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第173頁 2人でひとつの魔法使い

1日遅れた上に、寝坊で9時投稿…ごめんなさい…ヾ(・ω・`;))ノぁゎゎ


 ジャンヌさんが気絶したということは、ホムンクルスの動きを止めて効率的に撃退する策は使えないということ。

 治癒魔法では気絶は治せない。せめてサユリ様の言ってたように傷を癒して復活を速めないと。


 痛い…熱い…目眩がする。

 魔力を一気に使いすぎた…。このルナが…王国最強の魔法使いと呼ばれたルナが魔力不足の症状を…。


「ルナ」


 だめ、思考が回らない…。何が起こっているんだろう。


「ルナ…」


 あぁ、ボーッとして…視界が傾いて…。


「ルナ!」


「……?サユリ…様」


「ルナ、どうしたんだ…気分でも悪いのか?」


 地面に倒れ込んだルナを、サユリ様はキャッチしてくれたようだ。

 ジャンヌさんは教会の影に寝かせ、心配そうな顔をしながら覗き込んでくる。


「大丈夫、大したことじゃない。…こんなもの、気持ち次第でなんとか…」


 サユリ様に迷惑はかけられない。目眩なんて、時間が経てば治る。


「無理しすぎだよ、少し休んで」


 ルナの能力は[体内魔力を底上げする]というもの。そのおかげで王国最強の魔法使いとして名を上げられた。でも、発動条件は[姉さんに触れている]こと。それは姉さん側もルナに触れないといけないし、ルナも姉さんに触れないといけないということだ。

 2人で1人の魔法使い。

 姉さんが居ない今、王国最強とは言えない…。


「情けない…、ルナがこんなこと…。これじゃ襲撃を許してしまう…。サユリ様だけじゃ止められない…!」


 その言葉がサユリ様の何かに触れたのか、いつものように優しく微笑んで口を開いた。


「舐められちゃ困るよ、私の二つ名を忘れたのかい?」


 ルナに腰のポーチに入れていた魔力剤を飲ませてサユリ様は立ち上がる。

 ホムンクルスがどんどん塀を超えてくる中、圧倒的力の差を前に一歩も引かない女性が、ルナの前に立つ。


「全ての才に長けた一国の王。時に指揮官、時に騎士長。討ちし魔物は数しれず、恵まれた友人達と成り上がってきた!」


 腰の鞘から剣を引き抜き、前に構える。柄の部分に埋め込まれた翠宝石が眩く光った。


 そうだ…どんな時も、ルナの傍にはサユリ様が居てくれた。


「[万優姫]イズミ・サユリとは、私のことだッ!」


 曇り空から光が差し込み、暖かい北風が吹き抜けて行った。

 その風がサユリ様の深緑の軍服マントがひるがえし───


「ルナの…みんなの英雄…」


 ルナ達には英雄がついている。

 あんなホムンクルスなんかには負けない。


『ぐるぁああああ!!!』


 ホムンクルスの咆哮が、空高く登っていった。



 ・・・・・



 勝算はある。ジャンヌならすぐに目を覚ますはずだし、ルナの魔力不足も薬を飲ませたから直に治る。

 南の方はシズクに任せるとして、今はこちらに専念しよう。

 視野を広げて…何パターンも空想実行するんだ。数で先まで読むのは慣れてるだろ。


 私の役目は2人の復活までの時間稼ぎ。それと動けない2人を守ること。


 幸い持ってきた武器は多い。

 この剣、背中の弓、同じく背中の槍。

 近中遠の武器を使い分けて立ち回る。


 いけるか……?

 いや、やるしかない。


『ぐらぁ!』


 ジャンヌに一発を与えたホムンクルスが、こちらをロックオンしたのか、拳を握って吠えた。

 醜い見た目のホムンクルス。それでも彼らは生きている。


「すまないが…これが私の使命なんだ」


『ぐぅ……、』


[炎強化ファイア・エンチャント]」


 魔法で矢に火をつけて、それを強く弓の弦で引く。

 糸が張るような音の後、私は指を離した。

 弱点は頭の小さな黒い杭だ。ジャンヌのデコイを受けた時、無意識のうちに手で隠していたことから、多分弱点なんだろう。


『ぐぁぁあ!!』


「まずは一体。せめて安らかに眠ってくれ」


 私は片膝をついて、静かに目を閉じた。

 魔物だって生きている。それは成れの果てであっても。だから、生命を奪ってしまったのならせめて弔ってあげないと。


「───って、君ならそう言うだろう?」


 アイツは魔物にも優しい人だ。笑ってしまうほど優しいんだ。傷つけることなんて出来ないレベルで。


「なぁ、凪咲なぎさ───」



 ・・・・・



「ねぇ紗友里、今日ゲーセン行かない?」


 今日の授業を終え、帰る準備をしていた時の事だ。後ろの席に座っている女子から背中をつつかれ、反射的に振り向いてしまった。

 黒い髪に天真爛漫な性格で、クラスの中心的存在。私とは少し違った世界に住んでいる人だ。


「げーせん?なんだそれ…、それに今日は…予定は無いが、遊びたくない気分なんだ」


「思ったことはキッパリ言うんだねぇ…じゃなくて!ゲーセン知らないの!?なら尚更行こーよ!」


 篠木原高校一年 二組 二番 一ノ瀬 凪咲。

 いつもいつも私のことを振り回す…ろくでなしだ。


「はぁ、分かった分かった。なら、委員会終わるまで待っててくれ」


 突発的な行動ばかりする彼女なら、委員会が終わるよりも先に一人で帰るだろう。

 なら、相手も傷つけないし自分も損はしない。

 完璧だ…、完璧すぎる。


「えぇー、そっか!じゃあ待ってるね!」


「うんうん、それで……ってええ!?」


「だーかーらー、待ってるねって」


「ど、どうして!」


「紗友里と遊んだら楽しいもん!一人より二人、そうでしょ?」


「っ……、全く…」


 いつもいつも私のことを振り回す、愛らしいろくでなしだ。


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