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第155頁 揃い始める役者たち

 かちゃり、かちゃりと軽鎧の金属音がまるで、災害を受けたようにぼろぼろになった街に響く。周りには生物の気配は無く、たった一人の少女が槍に突かれた足から血を噴き出しながら歩いている。


 金髪のショートボブに軽鎧を身に着け、槍に大旗の付いた武器を持った少女が。


「…、っ、はぁ…、くっ、はぁ…」


 彼女の身に着ける軽鎧は、身を守るには乏しすぎるほどだ。軽い金属で作られた金網を胴に纏って、腰にはボロ革のベルト。刃こぼれした短剣を鞘に納め、頭には何も身に付けてはいない。

 無慈悲にも突きつけられた槍が、彼女の足を貫通したとき、彼女は悶絶した。感じたことのない痛み、熱。頭を直接揺らすほどの刺激で目の前が真っ白になった。


 彼女は信じて歩き続ける。中央都にいる仲間の生存を信じて。

 彼女は拳を握って空に突きつける。この国を治める女王 オスカー・クリュエルに、狂った憎悪を向けるように。


「私はまだ…こんなところで死ねない…!必ず、必ずあの残忍姫を殺す…、その時まで私は死ねないッ!!」


 槍旗を杖代わりにして足を引きずって進む。


 乾いた寂しい山風が、彼女の持つ大きな旗をはためかせた。



 ・・・・・



「ふわぁ、マジで眠いわ…。時差とかは無いはずだし、時差ぼけってことはなさそうだけど」


 私は間抜けに目から涙を流して大きなあくびをした。

 ここはこの国の王都[オスベルン]。

 この世界の国は中心にある国が最も栄える修正があるらしく、やはりこの国も中央都王都オスベルンが一番栄えている感じがする。


「あのなぁ静紅。リラックスするのは別にいいのだが、一応外国との関係をよくするために来たんだ…、無礼なことや何かやらかしたら戦争にだってなるんだからな」


 背筋を伸ばして歩く紗友里は、うなだれている私にそう言った。

 確かにそうだけど…、ねぇ…。


 灰色のレンガ道の両側に5mほどの四角い家が建ち並んでいるこの街には、活気の二文字はあまり感じない。無機質な空気感に、息を殺してるかのように沈黙に包まれた街。

 丁度お昼時だというのに、どうしてなのだろう。


「シズクさん、サユリ様。何か強い反応がこっちに近づいてくる…」


 そんな時、ルナがか細い声を上げた。私たちに緊張が走り、思わず息をのむ。

 ごろごろと車輪が進む音が聞こえてきて、やがてピタリと止む。


「クリュエル様、本日は反乱軍も街民も居ませんね。しかしどうしましょうか…、家に押し掛けるのも良いですが、やはりそれだと王の尊厳がそがれますかな?」


「ん…、構いません。でも、もう少し待ってみましょう…、彼らは必ず来るはずです」


 暗い青めの瞳に、腰に付けた二丁拳銃。銃士風のハットに刺さった黒の羽根、銀月のように綺麗な銀髪。そして落ち着いた口調の大人の女性が竜車の中にいる女性に話しかける。

 竜車の中にいる女性は、大きな貴族ハットにクリーム色の髪、首には高価なネックレスを付けている。


 待つ…?って何を?彼らって誰のことなのだろう。


 銃士の人でもなく、竜車入りの女性でもない[彼ら]のことが私は気になって気になって仕方がなかった。


「静紅、ここはあの建物に身を潜めて一度やり過ごそう」


「え?なんで?別にいいじ…、むもごご!」


 囁き声で言ってきた紗友里に、私はあほらしく大声で返し、その瞬間ルナに口を押さえられた。


「しぃー、サユリ様の言う通り…、この状態でクリュエル様と会ったら処刑されかねない。手紙を出し、許可が出たら顔を合わさないと」


 ひとまず私たちは背を低くして、隣にあったシャッターの降りていないパン屋に身を潜めることにした。

 国王クリュエル?がこの場に来てから一気に空気が張った気がする、、。一体何が起ころうとしているの?


「…数人がこちらに向かってきている。戦力はあまり期待できない」


 再び周りに警戒していたルナが小さく声を出した。その声に耳を澄ましてみると、確かに五人ほどの足音と荒れた息遣いが聞こえてくる。


「きょ、今日こそは必ずお前の首をとってやるぞクリュエル!」

「そうだそうだー!我らの平和を、食料を、政治を返せ!!」


「貴様らァ!誰に向かってそのような言葉遣いを…!!」


「大丈夫です。その哀れな愚民どもよ、続けてくださいな」


 鉄製の鋭利な農具を王に向け自由を求めた農民に、銃士は声を荒げるが、それを今度はクリュエルが制止した。

 まるで何度も何度も浴びせられたかのようにクリュエルは罵声を受け流して平常心を保っている。


 目の前で殺害予告されたんだよ?そりゃ多少は慌てたり抵抗したりするでしょ!


「なっ…!そうやって何10人も、何100人も殺してきたんだろ!だがな、そんなお前の王座もこれで終わりだ…、必ず、必ずお前を殺さないと…ッ!」


 強く握りしめた拳から血がにじむほど憎しみを抱えた男性は、雄たけびにも似た声を上げて竜車に進んでいく。それに続いて他の四人も進む。


「そうですか。私にそのような印象を持っていたとは知りませんでしたよ…、もうあなたたちに生きる資格なんてありません。やってしまいなさい…」


「ハッ!」


 羽根の付いた扇を仰ぎながらクリュエルは涼しげな顔でそういうと、隣に居た銃士に指示を出した。その瞬間、さっきまで声を上げていた男性たちの腹部に斬傷が入り、そこから大血しぶきが飛び出る。


 ショッキングな光景に思わず目をそらしたが、状況が気になったので恐る恐る目を開ける。


「あ、あぁぁ…ああああああ!!」


「うるさい。お前たちに人権などない、ましてや生きる資格も。な」


 瞬間的に血を出しすぎた男性はその場にうずくまり、ただ痛覚に対する叫び声を上げるだけだった。

 そんな彼に向けて銃士は火薬式銃の銃口を向ける。

 その後ゆっくりと栓が引かれ、物凄い轟音と共に銃弾が男性の脳天を貫通してその場にからんっと言う音を立てて転がった。


「そんな、酷い…」


「シズクさん…国外にはこのような国もたくさんある。ヴァイシュガーデンが平和すぎるだけ」


 さっきまで動いていた人間が、今ではただの肉片と化している。

 そんな現実に、私は口を押えて悲鳴を殺して目を見開いたのだった。

【あとがき】

 皆さんこんにちは!秋風紅葉です!今回から…というか、今章はすこし残虐的なシーンが増えます。残忍姫という存在と、残虐シーンは切っても切り離せない関係なんです!

 まぁでも規制にかからない程度なんですけどね!


 さて、今回のタイトルにもある[揃い始める役者たち]ですが、第10章は約三人の新キャラが登場します。でも、この章だけの登場になる予定です!


 銃士 まだ名前は決まっていない。


 残忍姫 クリュエル


 反乱軍リーダー ジャンヌダルク


 この三人ですね!一応三人とも作中に登場してますよ!銃士とクリュエルは言わずもがな、ジャンヌさんは、始めの方に出てきたあの怪我をした女の子です。


 ちょっとネタバレするんですけど、シズク達はもちろん反乱軍側に協力して王政を崩すために奮闘します。その途中途中に変化していくジャンヌの心情にも注目してもらいたいですね!


 それではみなさん!これからもよろしくお願いしまーす!


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