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第267頁 能力の熟練度について

─────能力について? なんでまた。


─────ほら、熟練度とか種類とかさ、私あんまり知らないんだ。


 時は遡り、マーメイド・ラプソディから帰還した時の事。


 私はバイト先のリーリエ魔道具専門店にて、店長リーリエの姉であるリュカと茶を飲んでいた。


 私のアイデアにより、魔道具だけでなく多少の菓子と茶を提供することでちょっとした女性たちの憩いの場……カフェのような感じになったこの店だが、案の定客足は少しずつ伸び、リーリエがパンの耳ラスクを食べる日も少なくなってきていた。


「んな事言われてもなぁ……能力って言っても人それぞれ、十人十色百人百色だ。私の[炎]だってそうだ。炎の火力、範囲、精度。それだけでなく[蒼炎]も発現した。本当に、それぞれなんだ」


 リュカの能力は炎を出すというごく普通の能力だった。


 が、過去の仕事がら能力を使う機会が多かった為、能力が成長したという。


「筋肉を使えば強くなるように、能力も使えば強さが底上げされる……か。熟練度って数値化はされてないけど、ラインを超えると急に使えるようになるんだよね」


「朝目を覚ました時、または戦闘中、またはトイレの時、なんかもあるな」


「大雑把だけでもいいからさ、どんなものが成長するのか教えてよ」


「お前もしつこいな桃髪。……そうだな、お前みたいな物質操作なら[正確に操作]できる母数が増えたり、操作の速度が上がったり、精度が上がったりだな。

 [操作]という大元がある以上、急に炎が出せるようになったり遠くの物を見れるようになることは無いよ」


あくまで操作は操作……ってことね。


「逆にミカンの能力は可能性というか伸び代がある。初期は触れた[食材]の鮮度を操作するだけだったらしいな」


「そうそう。触れたものっていうのと、食材っていうもののネックが合わさってだいぶ弱い能力だよね」


「現状、今の能力にはふたつの問題点があるわけだ。触れたもの、そして食材のみが対象という問題だ」


 リュカは私に二本の指を見せてから、続ける。


「熟練度が上がれば、触れなくても操作できる……あるいは操作の対象が増える。って感じだろうな」


「なるほど、触れなくても操作できるっていうのは強いね」



・・・・・



 私の予想なら、もう既に蜜柑の能力の熟練度はかなり上がっているはずだ。


 遠隔操作、または対象の増加。


 どちらかが来るだけでもかなり生活と戦闘どちらにも使える能力になる。


「ねぇルカ、あなたの能力って……」


「んーとね、ルカの能力は[ルナと触れている間だけ魔力が上昇する]ってやつなの。だからルナとルカはいつも一緒に居ないといけないの」


 双子故の能力ってことか。


 確かに今までの姉妹の活躍を思い出していると、魔法を使う時って必ず二人は[触れ合っていた]な。


 だからアーベント・デンメルングの時のような、ルナだけ出撃の時は頭抜けて強い魔法が使えるわけじゃないんだ。


 ルカもルナも、お互いが存在しないと成り立たない能力なんだな。


「私の能力……なにか成長したのかなぁ」


 確かに精度が上がってる気はするし、複数操作の時、不器用な私でも多少は同時並行で行えるようになった。けど……。


「なーんかインパクトにかけるよなぁ」


「そんなことないの! シズクさんの能力は凄くいいものだと思うなの」


「あはは、ありがと。ルカの能力でさ、熟練度が上がった時ってどうなったの? なにか成長した?」


「うーん、触れ合う時に上昇する魔力の量が増えただけなの。その代わり物凄い増えるけど」


 まあ初めからチートみたいな能力だしな。


 そう思えば、初めは弱い方が上げ幅が大きくなる傾向があるのか?


「能力に囚われすぎるのもよくないってサユリ様がよく言ってるの。例えば……フレデリカ。フレデリカの能力はふたつ持ってるけど、そのどちらも戦闘向きじゃないなの。それでも彼女は騎士団の中でかなり強い方。彼女の大剣の身のこなしと運動神経があれば、強い能力の犯罪者だって怖くないなの」


「大切なのは単純な戦力……か。ありがとうルカ、なんかスッキリしたよ!」


「それは良かったなの! なにせ、サユリ様は『めいどはご主人様をスッキリさせることが仕事だからな』と言っ」


「おいまてちょっとまて紗友里あいつ何を教えてんだ」


 性処理的な……あれだよな……。


「実践は……ッ!?」


「してないなの、シズクさん顔気持ち悪いの」


「そっかよかったよでもなんか心が痛いね!?」



・・・・・



 草原の風を感じる中、結芽子は竜を運転する少年にとあることを相談していた。


「強さの秘訣?」


「そう、単純な力の強さ。うちは昔から弱かったんや、ずっと守られてばっかりやった。やからうちは力が欲しい。守られるだけやなくて、守る力がな」


 確かに結芽子の能力は戦闘向きではない。しかし、彼女のあの勇気や度胸は皆の士気を上げて、時には体を張った作戦もこなしてきた。


 それでも。


 フレデリカのような大剣、ルリのような魔法といった[力]がない。


 それは他でもない彼女が1番よく知っている。


「想いだと思います」


「想い?」


「想いは人を強くする、とサユリ様はいつも言います。勝ちたい、勝って帰りたい、助けたい、救いたい……そんな想いが原動力となり、僕たちの味方をしてくれます」


「想いなぁ……」


 そう呟きながら、結芽子は飛んでいく雲をぼうっと眺めた。



・・・・・



「ねえフレデリカ?」


「なあにアルトリア」


 [異端者]同士、仲良く同じ竜に乗るフレデリカとアルトリア。二年の月日を経て再会を果たしたのにも関わらず、仲は既に当時と変わらないほどに良かった。


 再会の約束して会うのと、死んだと思っていた旧友が生きていて再会するのとでは価値が違う。


 互いが互いを大切に思い、大事にしている。


「これって現実なのかなぁ」

 

「あはは、何言ってるの」


 空を見ながら大きな口を開けてあくびをするアルトリアに、フレデリカは笑いながら言う。


「だってさ、死んだと思っていたフレデリカと再会してさ、今度は誰かの役に立てるかもしれないなんて子供の頃は想像もしていなかったんだもん」


 そっか、[あの時]のままなんだ。


 誰の役にも立てず、感謝もされず、ただ働くだけのあの街から、思い出は更新されていないんだ。


 目を輝かせながら、自分の少し刃こぼれした直剣を眺めるアルトリアはわくわくが止まらないようだ。


「これからたくさんの人の役に立てるよ、凄い記憶、楽しい記憶でいっぱいにして、嫌な記憶は消しちゃおう?」


「うん! やっぱりフレデリカは凄いよ」


「ええ、そんなこと言われたことないよ?」


「そんなことあるよ。私にもだけど、他の人にもたくさんの勇気をくれるって凄いことだよ」


「……! そっか、ありがとアルトリア!」


 アルトリアとフレデリカはぎゅっと手を握り合うと、いつものように微笑んだ。


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