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第225頁 深い深い悪夢の中へ

「間違いありません、あの巨大な影兎は[成れの果て]が生み出したものです。このままじゃコショウどころじゃありませんよ!」


 東京タワーよりも巨大なその[影兎]は木々をまるで雑草のように踏み倒していく。光線を撃ってからはまだ何も行動していないようだが、次は何をするか分かったもんじゃない。

 アレは成れの果てが生み出したというのなら、止めるのは困難だろう。

 

「成れの果てって……キュリオスがアレを出現させたって言うの?」


「いいえ、あの人の気配じゃありません。どこかで感じたことがある気配なんですが……そうだ、茶会の時……あのパジャマ姿の人の気配……」


 成れの果ては何人もいることは知っているが、パジャマ姿の成れの果てなんて私は知らない。


「とにかく無視して新しい食材を探した方がいいよ、ここで失格とか最悪だし」


「……いや、我はあいつを倒す。シズは我を置いて逃げろ」


「こいつまたっ!ほら、行くよ!あんなのに構ってる暇は無いんだから!」


 私がルリを連れていこうとするなか、フレデリカも大剣を構える。

 おいおい、待ってよ。嫌だよ、私あんなのと戦いたくないし。


「この大会が危険と言われている理由……ご存じですか」


 確かに大会開始前、危険な大会だと告げられた。死んでもここは仮想的な世界で、元のエントリー会場に戻るだけだ。それなのに、何が危険なんだろう。言われてみれば不思議だ。


「死、ですよ。死の恐怖は本来、人生で一度しか味わいません……味わった途端その人は死に、余韻に浸る暇もありませんからね。ですが、この大会は会場に戻ってしまいます。実際の命の危険が無いだけで、死の恐怖は容赦なく襲ってきます……大会の出場者の中には、死の恐怖をもう二度と味わいたくないと部屋に閉じこもってしまう人もいるほどなんです」


「つまり……なに?」


「マカリナ様が居てくれたから危機を脱せたものの、他の人達はそうも行きません。着々と近づく死に恐怖し、絶対して、そして会場に戻される。あんな化け物に殺される恐怖を一生噛み締めて生きないといけない人生なんて、許せません!だから私もルリさんと戦います!」


 でも、でも……。


「静紅さん、ここは一度賭けてみませんか?大丈夫、死んでも死にません。なら、知らない誰かの人生を守るチャンスを活かしてみませんか?他でもない、あなたの手で。ボクと一緒に」


 六花は優しく私の手を包み込んだ。

 はあ、ここまで言われて拒否する方がみっともない。


「仕方ない、天鱗山に続いてコレだけど……やってやるか!」


「その意気だぞシズ!」


「頑張りましょうお師匠様」


 私はパチンと自分の頬を叩いて気合いを入れ直した!



・・・・・



「私もそろそろ行きましょう、”あの子”が暴れている今なら、私は目立たないでしょう」


 そう言って飛び立つインソムニア。影のコウモリを自分の背中に付ければ、即席の翼の完成だ。彼女の黒い髪と、背中に生えた翼は夜を連想させる。

 時刻は昼を過ぎ、午後3時。時間の流れは非常に早い。

 ふわふわと空を飛んで、ニアは影兎の肩にちょこんと座った。


「まさに絶景……でも、明るくて私には不向きですね」


 そういうとニアは空を仰いで、空中に薄いキーボードのようなものを出現させた。世界の創造主である成れの果ての特権だ。


「ワールドコマンド・タイム オブ ミッドナイト」


 途端、空が一気に闇に包まれる。冷たく、吸い込まれそうな、そんな真っ暗な空。それでもなお影兎の存在感は健在で、進軍をやめない。


「私の影のほとんどをあなたにつぎ込んでいます……負けないでくださいね。これは特大ギャンブル、負ければ全てが消滅してしまいます」


『ぐぐぁ』


 偽りの星空が眩く輝き、流れ星を降らす。ニアは一度決めたことはどんなことがあっても諦めない性格で、それを完遂するためなら命だって差し出すほどだ。彼女は死ねないのであくまで比喩的な表現だが。

 影兎が短く答え、ニアもそれに頷いた。影との生活は短くはない。共に暮らしてきた時間に比例して、親密度も高くなっていく。


「……なんだか昔を思い出しますね。あなたも覚えているでしょう?そうですね、あれはこの空のように闇が降ってきそうな新月の日でした。あそこが人生最大のターニングポイントでしたよね、でも……」


 肌寒い夜風に髪を押さえ、ニアは遠くの水平線を見た。どこまでも続いていきそうな、決して終わることのない大海。不思議と不死身の自身と重ねてしまう。


『ぐぅ?』


 影兎の疑問のあと、ニアは珍しく頬をあげて答えた。否、厳密に言えばヒトリゴトを言った。


「悪くはない出来事でした」


 ニアはそう、自分の一部である影兎に告げると立ち上がった。


「あの夜は、希望と絶望が入り乱れる夜でした。そして今夜も同じ感じがします……ですが変ですね」


『ぐぅ!!』


 影兎は、何度も質問させるな!と言わんばかりに肩を揺らした。

 それにニアもはいはい、と足で反応する。


「今夜は希望の割合の方が大きいです。何が起こるか楽しみですね……さあ、行きましょう」


『ぐん』


「Shall we dance?《深い深い夢の底へ》」



・・・・・



 敵の数は一人。しかし、あの影兎レベルの生物を召喚できるほどの手練れだ。影兎ですら、私達が全力を出しても勝てるかわからないのに、本人を討てるのだろうか。

 ああ、まただ。またいつもの癖で悪い方の未来を想像してしまう。


「なんだなんだ、一体なんなのだぁ!おいシズ!この現象について何とか説明してみるのだ!!」


「敵は多分闇魔術使い的なアレなんでしょ、影を操れるんだったら、ソレ関係の魔法の空の時間を夜にするくらいできそうだと思うけど……」


 魔術使い、という表現は少し違うかもしれない。成れの果てはこの世界において最高権力者……成れの果ての決定は、その辺の王様にだって変えられない。もちろん[決定権的な権限]を持っていればの話だが。

 そんな存在が生み出した生物も、ただものではないはずだ。


「ふん、我は天鱗山だって吹き飛ばしたのだ。今度も一発どでかいの打ち込んでやる!」


「待ってくださいルリさん!あの影兎……聖属性以外の魔法を一切受け付けません!本体が影だから、光の魔分子を多く含む聖属性しか効かないってことでしょうか……」


 フレデリカが得意な火の魔法も、ルリが得意な無属性の魔法もノーダメージってことか。影だから私が得意な間接物理攻撃も効きそうにない。有効なのは……六花の電磁砲か?アレは確か聖属性だった気がする。


「ああもう!マカリナも相当なチートだけど、あいつもあいつでチートすぎるだろ!ゲームバランス崩壊してるよ!!」


「成れの果てに倫理も条理もありませんよお師匠様、彼らは絶対不変の権限者。彼らがルールなのですから……でも、それに抗うことは不可能ではありません!やりましょう皆さん!もう誰にも、死の恐怖を味合わせないために!!」


 フレデリカは[あの龍との戦い]でたくさんの命が散っていくのをこの目で見た。その中に恩師であった凪咲も含まれていて、あれから彼女は誰も死なない道を出来るだけ選択してきた。思考を読み、回路を超高速でフル回転させてきた。

 それは今回も変わらない。


「さあ、この[悪夢]から抜け出しますよ!!」


 ああ、そうだよフレデリカ。忘れていた。

 あなたは……気付かないうちに周りを笑顔に出来る、素敵な女の子だったよ。

 だって、今もこうやって皆が勇気を貰って微笑んでいるんだもん。



 


秋風紅葉です!!!


毎日毎日寒いですね、こんなに寒いとマジで凍っちゃいますよ。

皆さんはクリスマスイブ、どう過ごしましたか?


性なる夜とは言いますが、今年はそんなこともなかったのかな?知らんけど


うちはツリー飾ったりチキン食べましたよ!美味しかったです。


プレゼントはもう貰えない歳になっちゃいましたが、来年のクリスマスも楽しいものになって欲しいですね。


それでは皆さん!年末までもうひと踏ん張りです!頑張りましょう!


そして27日は冴えはず一周年記念ですよ!!

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