総集編 201頁〜300頁までの軌跡 その16
魔道士ニンナと武闘家トゥリスの戦いは、まさに死闘であった。
コンマ以下、刹那の僅かな隙をつく戦いも遂には終わりを迎える。
時間とともにパワーを上げていくトゥリスを倒すため、ニンナは命がけの策に出た────。
「……とっておきはとっておくものですからッ!!」
ニンナは今まで受けた衝撃を倍にして、その拳を握りしめた。
魔道士は魔法を軸に戦っていく人たちのことを差す。
しかし彼女の奥の手は物理。
強化魔法で移動速度を上げたニンナは、トゥリスの懐に潜り込んでその拳で殴りつけた。
「ぐ、お……おお……」
奥の手を食らったトゥリスは唸り声を上げながら行動不能になり、魔道士VS武闘家の戦いは幕を閉じた。
・・・・・
場所は代わり、強制ワープを受けた蜜柑と結芽子はタッグを組んで敵に立ち向かう。
エンジン音を響かせながら、この何も無い部屋を駆ける活気な少女ターボは、その速度を利用して二人を圧倒する。
しかし二人も負けていられない。
─────警察官の父ちゃんみたいに、かっこよくみんなを助けられる人に……ッ!!
「行くで蜜柑ちゃん!」
「お、おう!!」
結芽子は咄嗟に生み出した鉄の板でターボの動きを一瞬止めて、蜜柑は手を伸ばす。
ターボの足に触れた蜜柑は能力を使用して、彼女の足を腐敗させた。
「このっ……!」
ターボの武器である足を腐敗すれば、あとはこちらのものだ。
ターボと共に移動してきたもう一人の少女も気絶させて、結芽子と蜜柑は勝利した。
・・・・・
「フォルエメ、戦闘は任せる」
悪党たちのボス、腕銃の青年カザキは[狂愛心の成れの果て・フォルエメ]に指示すると、彼女は待ってましたかと言わんばかりに飛び出した。
彼女の身体能力は騎士団にも負けない程で、懐に隠し持っていたナイフを使って静紅たちを圧倒した。
「守って、アテナッ!」
魔法人形を放り投げて、静紅は盾のアテナを召喚する。
細い身体からは想像できないパワーを持って、アテナの盾を押し込むフォルエメは。
「あああああああ!! 盾、邪魔ァ!」
「うぐっ……! 王邸の庭の時もそうでしたが、やはり狂人ですわ! ご主人様!」
アテナの盾を乗り越えて、フォルエメは静紅に飛び掛る。
「く、来る……!」
飛び掛る直前、フォルエメは能力を使用して[黒渦]の中に入る。
「これは……ワープゲート的なやつ! 一体どこから──────」
「アハハッ! 血、血ィ!! アハハハハッ!」
姿を消したフォルエメは、静紅の死角から腕を伸ばして彼女の腹をナイフで刺した。
「ぐ、うう……!」
痛みで歯を食いしばる静紅は、直ぐにアテナの防壁で守られるが出血は収まらない。
「カワイイねェ、血ィ出てるシズクチャン、カワイイねェ!!」
静紅がその場に倒れて蹲る中、血を見て興奮したフォルエメの狂人度はさらに増していく。
「力も上がって……このっ!」
「やむを得ん! 多少吹き飛ぶがあのガラスなら耐えられるはずだ、魔法を使う!!」
ルリとティアが魔法の準備を使う中、[それ]は突然訪れた。
「─────ちょっとこの問題児借りてくわ! またいつか返す!」
「あなた誰! ねェ、邪魔するならあんたも殺──────」
「ペル、ソナ……?」
それは静紅と多少の交友がある成れの果て[ペルソナリテ]だった。
ペルソナは静紅たちを監視する立場にあるのだが、彼女と静紅は似ているところがあるのか特に注目されている。
アーベント・デンメルングのときもそうであったが、何かと彼女は成れの果てでありながら静紅たちに協力してくれる。
「おいおいおい、何してくれてんだあの桃髪女。俺たちの戦闘メンバーを持っていきやがった……」
「……仕方ない、この研究所は放棄して逃げるよ」
カザキと白衣の技術者チカコは混乱に乗じて、退避の準備を始めた。
「逃がすか……ッ!」
「待ってアテナ……これ以上戦えない、私が戦えない今……アイツに銃撃たせたらダメだ!」
現代武器。
簡単に人の命を絶てるその武器の恐ろしさは、この場の誰でもない静紅が一番分かっていた。
カザキ達が逃げ帰る中、静紅達は手を出すことなく半龍族の救出に意識を向けた。
しかし彼女らはいずれ後悔することになる。
腕銃の青年カザキをここで倒さなかったことを。
─────悪の蕾がまたひとつ、静かに花弁を開こうとしていた。
・・・・・
騎士団員数名負傷、内全員が治癒魔法で簡単に治る程度の怪我で済んだこの一件。
屋敷の中から全員帰還したことを確認すると、紗友里は半龍族の保護に当たった。
「知り合いにあらゆる病気と精神的な病に精通した子がいる、その子に観てもらった後、彼女らを故郷へ帰そう」
「皆さん、良かった……無事だったんですね」
六花の力は屋敷の中だとむやみに使えないため、彼女は地上での看護部隊に配属されていた。
皆の帰りを喜んだ六花は、最後に静紅に抱きついた。
悪の蕾を取り逃したこと。
青年の腕に取り付けられた銃の存在。
そしてあの研究所をこの世界で作り上げたであろう[白衣の技術者]の存在。
更なる不安を生みながらも、当初の目的であった半龍族の奪還は完了した。
力不足を知る者、自分の力を知った者、次なる悪意を警戒する者。
様々な思いを孕みながら、この半龍族奪還作戦は幕を閉じるのであった。
・・・・・
王国ヴァリシュメロに帰還した静紅たちは、ルリからある事を言われる。
「我は一度故郷に帰ろうと思う、ティアもそうだが皆が心配だからな!」
「そっか、あなたが決めたことなら背中を押すよ」
ルリが家を出ていくことになり、部屋がひとつ余ったので代わりにアルトリアが家に入ることになった。
「これからよろしくね、アルトリア」
「お師匠様を寝取ろうったってそうは行かないからね!」
「寝取るってなに?」
「純粋なアルトリアに変なこと吹き込むな! このド変態エルフ!」
・・・・・
ペルソナリテに連れ去られたフォルエメは、例の花園にて四人の成れの果てに囲まれていた。
「自然発生した成れの果てにしては物凄く高い[権限]を持ってるねえ」
「ええ。欲しいです」
「知らない! あなたたち、戦いの邪魔した! 死んじゃえぇぇぇぇ!!」
暴れ回るフォルエメを何とか拘束した成れの果て達は、彼女に任務を与えた。
そんなに殺しが好きなら、増えすぎた魔物退治をやってくれ。と。
「それなら血も見れるし、死体だって何をしてもいいわ」
「……」
「いらっしゃい、ここが新たなあなたの居場所よ」
強力な狂愛心の成れの果てを引き入れた[彼女ら]は、勢力を広げながらこの世界の管理を進める。
傲慢、無慈悲、好奇心、不眠症、そして狂愛心。
「……血ィ見れるなら……はあ、何でもいい」
[最果ての花園]での茶会は進む。
成れの果てという狂人達が管理するこの世界は、今もゆっくりと。
歩みを進めるのであった。
連続投稿426日目!!
本日の総集編で、200~300頁までの総集編は全て投稿し終えました!
どんどんぱふぱふーー
それでね、話は変わるんですけど……ティア・カプリチオとセイレーン・シンフォニーがどっちも第12章になってたんですよね。
ええ、泣きましたとも。まじでいつからミスってたのか……。
そして作者でありながらそれに気づかないというね! ええ!!
というわけで、訂正しましてティア・カプリチオが第12章、セイレーン・シンフォニーが第13章になります。
そのためセパレート・ファンファーレ以降の章も一つずれることになります!
なので過去に「第13章 セパレート・ファンファーレをお楽しみに!」とか後書きで書いてると思うのですが、正しくは一つずれて第14章になります。
あの、訂正がめんどくさいというか……300話以上あるのでね、確認が大変なので……。
切り替えまして!! 明日からお待ちかねの第18章 アリア・プロムナードの投稿がスタートになります!
第15章と同じくらいの短編の章になると思うのですが、どうぞお付き合いください!




