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総集編 セイレーン・シンフォニーその3

昨日投稿した総集編 セイレーン・シンフォニーその3ですが、記載ミスで、正しくはその2です!

「……はっ、ユメコ! ユメコ! シズク……!? そんな、ごめんなさい、シズク……!」


 VS悪イナベラの最終決戦は、接敵した全員が気を失い、敗北を期したところから始まる。


 善イナベラが目を覚ましたのは、悪イナベラの奥義[セイレーン・シンフォニー]が炸裂してから十数分後の事だった。


 海底で眠る結芽子と静紅を見つけ、彼女は二人の体を大きく揺する。


 が、返答がない。


 様々な嫌な予感が頭を過ぎるが[水中呼吸の魔法]が時間切れになることを恐れ、イナベラはすぐに二人を地上へ連れていった。

 

 力を振り絞り、何とか二人を地上の海岸まで引き上げた善イナベラだったが、村の様子を見て更に心を抉った。


「村が……燃えている!?」


 幸い村人たちは避難していたようで、全員軽い傷で済んでいるようだ。


「あ、ああ…………」


 しかし親友たちが気を失い、大切な村が燃えているこの状況に対し、イナベラは自分の無力さに打ちひしがれていた。


 絶望の最中、イナベラは背後から話し掛けられた。


「困っているみたいね、イナベラ」


「あなたは……?」


 そこに現れたのは、静紅が異世界に来てから時々干渉してくる[傲慢の成れの果て]ペルソナだった。


 ペルソナは気絶する静紅と結芽子を叩き起し、敗北に落ち込む三人に現在の状況を伝えた。


「あなたたちは敗北し、海の村は燃やされた。幸い死者は居ないけれどね。そして問題の悪イナベラは王都へ向かったわ」


 ペルソナは三人の傷を癒し、イナベラに[何でもひとつ力を与える]と言ってきた。


 世界の管理者であるペルソナにとっても、悪イナベラの暴走は世界の喪失を招きかねないので、何とか対処したいようだ。


 何でもひとつ力を与える、という曖昧な提案に一行は頭を抱える。


 考えたのち、静紅は[命を奪った生物を、味方として召喚する力]というアイデアを提案し、ペルソナはそれ呑んで善イナベラに与えた。


「イナベラ、試しに何か出してみて」


「ん……で、出てきてギルマン」


 彼女は殺した大量のギルマンを味方として召喚し、それ以外にも海産系の魔物を複数呼び出すことに成功した。


 静紅が思い描いた力を実現させたペルソナに驚きつつ、感謝を述べると一行は今度こそ決着をつけようと意気込むのであった。



・・・・・



 一方その頃、王都へ向かった悪イナベラは騎士団最強の魔法使いであるルカとルナと相対した。


 幾つか言葉を交わしたが、話し合いにならないと判断したため、戦闘に持ち込んだ。


 半龍族かつ、二人でいるとき魔力が数倍に膨れ上がる能力を持つルカ&ルナは、その絶大な力で雷属性魔法を放ち、悪イナベラを一撃で仕留める。


 魔法を受けた悪イナベラは気を失い、真っ暗な視界の中、今まで生きてきて人間たちに虐げられてきた記憶を回想する。


 それにより悪意が再び呼び覚まされ、なんと死んだはずの悪イナベラはウォーター・シェルの海辺の洞窟で復活した。


「……! あれ、善意の私が……まだ生きている?」


 奥義で確実に殺したと思っていたが、もう一人の自分がまだ生きていることを気配で察知した悪イナベラ。


 何もかも上手くいかないことに苛立ち、荒々しい態度のまま「今すぐに殺してやる」と言わんばかりの表情で善イナベラへ迫るのであった。



・・・・・



「……さあ、最終決戦だよ、ここで決着をつけよう」


「ん、今回もよろしくね。シズク、ユメコ」


 悪イナベラが善イナベラを察知した時、反対に善イナベラも悪イナベラの殺意を察知した。


 彼女が来るであろう海岸に大量のギルマンと数体の魔物を並べて陣を敷き、確実にここで決着をつけようと出来る限りの準備を行った。


 もちろん最終決戦の勝者は自分たちだ。


『…………ッ!』


 もはや言葉を交わす必要はなく、同じく大量の魔物を引き連れた悪イナベラは善イナベラに接近し、思い切りパンチを繰り出す。


 それを受け止めた音を銅鑼の音として、善イナベラ側の魔物と悪イナベラ側の魔物は真っ向からの白兵戦を始めた。


 戦場の海岸は混沌を極め、しかしその中でイナベラ同士は全力でぶつかり合った。


 拳には拳、魔法には魔法。


 成れの果てペルソナによって力を最大限まで引き上げられた善イナベラは、悪イナベラと同格の力を持っていた。


 そこに静紅と結芽子が加わることで、善イナベラは優位に立ち確実にダメージを与えていく。


「もうやめようよ、戦っても意味ないよ……!」


『お前だけは、お前だけは殺さなきゃダメなんだ! オリジナルのお前を殺して、私が本物になる!』


 悪イナベラは自身に黒い影を纏わせると、人魚の上位互換のセイレーンへと姿を変えた。


『セイレーン・シンフォニー!』


 海底の決戦で壊滅させられた奥義だ、対策してないはずがない。


 結芽子は悪イナベラの眼前に飛び出し、彼女の能力で魔法の核を体内に収納し、ソレを取り出して悪イナベラの方に放つ。


 結芽子の起点で大ダメージを与えることに成功した一行。


 ここで畳み掛けようと、善イナベラは瞳を閉じて自分の中に巡る力を解放する。


 今まで、ずっと一人だった。


 人間となんか仲良くできないと思っていた。


 それが今は、静紅や結芽子以外にも村の人たちがイナベラの背中を押してくれている。


 一人だったイナベラにとって、一人じゃないことがどれだけ幸せで、どれだけ嬉しいことか。


 それを守るためなら、イナベラは自分の命だって賭けられる。


『来い、偽物め……! 本来の使命を全うしないお前なんて、いなくなれば良い!!』


 悪イナベラは自身の胸の内にある影を纏わせ、化け物に似た姿に変貌する。


 それと同時に、善イナベラは自身の胸の内にある光を解き放ち、人魚の上位互換であるセイレーンを、さらに上回る姿へ変身する。


「自己犠牲の……成れの果て?」


 静紅は視界に表示された薄い窓に書かれた文字、自己犠牲の成れの果てという文を読み上げた。


「もう終わりにしよう。あなたに私は殺せない。私はあなたを殺せないよ」


 イナベラは信念を持ったその瞳で悪イナベラを見ると、その真価を解放させる。


 存在だけで雨が降り、海が荒れる。


 この世界の神の担い手、成れの果てとなったイナベラに、母なる海はただ微笑んでいるだけだった。



・・・・・



 自己犠牲の成れの果てとなった善イナベラは自身の胸の辺りに亜空間を生み出し、そこへ悪イナベラを取り込まんと手を伸ばす。


「私とあなたの精神を同化させて、ひとつにする」


『い、嫌だ! 私はまだ……』


 女神のような純白の布を身に纏う善イナベラ。


 彼女から放出される光は悪イナベラの影を打ち消し、彼女の悉くを弱体化してしまう。


 善イナベラは胸の中にもう一人の自分を取り込み、逃げないようにぎゅっと胸を押さえた。


「く、うっ……ああっ……!!」


 悪イナベラと胸の中で戦う中、善イナベラは最後の一押しとして叫ぶ。


「私は人魚じゃない! 人なんて襲いたくないし、むしろ仲良くしたい! 種族とか魔物だからとかどうでもいい、私は私……イナベラだ!」


 彼女は静紅と出会ってすぐの頃、自分が何なのか理解できず、ずっと悩んでいた。


 人魚という曖昧な種族になったイナベラは、人間なのか、それとも魔物なのか、はたまた精霊なのか。


 それから様々な経験をし、今では大声で「私は私、イナベラだ」と叫んでいる。


 それがたまらなく嬉しくて、静紅は思わず大声をあげた。


「いけぇぇえええ!! イナベラァァァ!!」


 月の光の下、満天の星空が降り注ぐ海浜で、ひとつの輝きが閃光に変わる。


 眩く輝く一等星は、かつて呪われていると言われていたとは思えないほど綺麗だった。



・・・・・



 海辺の最終決戦から一日。


 悪イナベラに勝利し、完全に善と悪が一体化したイナベラに、静紅はとある問いを投げかけた。


「イナベラ、これからも人魚で生きていきたい?」


「…………ううん、人間に戻りたい」


「いい方法があるんだけど、教えよっか?」


 人魚も突き詰めれば成れの果ての一種だ。


 自己犠牲の成れの果てとなり、はっきりと成れの果てと判断できるようになった今なら[成れの果ての解除]ができるかもしれない。


 成れの果ての解除条件は、核の破壊と当時の記憶を呼び覚ますことだ。


 核の破壊は後にして、まずは当時の記憶……イナベラが人魚となった幼少期に関係する記憶を呼び覚まさなければならない。


「紗友理に会いに、一度王都へ戻ろう。短い間だけど、幼少期を一緒に過ごした紗友理と話せば何か思い出せるかも」


 と、いうわけでイナベラを連れて一行は一度王都に戻った。


 そこで紗友理と会話し、紗友理は幼いイナベラを一人置き去りにしたことを謝るが、イナベラは何も言わずに優しく抱きしめるだけだった。


 イナベラの体内にある核を取り除く方法を模索するなど、様々な準備の末、ついにイナべらの成れの果て化は解除。


 ようやくイナベラは人間に戻ることが出来た。


 人魚から人間に戻ったことでイナベラは身長が縮み、幼女の姿になってしまったが案外本人は気に入っているらしい。


「わ、あ……あっ!」


「あはは、人魚の頃と体の使い方が違うから戸惑うかな」


「う、うん……でもすごくうれしい、ほんとうににんげんにもどれたんだね」


 幼女の拙い言葉遣いで話すイナベラに近寄る紗友理は、切り替えて笑顔で彼女を持ち上げた。


「よーし、今日はお祝いだ! 何か美味しいものでも食べに行こう!」


「わーい、やった」


 晴れて人間の姿に戻ったイナベラは、紗友理に屋敷でメイドとして生活することになり、イナベラは王都での新たな生活に心を躍らせるのであった。



 第13章 セイレーン・シンフォニー ~完~



実のところ、総集編だと全体の二割ぐらいしかお送りできていません……!


それは本当に総集編と呼べるのか気になるところですが、それは置いておいて。


ざーっと何があったか伝えるだけになってしまいましたので、少しでも気になったよーって方は本編290頁〜319頁を覗いていただければと思います!


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