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第223頁 コショウの在処は彼女の部下に

 コショウを手に入れるために森を進む私達。だいたいの予想はついているので、そこへ向かうだけのなのだがやはりコショウは貴重品らしく、周囲にはたくさんの敵チームが待ち伏せしていた。対応に負われつつ、私の相棒を成長させていっている。


「うーん、飽きたのだぁ。おいシズ、ここ一帯吹き飛ばしていいか?」


「あほですねルリさん、それだとコショウまで吹き飛ばしてしまうじゃないですか。だから、あぶりだすように森を焼くんです。そしたら敵は慌てて出てくるでしょう?そこをぶっ潰せばですね、効率よく狩れるわけですよ」


「フレデリカさんこそあほじゃないんですか?燃やしたらコショウまで燃えてしまうじゃないですか。だから全部木を折っちゃうんです。そうすれば隠れてる敵は死にますし、視界も晴れて探しやすいじゃないですか」


 このチームはあほしかいないのか。どれもこれもコショウを見つけられないじゃないか。


「ルリは吹き飛ばすし、フレデリカは燃やすし、六花は木が邪魔で逆に見つけられないでしょ。面倒だけど、地道にコショウを探すしかないんだよ」


 それからさらに進んでいくと、とある事件が起きる。


「なんだか鳥たちが騒がしいですね。なんて言ってるんでしょう……危ないとか、行っちゃダメとか言ってますね」


 生物の思考を読めるフレデリカがそう呟いた。いつ敵が来てもいいように、あらかじめ地殻ん生物の思考を読んでもらっていたのだ。

 森の生き物たちが恐れている……そんな規格外のものが今動こうとしているとも知らずに、私はあくびをしながら。


「ルリが龍ってバレてんじゃない?」


「わ、我はそこまで怖い龍じゃないのだ!そりゃ、昔は滅龍なんて呼ばれたこともあったが、今は大人しくしているのだ」


 天鱗山を吹き飛ばしたというのにコイツは……!まあいい、それよりコショウだ。天鱗山と戦ったところなのによくない予感とかマジでやめてくれ。


「いや、だって鳥たちが言ってるんです。危ない、大きな影兎、襲われる、食べられる、森壊れちゃう、って言ってるんですよお師匠様!」


「大きな影兎?兎ねぇ……うーん、言うてイボイボトードレベルの大きさでしょ?」


 全長三メートルほどの巨大カエルを例に挙げたが、フレデリカと六花は暗い顔のままだ。


「でも静紅さん?やっぱり警戒はしてた方がいいと思うんです。この森の中に、本当に微かですが成れの果ての気配がします。気のせいかもしれませんし、精霊の類かもしれませんが、それでもボクは静紅さんに生きてほしいから……だから、警戒してください」


 六花がそんなことをいうから、もう無視できないじゃないか。でも警戒するってことは戦う確率が上がるってこと。ルリの残り魔力も考えないと詰むからな。

 微かに感じる成れの果ての気配。それはフレデリカのいう[影兎]と関係あるのだろうか。


「にゃにゃ!?ま、また出会っちゃったにゃん!!」


 げげっと尻尾を逆立てたのは猫獣人の王マカリナだ。


「ああっ!また出たなマカリナ!さっきはよくも襲おうとしてくれたな……あれから我は森に迷って大変だったのだぞ!」


「あれれ?あれれれれ?逃げたのはそっちだし、襲おうとしたのもそっちじゃなかったかにゃ?それに!逃げた先で!迷子!にゃーははは!!面白い話をしてくれる家来は嫌いじゃないにゃん」


「だーれがお前の家来なんかになるか!お前みたいな子猫、我の手にかかればイチコロだ!」


 相わからずルリとマカリナは仲が悪い。というより、マカリナは友好的に話しているのだが、ルリの方が喧嘩を買いすぎである。アーベント・デンメルングの時にであったスズメともそうであったように、今回のマカリナもルリは仲を壊そうとしている。


 猫耳を生やしたマカリナは木からぶらんとぶら下がると、こちらに笑いながら話しかけた。


「ボクと出会うのは初めてでしたよね。初めまして、ボクは各務原 六花と言います、まだまだ未熟な若者ですが、近国同士仲良くしてください」


「ああ、知ってるよ?よーく知ってるよ?ボーイッシュの女の子大好きだからにゃ、ほら、いっちゃんと一緒にいた[なーさん]もボーイッシュで可愛かったにゃあ」


 なーさんというのは凪咲のことで間違いないだろう。

 マカリナも紗友里と一緒にいた[凪咲]のことを知っているのか。いや、それもそうか。王同士なら顔も併せてるよな。


「凪咲について知ってるんだね。それじゃあ、知ってる繋がりで質問。この森のどこかにコショウの群生地があるはずなんだけど、どこか知らない?」


「もちろん知ってるよ?だってもう採っちゃったもん、敵に取られたくにゃいにゃらそこから無くせばいいんだよ。部下に預けてるから絶対安全だしぃ」


 彼女は自分の部下に相当な自信があるらしく、鼻高々にそう言った。猫族最強と呼ばれる自身よりも、部下に預ける選択をしたのはどうしてなんだ?

 何がともあれ、今から別の群生地を探すよりマカリナからもらった方が合理的だ。


「そうか……だったら我は、お前を倒してそれを奪うだけなのだ!」


「あっ、ルリ!勝手に出しゃばるなッ!」


 私の言葉はワンテンポ遅く、ルリがマカリナへ飛びつくのを許してしまった。空を掴んだ私の手が虚しく落ちる。


「威勢がいいにゃあルリくん、そういうの嫌いじゃないよ!あっ、今のは威勢と異性を掛けたんだけど分かったかにゃ?」


 マカリナは地に着地し、その肉球の間から鋭い爪を伸ばす。

 ルリの飛びつきはまだ続いていて、それは彼女に覆い被さるまで止まらないのだろう。


「にゃっはは!私がなんて呼ばれてるかご存知ないにゃ?」


 月夜の白虎─────。

 月夜の晩、縦横無尽に駆け回り獲物を捕らえるその様から付けられた異名だ。それは猫などの決して可愛いものでは無いことから、猫の格上の[白虎]を使われている。


 2人の距離はぐんぐん近づいていき、あと一瞬でぶつかるといったところでフレデリカが叫んだ。


「そこまでです!今は戦いをやめましょう!……遠くで、何か苦しんでいる生命がいます。助けて、苦しいと。それに……なんでしょうこの足音は……」


 言われてみれば、微妙に揺れてないか?それも歩行のリズムのように。


『ぐおおおおおん!!』


 ハッと空を見上げると、そこには全長東京タワーと同等の化け兎が立っていた。

 化け兎といっても可愛らしくはなく、二足歩行で耳を腰の辺りまで伸ばしている。目は青く光り、手は歪な形だ。


「巨大な……」「兎……」

 

「ば、化け物なのだァァァ!!!」


 見上げるほど巨大な[黒いモヤ兎]は口を大きく開けると、どこかで見たようなエネルギー光線を射出し───────


「にゃにゃっ!?まずいにゃん、あんにゃの命中したらここら一帯蒸発しちゃう!」


 慌てるマカリナを制止し、前に出たのは六花だ。


「最高火力の電磁砲を……そうすれば相殺できるでしょう」


「待って六花!そうしたら……最高火力なんて撃ったら身体が壊れちゃう!!」


 異世界に来て間もない時、六花は電磁砲に慣れず、何度も腕や身体を壊している。フレデリカと初めて出会った時もそうだ。身体をボロボロにして、常に回復をしてないと死んでしまいそうなほどだった。

 あれから時間が経ったと言え、大幅なパワーアップとかは決してしていない。


「静紅さん、ボクにも……たまには守らせてください」


 その言葉のすぐあと、私は六花との過去を思い出す─────


うう、眠いので早く締めますね!


明日の投稿も7時になります。よろしくです!

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