているのは教会の子供たちの中でも比較的年上の少女だ。
ここの子供たち全員がジャンヌを姉のように慕っていて、ジャンヌもまた妹のように可愛がっていた。
ジャンヌは少女に遠くで遊ぶように言うと、[クールジャンヌ]に人格を入れ替えて静紅たちに言った。
「無理は承知で頼みがある。見ての通り反乱軍の六割が孤児たちだ。単純な人数が足りない、少しでも仲間が欲しいんだ……どうか力を貸してくれないか」
頭を下げるジャンヌに紗友里は快くその頼みを受け入れた。
「私が君たちに提供するのは[勝利]だ。この私【万優姫】イズミ・サユリが力を貸そう」
この国の王クリュエルを【残忍姫】と名付けるなら、紗友里は【万優姫】と付けるのが妥当だろう。
全ての国民に優しく、そして全てに優れているからだ。
この瞬間から、一時的ではあるが静紅たちは反乱軍の一員として行動をすることになる。
今回も読んでいただきありがとです!
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