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第247頁 魔物討伐隊

これからフレデリカの過去編です、ちょっと長くなるかもですが、めちゃくちゃ大切なストーリーなので何卒……!!

 彼女が産まれた土地は、分厚い雪の絨毯に覆われ、大理石のような白い空に押し潰されたような所だった。


 街の資産も多くなく、恐らくこの国の裕福な街ランキングでいえば下から数えた方が早いほどである。


 街の数が比較的少ないヴァイシュ・ガーデンの中でも貧しいのだから、それはそれは相当な貧しさだったのである。


 クラ=スプリングスのスラムもなかなかの貧しさ具合だったが、スラム地域以外は日当たりが良く、温泉街と工業で実は裕福な街に分類される。


 さて、話を戻す。


 とにかく彼女の故郷の街は、酷く貧しかったのだ。


 雪原の村『ルドリエ』。


 ここから彼女の物語は始まったのである。



「うおおっ!」


「フレデリカちゃん、そっち任せるね」


 ルドリエは子供が働き、親が楽をする。という風習が主だった。


 子供の頃は精一杯働き、大人になるとさっさと子供を作って歩けるほどまで育てればあとは剣を覚えさせるだけだった。


 彼らにそれが異常という考えはなく、それどころかこれが普通だと思っていた。


 そしてここにもまた、不遇な子供達で結成された[魔討隊まとうたい]が雪原を一生懸命駆けていた。


「パトリシアくん、そこ抑えてて!」


「お、おうッ!」


 金髪のエルフ、黒髪のコボルト、茶髪のコボルト、それと茶髪の人間。


 それぞれフレデリカ、パトリシア、アルトリア、フランシスカという名を持つ。


「せっやぁッ!」


 フレデリカはパトリシアが防御した狼種魔物を、慣れない大剣を振り回して攻撃する。


 大剣。


 それは古くからの相棒のような存在で、大人になった今でも愛用している。


 騎士団直属の敏腕鍛冶屋に度重なる強化を依頼してきたが、この頃の大剣はまだ、ありふれた鉄の塊に過ぎなかった。


「危ないフランシスカ!」


「助かったよ。そら、下級火属性魔法・火球!」


『ギャゥン!』


 幼くして下級火属性魔法を使えるこの少女フランシスカ。

 

 差別意識の高いこの街で、前に出るのはいつも人間の彼女だ。


 この魔物討伐隊のリーダーで、心強い姉的存在でもある。


「ったく、盾らしい盾といやぁフレデリカと俺だけなんだから気をつけてくれよな?」


「ごめんごめん」


 大きな盾を持ち、腰に気持ち程度のナイフを携えたコボルトの少年、パトリシアはフランシスカに一言叱るとため息をついた。


「フレデリカも気をつけて欲しいよなあ?」


「うん、そうだね。でも盾を持ってるパトリシアくんももっと頑張らないと」


「そーだそーだ! さすがフレデリカ、私の義妹ちゃん!」


 フランシスカは杖をぶんぶんと振り回しながらフレデリカと肩を組むようにした。


「……とりあえず終わったよ、剥ぎ取り」


 先程から一言も話さず黙々と狼の死骸を剥ぎ取っていたアルトリア。


 彼女は長剣持ちのコボルトだ。


「おっ、サンキューなアルトリア!」


 剥ぎ取られた狼の毛皮を四人で持ち、とりあえず今日の分は終了だ。


 四人は返り血で真っ赤に染まった雪原を背に、ゆっくりと街へ帰還するのだった。


 一歩一歩、いつかは終わる四人の絆が今も続いているか、一歩。また一歩と確かめながら。


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