総集編 201頁〜300頁までの軌跡 その15
「雑魚はアタシに任せるっス! 先に行くっスよ!」
隊列を成して突撃する中、やはり屋敷の中には悪党たちが大勢居た。
しかしそのどれもが王都の路地裏にいるような雑魚達だ。
忍者コスチュームのフランは流石の身のこなしで雑魚達を一蹴すると、その手首をロープで縛り上げた。
「先に進みましょう、親玉は最奥です!!」
突撃隊の指揮官はニンナだ。
アルトリアが敵の位置を把握し、フレデリカはその大剣で壁を壊してどんどん進んでいく。
「入り組んだ屋敷の中でも、壁を破壊して一直線に進めば迷う心配はありません!」
壁を数枚ほど抜けると、そこにはプロボクサーの拳とボディビルダーの筋肉、アスリートの脚力に力士の巨体をした大男が立っていた。
「ハハハッ! 残念だったな、お前ら全員ここで退場だ!」
「こ、こんな大きい敵おるとか聞いてないで! こんなんに勝てるんけ!」
狼狽える結芽子を皮切りに、今まで勢いのあった突撃隊は徐々にネガティブ思考になっていく。
その様子を見てニンナは一つ舌打ちをすると、誰よりも前に出て杖を大男に向けた。
「ここで全員足を止めるわけにはいきません! 私が出ます、進んでください!」
ニンナの言葉を聞いた騎士団は、よっぽどの信頼関係があるのか振り返ることなく奥へ続く道を進む。
「イイな、騎士様は信頼関係が厚くてよ。だが……」
「うぐっ!?」
「俺の方が強いんだよなああああ!!」
その巨体からは想像できないほどの速度で大男はニンナを殴る。
彼女は屋敷の壁に吹き飛ばされ、痛みを必死に堪える。
「俺ァ女だからって相手に手加減するほど馬鹿じゃねえ。それが武闘家ってものだろうが」
痛みを振り切って、ニンナはようやく立ち上がる。
「あなたが武闘を語るのであれば、私はそれに応えましょう! 全身全霊の魔法であなたの全力をねじ伏せます!」
ニンナは使い魔を呼び出すと、大男トゥリスを睨みつけるのであった。
・・・・・
その後、屋敷の最奥に到着した一行はこれ以上進む道が無いことを知る。
「我に任せるのだ!」
ルリは小規模な魔法を使い、屋敷の壁を吹き飛ばした。
吹き飛ばした壁の奥、一行が目にしたものは。
「なん、だよこれ……こんなものこの世界にあっていいのかよ……」
蜜柑は青ざめた顔でその光景を目にした。
青く光るカプセルの中、半龍族たちが酸素マスクに繋がれて浮いている。
石レンガの建物や竜車など、あまり文明が進んでいないこの世界にとってはこの光景はなんとも恐ろしいものだった。
「大きな音がしたと思ったら。なあ、こいつらが侵入者であってる?」
「知らない、話しかけんな、死ね」
「相変わらず口が悪いなお前は! んーとじゃあ、あいつとあいつ! 私たちと一緒にこい!」
「黙れ、声でかい」
壊れた壁の中から、二人の少女が姿を見せた。
口が悪い方の少女は、一行に手のひらを伸ばすと能力を使用した。
「う、うわああ!! ……って、なんともない……」
「待って、蜜柑と結芽子がいない!」
「一緒にこいってことは、どこかに連れて行かれたのか?」
「大丈夫、あの二人はやる時はやる人だから。ここまで色んな人が私たちを進ませるために離脱した、その人とたちのために更に進むしかない!」
静紅はそう言うと、前方に広がる研究室を視界に収めるのであった。
・・・・・
「蜜柑ちゃん避けて!」
「うわああっ! 危ねえ!」
強制的にワープさせられた蜜柑と結芽子の二人は、鍵のかけられた何もない空間で二人の少女と対峙していた。
「ボスから足止めしとけって言われてんだ! だから連れてきた! 私の名前はターボ、見た目通りタイヤとエンジンで足を早く動かせるんだぜ!」
「じ、自分から手の内明かしとる……」
「実は馬鹿なんじゃないかあいつ……」
「や、やかましい! とにかく、この作戦が終わるまではお前達を外に出さないからな!」
ターボは額につけた空気よけのゴーグルを装着すると、足のエンジンを唸らせた。
「待て待て待て、要は俺たちが外に出なければいいんだよな?」
「ああそうだ!」
「なら戦う意味なくね?」
「確かに」
「論破されとる!?」
結芽子は思わず敵にツッコミを入れてしまうが、ターボもターボなりに悩んでいるようだった。
「だ、だって私もみんなの役に立ちたいんだよー! ほら、私の能力って炎を出せたり空を飛んだり出来ないからさ、地味なんだよ」
瞳の奥に歯車の紋章を浮かばせるターボは、蜜柑と結芽子を交互に見ると「にひひ」と笑った。
「爆速ターボ、ブースト・ファイア! 止まらない止められない、このターボが目にも止まらぬ速さでぶっ倒してやんよッ!」
「しゃーない、やるしかないみたいやな!!」
結芽子は能力でハンマーを取り出すと先端を地面につけた状態で構えるのであった。
・・・・・
「これはこれは遠いところまでご苦労様だなァ、長旅で疲れただろ?」
地下の研究室に降りた静紅達を待っていたのは、黒髪にサングラスを頭に乗せた黒服の青年だった。
その影に隠れて、驚くべき人物もそこにいた。
「フォルエメ! どうしてここに……」
「彼女の身のこなしと殺傷能力は素晴らしい。だから俺がもっと活用できる舞台に招待したのさ」
王邸の庭でホムンクルスと襲撃を行ったフォルエメがまさか悪党達と手を組んでいたとは。
「ダラダラと話し込むのもいいが、応援を呼ばれても面倒だからな。さっさと終わらせる」
青年は腕を振り上げて、こちらに『銃口』を向けた。
「腕が……銃になっているの?」
青年の腕に植えられた鉄の塊は、銃弾を1秒に何発も撃てるような回転式の機関銃だった。
「構うもんか! こいつら半龍族のみんなを誘拐して売り飛ばそうとしたんだ!」
ティアは拳を握って叫ぶ。
「なら助けてやれよ、今でもあの酸素マスクの影響で寿命が縮んでんだぜ? お前らなんのために来たんだよ、助けるためなんじゃないのか?」
「かァくん、もう我慢できないよ、殺っていい? ねェ!」
ナイフを取り出したフォルエメは青年に叫ぶように問うが、青年は。
「まあ待て、すぐ殺すのも勿体ないだろ」
「ッ……!! 何このガラス、ビクともしない!」
「そりゃあ超硬質ガラスだからな。助けてやれよとは言ったが、助けられると言った覚えはねぇよ」
ティアがガラスを蹴ってもビクともしないとなると、静紅が助けることは不可能だ。
ならこいつらを倒して無理やりでも助けてあげないと!
「ここまで来るのに何十人もの人が頑張った! もしかしたら犠牲が出ているかもしれない! だから私は負けられないんだ!」
静紅は手を握りしめて青年にそう言った。
「チッ、主人公かよ。ヒーローさまさまだなァ!!」
「困ってる人を助ける、悲しい顔をしている人の笑顔が見たい、そのためなら私は何だってしてやる!!」
「俺らを倒してかァ? あはは、笑えるぜ。面白い冗談だ」
「冗談……?」
「そりゃお前の恩着せがましい行動の果てに、誰かを殴ることを正当化してるだけじゃねぇか。俺らを殴って倒して、誰かの笑顔をみたいだァ? 暴力の正当化には飽き飽きしてくるぜ」
「悪いことをするのが悪いんだ!!」
「もういい!」
青年は腕の機関銃を起動させると、こちらに向けて発砲した。
「ッ……あっぶなっ!!」
静紅は能力を使用して、飛んできた銃弾を操作対象にして無理やり止めた。
「……わかったでしょ、銃は私に効かない。分かったら大人しく投降して!!」
腕を銃にするくらいだから、青年の武器は銃なのだろう。
しかし静紅に銃弾は効かない。
「このまま銃弾を無効化し続ければ弾切れを起こすはず! この勝負……私なら勝てる!」
異国の地ロキレシアンの地下研究所にて、悪党のボスであり腕銃の青年『カザキ』との直接対決が始まるのであった。
予告していたとおり、今日は2話連続投稿になります!




